30年ぶりの首班指名選挙の決選投票に勝利したのは誰か
昨日第215回特別国会が召集され、10月27日(日)に投開票が行われた第50回衆議院総選挙を受けた首班指名選挙が行われました。
その結果、衆議院において第1回目の投票で過半数を獲得した候補者がいなかったため決選投票が行われ、自民党の石破茂総裁が立憲民主党の野田佳彦代表を破って再選され、第103代内閣総理大臣に就任するとともに第二次石伴内閣が発足しました。
今回は総選挙において単独で衆議院の過半数を確保した政党がなく、公示時に政権党であった自公両党を合計しても過半数を下回ったため、1994年6月29日の村山富市首相以来約30年4か月ぶりに決選投票が行われ、1979年11月6日の大平正芳首相以来45年ぶりに比較多数票を集めた石破首相が当選することになりました。
これらは、いずれも総選挙で自民党が議席を公示前の256から191に減らすとともに、野党第一党の立憲民主党も50議席増の148議席としたものの、野党第二党の日本維新の会と第三党の国民民主党との連携が実現せず、首班指名選挙で過半数を制することが出来なかった結果です。
特に38票を持つ日本維新の会と28票の国民民主党については、決選投票で野田佳彦代表に投票すれば66票が上積みされ、2回目は野田氏への投票を表明していた共産党の8票と衆議院の院内会派である有志の会の1票を含む160票と合わせて226票となり、221票の石破首相を上回っていました。
決選投票における両党の行動は、一見すると自党の党首に投票するということで自民党と公明党にも立憲民主党にも与しない姿勢を示しつつ、実際には比較多数で当選するという点を念頭に置き、無効票を投じることで有権者である議員数で優勢の石破首相の勝利を確実にするという、間接的に自民党を支援するものでした。
こうした姿勢は是々非々を強調する両党の主張に即せば当然のことかもしれません。
その一方で、石破首相を当選させるということで自公両党に貸しを作り、今後の政権運営に影響力を行使しようとする目論見を反映させたものでもあります。
それとともに、もし野田代表に投票して当選させたとしても立憲民主党に政権を担当するだけの能力が十分に備わっていないことは見逃せません。
すなわち、1947年に成立した片山哲内閣が、事前の用意がないまま政権が発足し、閣僚の人選に苦慮し、その後も政権の運営に困難を来たして約9か月で退陣した事例のように2025年度予算案の成立まで政権が維持できればよく、2025年7月の東京都議会選挙や参議院選挙に臨めない可能性が高くなるところでした。
この点で、日本維新の会と国民民主党は立憲民主党にも不意の政権担当の機会を与えないことで貸しを作り、少数与党として権力の基盤の弱い石破政権を相手に政局の主導権を握る余地を確保しようとしたと言えるでしょう。
何より、1996年に衆議院に小選挙区制が導入されて以降では初めて与党の総議席数が過半数を下回る中で第二次石破内閣が発足しただけに、今後も当面は日本維新の会と国民民主党が自公両党と立憲民主党の間で存在感を発揮することになります。
その意味で、今回の衆議院における首班指名選挙は、政局分析の良い教材を提供したと考えられるのです。
<Executive Summary>
What Is the Meaning of the Runoff Voting to Select the New Prime Minister? (Yusuke Suzumura)
The voting to select the new Prime Minister was conducted at the both diet and Prime Minister Shigeru Ishiba defeats Leader of the Constitutional Democratic Party of Japan Yoshihiko Noda on 11th November 2024. On this occasion, we examine the meaning of the result of the runoff election based on the behaviour or the second and third opposition parties.