IOCは思いもつかない苦境に立たされているか
昨日、7月23日(金、祝)に開会式が行われる予定の東京オリンピックまで2か月となりました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大がの兆しを見せない中で大会を開催することについて、日本国内では否定的な意見が広まりを見せています。
これに対し、大会の開催を前提に放映権の販売や各種の協賛金の募集を行っている国際オリンピック委員会(IOC)としては、唯一の商品とも言うべきオリンピックを中止することは、売り物の価値を自ら損なうに等しいものです。
そのため、決定以前にはあくまで開催するという前提に立って議論を進めることは、IOCにとっては合理的な戦略となります。
しかも、「五輪の開催の魅力」、「放送権料の維持」、「オリンピック支持層の拡大」という3つの点が、IOCに大会の中止は可能な限り避けることを望ましい選択肢としていること[1]は、問題を複雑にしています。
実際にはIOCも大会組織委員会や東京都、あるいは日本政府も水面下での折衝を続け、最終的な妥協点をどこに見出すかの調整を行っているものと推察されます。
それでも、水面下ゆえに表面的にはIOCの強気の姿勢ばかりが強調されることは、かえって人々のオリンピックに対する関心を低下させるだけでなく、IOCに対する信認の度合いも低めています。
その意味で、「断固開催」という姿勢を取り続ける以外に方法のないIOCは、当初は思いもつかなかった苦境に立たされていると言えるのです。
[1]鈴村裕輔, 新型コロナ世界的流行でもIOCが東京五輪を中止できない三つの理由. 2020年3月24日, https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020032300003.html (2021年5月24日閲覧).
<Executive Summary>
Is the IOC on the Cliff by the Sea? (Yusuke Suzumura)
The 23rd May, 2021 is 2 months before the opening ceremony of the Tokyo Olympics. In this occasion we examine problems surrounding the International Olympic Committee and other relatives to emphasise the possibility to hold the Tokyo Olympics.