NHK交響楽団第2004回定期公演
去る2月3日(土)、4日(日)にNHKホールにおいてNHK交響楽団の第2004回定期公演が行われ、本日NHK FMで第1日目の様子が放送されました。
今回は前半にヨハン・シュトラウス2世のポルカ『クラップフェンの森で』とショスタコーヴィチの舞台管弦楽のための組曲第1番から「行進曲」「リリック・ワルツ」「小さなポルカ」「ワルツ第2番」が、後半にショスタコーヴィチの交響曲第13番『バビ・ヤール』が演奏されました。バス独唱はアレクセイ・ティホミーロフ、男声合唱はオルフェイ・ドレンガル男声合唱団、指揮は井上道義でした。
第1曲目のシュトラウス2世は井上にとっては必ずしも手中に収めている作曲家ではなく意外な選曲ではあったものの、緩急の豊かな展開と鳥笛の長閑でときにおどけた様子は公演の冒頭を華々しく飾りました。
第2曲目の舞台管弦楽のための組曲第1番は1990年代まで誤ってジャズ組曲第2番とされてきた作品で、知らぬ者もいない大作曲家であっても作品の混同や訛伝があることを教えます。
1930年代から1950年代にかけて手掛けた映画音楽やバレエ音楽をまとめた本作は、楽器編成の彩りの豊かさと背景の異なる曲を集めたことによる表情の多様さが印象的であり、ショスタコーヴィチを得意とする井上ならではの軽やかな音楽作りが印象的でした。
一方、後半の交響曲第13番は第1楽章における循環主題が作品全体を統一し、第3楽章から第5楽章まで連続して演奏される重厚な交響曲です。
独唱のティホミーロフの劇的な歌唱と合唱のオルフェイ・ドレンガル男声合唱団の明瞭な発声はマーラーに通じる奥行と陰影に富んだ演奏を作り出しました。
それとともに、演奏者に対して時に挑発し、時に格闘するような指揮は井上ならではのものに他なりません。
2024年をもって指揮活動からの引退を表明している井上にとって、NHK響の定期公演への出演は今回が最後になる予定です。
1978年5月の第752回定期公演に出演した際は31歳の期待の新鋭であり、取り上げた作品もロッシーニの歌劇『どろうぼうかささぎ』序曲、ネルソン・フレイイレを独奏に迎えたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、プロコフィエフの古典交響曲、そしてドビュッシーの交響詩『海』という耳触りは良いものの特徴に欠ける組み合わせでした。
それが46年後には曲目を見るだけで誰が指揮台に立つかが一目瞭然であるところに、この間の井上道義の歩んだ道のりの長さが実感されます。
その意味でも、井上道義にとっても楽団にとっても、意義深い公演となったと言えるでしょう。
<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 2004th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)
The NHK Symphony Orchestra held the 2004th Subscription Concert at the NHK Hall on 3rd and 4th February 2024 and the first day was broadcast via NHK FM on 8th February 2024. In this time, they performed Johann Strauss II's Im Krapfenwald’I, Shostakovich's March, Lyrical Waltz, Little Polka, Waltz II from Suite for Variety Orchestra No. 1 and Symphony No. 13 "Babi Yar". Solo bass was Alexey Tikhomirov, male chorus was Orphei Drängar. Conductor was Michiyoshi Inoue.
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