岸田政権の「辞任ドミノ」をどのように考えるべきか

昨日、政府は持ち回り閣議で2013年以降、4回にわたり固定資産税の滞納により差し押さえを受けていた神田憲次副大臣の辞任を認めました[1]。

政務三役の辞任を巡っては、10月26日に文部科学政務官だった山田太郎氏が女性との不適切な関係を報じられて辞任し、10月31日には柿沢未途氏が東京都江東区長側の公職選挙法違反を巡り法務副大臣を辞めており、今臨時国会の開幕から1か月を経ずして3人が相次いで職を退いたことになります。

岸田政権では昨年10月から12月にかけて4人の閣僚が辞任しており、内閣の改造を行うたびに失職者が出るという過去に類例を見ない状況を迎えています。

これは、一面において、首相就任後も宏池会の会長の座に留まり続けるなど、派閥を重視し、派閥単位での政権運営を行っている岸田首相の姿勢が招く、派閥順送りの人事の弊害が現れた結果であると言えます。

それとともに、他面では、当人が秘匿する情報がある場合や、固定資産税を滞納しつつ国政に従事するという、予想が難しい状態にある人物の場合、どれほど事前に入念な調査を行うとしても、情報の非対称性がある限り事態の真相を把握することは難しいという現実を伝えます。

もとより自らの内閣の構成員の動向を把握するとともに、過去や現在の行状に対しても責任を持つことは、任命権者として重要な心構えです。

しかし、あらゆる事態を全て把握することが出来ない以上、知り得ない行動によって政務三役が辞任し、任命権者であるからとして各人の不行状の責任を取ることを求められるとすれば、岸田文雄首相も形を変え被害者ということになるでしょう。

そして、こうした事態は誰が内閣の首班であるとして起きかねない問題です。

それだけに、岸田首相には派閥本位ではなく各人の能力に応じた任命が求められるとともに、野党にも管理しきれない事態を管理することを求めるかのようなある種の倒錯的な批判ではなく、どのようにすれば首相が不適切な人選を行わないで済むかを考え、具体的な案として提起する、前向きな姿勢が欠かせません。

こうした点からも、政務三役の中から新たな辞任者が現れるのか、今後の動向が注目されます。

[1]岸田政権、再び辞任ドミノ. 日本経済新聞, 2023年11月14日朝刊3面.

<Executive Summary>
What Is an Important Attitude for Us to Examine the Scandals of the Kishida Cabinet? (Yusuke Suzumura)

Vice Minister of Finance Kenji Kanda resigned from his post by the tax scandal on 13th November 2023. On this occasion, we examine the meaning such scandals for the Kishida Cabinet and our demanded attitude to examine this problem.

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