論文"Declaration of Victory: The Meaning and Achievements of the Stanford University Baseball Team's 1913 Tour"の草稿のご紹介(7)
昨年12月、ロバート・フィッツ、ビル・ナウリン、ジェームズ・フォーの各氏の編纂した書籍"Nichibei Yakyu: US Tours of Japan"の第1巻がアメリカ野球学会(SABR)から刊行され、私も論文"Declaration of Victory: The Meaning and Achievements of the Stanford University Baseball Team's 1913 Tour"を寄稿しました。
今回は、論文の日本語版草稿のご紹介の第7回目となります。
それでは、人々の注目を集めたスタンフォード大学の選手たちは、来日後にどのように調整を行ったのであろうか。
5月28日の午後1時から慶應義塾の三田綱町グラウンドで始まった練習は、1時間30分にわたり行われた。二塁手のキャス(Cass)が左翼方向に本塁打を次々と放ち、左打者のホルム(Halm)は右翼方面に火を噴くような本塁打を放ち、守備練習では機械のように正確な送球がなされ、難しい打球も容易に捕球する。実力を十分に見せてはいなかったものの、スタンフォード大学の選手たちの様子は「米国の国技の神髄を極めた」と称賛されている[24]。
このような選手たちの前評判は高かった。すなわち、チームとしては、スタンフォード大学野球部が創設されて以来最強で、かつて早稲田大学野球部が対戦して10対2で敗れたサンタクララ大学とは4勝1敗と勝ち越した、米国西海岸でも有数の実力を持つとされている。また中心打者はキャスであり、主戦投手はサイドスローのメープル(Maple)である。メープル、一塁手のワークマン(Workman)、遊撃手のテリー(Terry)は大リーグのフィラデルフィア・アスレティックスとボストン・レッドソックス、そしてAA級パシフィックコースト・リーグ所属のポートランド・ビーバーズから入団の勧誘を受けるほどの技量を備えていることが指摘されている[25]。
このような状況であったため、対戦する慶應義塾、明治大学、そして早稲田大学野球部の卒業生により結成された稲門倶楽部の各チームは、スタンフォード大学に太刀打ちできないと考えられたのである[26]。
[24] 「ス軍の練習振」『東京朝日新聞』、1913年5月29日5面。
[25] 「必勝を揚言す」『読売新聞』、1913年5月28日3面。
[26] 橋戸、前掲論文、3-4頁。
<Executive Summary>
Draft of Artcile: Declaration of Victory: The Meaning and Achievements of the Stanford University Baseball Team's 1913 Tour (VII) (Yusuke Suzumura)
My article "Declaration of Victory: The Meaning and Achievements of the Stanford University Baseball Team's 1913 Tour" is run on Nichibe Yakyu edited by Robert K. Fitts, Bill Nowlin, and James Forr published in December 2022. On this occasion, I introduce the Japanese draft to the readers of the weblog.
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