東京オリンピックの終了に際して考える「IOCとオリンピックの将来」

8月8日(日、祝)、東京オリンピックの閉会式が行われました。

大会が1年延期され、大部分の競技が無観客となるなど、1896年の第1回以来続く近代オリンピックの歴史の中でも特筆すべき大会となったのが、今回の東京オリンピックでした。

17日間の会期が終了したことで、国際オリンピック委員会(IOC)は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の言葉通り東京オリンピックを巡る諸問題を全て忘れ、来年の北京冬季五輪、3年後のパリ夏季五輪に向けて邁進することになります。

また、「ペテン男爵」、「ぼったくり男爵」と揶揄されたトーマス・バッハ会長を頂点とする、放映権料に依存し、収入の大部分を国際競技連盟(IF)に配分することで各IFを金銭を通して統制する仕組みも健在なままです。

しかし、今回の大会で提起された「誰のためのオリンピックか」、「何故オリンピックを開くのか」という問いは、オリンピックが友情や連帯感、さらに世界平和への貢献を徳目として掲げる以上、回答を拒むことが不可避な問いかけです。

むしろ、このような問いに答え、日本を含む世界各地から寄せられ続けている組織の統治のあり方を見直すために努力することは、今後もオリンピックという競技大会が継続するためには不可欠な取り組みです。

そして、もしIOCがなすべきことを行わず、周囲の意見を「雑音」と見做すようでは、IOCだけでなくオリンピックの将来は暗澹たるものとなります。

「成功」と繰り返すトーマス・バッハ会長[1]の自己評価は措くとしても、東京オリンピックの終了後にこそ、IOCのあり方が問われるということは誰もが忘れてはならないことでありましょう。

[1]「五輪と感染拡大、影響の根拠ない」. 朝日新聞, 2021年8月7日朝刊36面.

<Executive Summary>
Will the IOC and the Olympics Be Able to Remain Alive in the Future? (Yusuke Suzumura)

The Closing Ceremony of the Tokyo Olympics was held on 8th August 2021. In this occasion we examine the future of the International Olympic Committees and the Olympics according with the efforts, achieves and fails of the Tokyo Olympics.

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