第50回総選挙の持つ意味は何か
昨日投開票が行われた第50回衆議院議員選挙は、自民党が191議席と2009年の総選挙以来15年ぶりに単独過半数を下回るとともに、公明党も24議席の獲得に留まり、両党を合わせた合計の議席数は215と、過半数に達しませんでした。
一方、野党は立憲民主党が148議席、日本維新の会が38議席、国民民主党が28議席、れいわ新選組が9議席、共産党が8議席、参政党が3議席、社民党が1議席、諸派が3議席、無所属が12議席となりました。
今回は立憲民主党が改選前の98議席から50議席を上積みするとともに、国民民主党が4倍、れいわ新選組が3倍、参政党も3倍の議席増となりました。これに対し、日本維新の会は5議席を、共産党は2議席を減らしています。
立憲民主党と国民民主党はともに民主党を淵源とし、ともに労働組合を重要な支持母体とするものの、前者は野田佳彦代表が就任したことで従来の中道左派的な主張が中道右派寄りになるとともに、国民民主党はこれまでの保守的な主張に中道右派的な政策を加えました。
その結果、自民党が今回の総選挙の争点の一つであった政治資金を巡る問題で失った有権者の支持を回復できない中で、保守的もしくは中道的な政党を支持したい層を取り込むことに成功したのが立憲民主党と国民民主党であったことが推察されます。
これは、前回の総選挙で党勢を拡大した日本維新の会が、この間にいわゆる新自由主義的な政策を強調していたことがさらなる勢力の拡張に失敗したこと、あるいは以前であれば保守政党への批判票を一定程度取り込めた共産党が議席を減らしていることから、実質はともあれ印象の面で有権者が左右のいずれであれ極端な主張を敬遠したことを物語ります。
ただ、れいわ新選組の躍進は本来であれば共産党が政権への批判票を吸収できなかったことを示し、参政党や日本保守党といった新興政党が一定の議席を獲得したのに対し、社会党の後継である社民党が比例区の1議席にとどまったことは、伝統的な政党であっても組織力の衰退が小選挙区での勝利をもたらさないという事実を改めて浮き彫りにしました。
今後、特別国会における首班指名選挙に向けて与野党各党は活発な動きを見せ、あるいは政界の再編につながるかも知れません。
それとともに、今回は2009年の総選挙での54人を上回り、過去最多の73人の女性の候補者が当選したことは見逃せません。
すなわち、2009年は自民党政権の統治能力の低下が政権交代をもたらしたように、現在の政治体制への不満や批判が政党の次元では自公両党以外の議席増をもたらし、候補者に焦点を当てると男性を既存の秩序の、女性を新たな政治の象徴として捉える有権者が少なくなく、変革への期待が後者の増加をもたらすと考えることができるからです。
このような意味において、今回の総選挙の結果は与党に対する有権者の信認の低下とともに、新たな政治への待望をも予告する者であったと言えるでしょう。
<Executive Summary>
What Is the Meaning of the General Election 2024? (Yusuke Suzumura)
The Japanese General Election 2024 was conducted on 27th October 2024 and the LDP and the Komeito, the Administrative Parties, could not win the majority at the House of Representatives. On this occasion, we examine the meaning of the result of the election.