米国野球殿堂の表彰が示す多様な球史へのまなざし

現地時間の12月5日(日)、米国野球殿堂の「ゴールデン・デイズ・エラ委員会」と「アーリー・ベースボール・エラ委員会」は2021年の表彰者を発表し、新たにギル・ホッジス、ジム・カート、ミニー・ミノーソ、トニー・オリバ、バック・オニール、バド・ファウラーの6氏が殿堂入りすることになりました。


「ゴールデン・デイズ・エラ委員会」は主として1950年から1969年までに活躍した選手を対象として選考を行い、「アーリー・ベースボール・エラ委員会」は主として1950年以前に活躍した選手を対象として選考を行う機関で、ホッジス氏からオリバ氏までが前者、オニール氏とファウラー氏が後者での選出となります。


ナショナル・リーグを代表する強打者で、監督としても1969年の「ミラクル・メッツ」を牽引したホッジス氏、ワシントン・セネタースやミネソタ・ツインズで活躍したカート氏、シカゴ・ホワイトソックスなどで活躍し、「ミスター・ホワイトソックス」と讃えられたミノーソ氏、ミネソタ・ツインズで15季にわたり活躍した「トニーO」ことオリバ氏は、球史に大きな足跡を残した選手たちです。


また、カンザスシティ・モナークスを中心に活躍し、ニグロ・リーグを代表する好打者オニール氏、大リーグ初期のアフリカ系アメリカ人選手として知られるファウラー氏は、球界の発展に寄与した人物です。


成績の評価だけでなく、野球の発展に貢献した人物を多様な尺度で顕彰すること、あるいは球史を鮮やかに彩りつつ、殿堂入りの資格を喪失した名選手、大選手を積極的に顕彰することが米国野球殿堂の価値そのものを高めるという考えは、両委員会の母体となるベテランズ委員会が設置された趣旨を反映します。


2017年に1988年以降の選手や関係者を顕彰する「トゥデイズ・ゲーム委員会」、主に1970年から1987年までに活躍した選手などを対象とする「モダン・ベースボール委員会」、そして「ゴールデン・デイズ・エラ委員会」と「アーリー・ベースボール・エラ委員会」の4つの委員会が所定の順番に応じて選考を行うことは、より幅広い層からより多様な対象者を選出しようとする試みの実践に他なりません。


実際、大リーグ機構は2020年にニグロ・リーグの成績を大リーグの公式記録として扱うことを決定するなど、球界が直線的に発展してきたのではなく、様々な経緯を辿って今日に至っていることを理解していることを示します。


もちろん、球界の伏線的な成長の過程を考えれば、今後も検証されるべき人物の数は少なくないことは明らかです。


それだけに、今回の表彰を契機として、さらにより多くの人々の事績が後世に伝えられることが願われます。


<Executive Summary>
The National Baseball Hall of Fame Shows Its Important Meaning for the History of Baseball (Yusuke Suzumura)


The National Baseball Hall of Fame announces that six players including Jim Kaat and Buck Fowler on 5th December 2021. In this occasion we examine its impact for the history of baseball.

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