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経営と知財 #5 競争戦略①

競争戦略上で特許がどのように寄与していくのか、商標がどのように寄与するのか基本的な考え方です。複雑なので意匠は別の機会にします。

1.特許とビジネスの競争関係、係争時の優位性

製品は複数の技術や機能から構成されているため、以下のような関係になります。②は自社でも他社でも必ず使う技術や機能、①や③は自社や他社がそれぞれ差別化などを目的に特徴を出す部分とイメージしてください。

それぞれの領域に特許を持つ場合を考えます。例えば以下の3パターン。

  • ①のみに特許を持つ場合:差別化部分を他社に模倣されるのを抑止でき、ビジネス上の意義があります

  • ①のみに特許を持つ一方で、他社が②のところに特許を持ってしまっている場合:ビジネス上は優位かもしれませんが、他社から特許侵害で訴えられるリスクがあります

  • ③のみに特許を持ち、かつ他社側は一切特許を持たない場合:他社を訴えライセンス料を得ることでビジネス上のコスト優位を得る等のメリットがあります

係争になった場合には、①に特許を持っていても使えませんので注意が必要です。スタートアップ等で予算が限られる場合、どこにどのような配分で特許を持つのかよく考える必要があります。

2.ブランディングと、特許、商標

先ほどの図に、顧客が価値を感じる領域を追加します。例えば、製品を完成させるために必要な独自部分だけど顧客に価値を感じてもらえていない以下図①のような部分も実務上はでてきます。

  • ①か④かの観点:基本は、④に特許を持たないと差別化の模倣抑止、ビジネス上の優位性は達成できないことになります。この目的で特許を申請する場合、④を見極めることが重要です。

  • ①の意義:ただし、理由は割愛しますが実務上は①にしか特許を持てない状況も多々発生します。この場合、次善の策として、勝負の土俵を①に持っていく手が考えられます。製品開発後、どこを顧客に遡求していくか、マーケティングやブランディングがあります。これによって①を④にもっていける可能性があります。もしそれが難しいようであれば①に特許を持つ意味はあまりありませんので、この場合はむしろ⑥など他社が侵害する部分に特許を持つことを優先します。

  • 商標などの意義:①を④に格上げする際や、④の場合、商標などと合わせて戦略をねることが理想です。ネーミングする際は大きく分けて、一般的な用語と造語があり、造語には意味を想起しやすいものと、難しいものがあります(難しいものは背景をストーリーとして語ることで意味との関連付けを強化、記憶に定着させる手段がよく選択されます)。商標観点では、造語のうち意味を想起しやすいものとの親和性が高いです。意味を想起させる言葉はバリエーションが限られてきますので早いもの勝ちで商標を取るのがベストです。顧客に意味が伝わりやすいネーミングを他社が使えない状態を作ることができます。意味を直接想起させない造語は、ネーミング自体にはほぼ無限にパターンがあるのでデッドコピー対策が主目的となります。

  • ③や⑥の意義:係争になった場合、守り側には”技術回避”という対応策があります。③や⑥の特許を持つ状態で他社と交渉が始まった場合、一般的には、他社は特許とは違う手段、侵害しない形で製品を作り直すことを検討します。③の場合は⑥と比べるとそれが容易になります。⑥は作り直すと顧客価値が失われるリスクがあるためです。

  • ②か⑤:これは技術的な側面で基本的な必須構成であることが多いので、係争上の観点で②と⑤の差はあまりありません。ビジネス上は⑤の方がベターですが、だからといって必須構成の場合には他社も⑤を避ける術がないので結局のところ模倣抑止の意味をなさないことが多いです。一方でライセンス収益が得られコスト優位に立てる意義はあります。

  • ⑦:大企業の場合は製品開発が始まる前に、ブレストで⑦へ特許を出す活動をしていることが多いのですが、最終的に④~⑥に収まるのか、①~③になっていくのか、ビジネスの側面から検討しておくことが費用対効果上最も重要な観点です。


ここでは各観点を簡素化して記載しました。実務上は各観点の複雑な組み合わせを考え、ケースバイケースで最適な戦略を設計していく必要があります。
ご支援が必要な場合はお気軽にお問合せ下さい。


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