見出し画像

NHK交響楽団第2015回定期公演

去る6月19日(水)と20日(木)にサントリーホールにおいてNHK交響楽団の第2015回定期公演が行われ、第1日目の実況録音が6月29日(土)にNHK FMで放送されました。

今回は前半にウェーベルンのパッサカリア、シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲、ウェーベルンの編曲によるバッハのリチェルカータ、後半にシューベルトの交響曲第5番が演奏されました。ヴァイオリン独奏はイザベル・ファウスト、指揮は鈴木優人でした。

近年、読売日本交響楽団や関西フィルハーモニー管弦楽団などで活動の場を獲得し、かつての指揮もできるチェンバロ奏者という印象がはるか昔のものであるかのように面目を新たにしているのが鈴木優人です。

シェーンベルクとウェーベルンにシューベルトを「ウィーン」という視点で繋げるところにその才人ぶりの一端が窺われました。

実際の演奏については、シェーンベルクを得意とするイザベル・ファウストがその実力のほどを示し、伴奏を牽引しつつ音楽を力強く、そして切り口も鮮やかに紡ぎ出す様子がとりわけ印象深いものでした。

また、シューベルトは古典派を得意とする鈴木の手腕がよく発揮された演奏で、ハイドンやモーツァルトを連想させる軽やかで颯爽とした音楽を、作品の持つ特徴に即して仕上げました。

一方、バッハのリチェルカータはウェーベルンの味付けの濃い編曲がやや演奏の停滞を招き、音楽全体の構えが小さくなってしまったのは残念なところでした。

最初に取り上げられた同じくウェーベルンのパッサカリアの持つ手堅い構成を考えれば、バロック音楽への造詣の深さが分かるだけに、ウェーベルンの挑戦が手ごわく感じられたのではないかと推察されるところです。

その意味で、今回の公演は鈴木にとって着眼点の鋭さをより効果的に活かすための方法のあり方を課題とする者であったと言えるかも知れません。

<Executive Summary>
The NHK Symphony Orchestra the 2015th Subscription Concert (Yusuke Suzumura)

The NHK Symphony Orchestra held the 2015th Subscription Concert at the Suntory Hall on 19th and 20th June 2024 and was broadcast via NHK FM on 29th June 2024. In this time, they performed Webern's Passacaglia, Schönberg's Violin Concerto, Bach's Ricercata edited by Webern, and Schubert's 5th Symphony. Solo violin was Isabelle Faust and conductor was Masato Suzuki.

いいなと思ったら応援しよう!