♯03パッケージについて考えてみる - ポテトチップス -
今回のテーマは「 ポテトチップス」。
ここではひとつの製品だけを取り上げた観察ではなく、市場に並んでいる競合製品を見比べ、相対的に観察することでより深く掘り下げることができるのでは?という考えのもと作成しています。
ポテトチップス・スナック市場について
ポテトチップス・スナック市場ではCalbeeを中心に各社個性的な製品を展開しています。
食品口コミサイト「もぐナビ」のスナック菓子のランキングを見たところ、TOP10では8商品がCalbeeの商品でした。(2019年11月17日時点)
Calbeeポテトチップスの国内市場シェアは約7割、スナックにおいても5割と市場での存在感の大きさがうかがえます。(出所:カルビーIR資料)
少子高齢化や健康志向の流れ、変化の激しい市場の中で一体どのような製品が生存競争に競り勝っていくのでしょうか。
それでは各社の主要製品を一度見てみましょう。
カルビー → ポテトチップス、じゃがりこ、かっぱえびせん
湖池屋 → ポテトチップス、プライドポテト、カラムーチョ、スコーン
東ハト → キャラメルコーン、ハーベスト、暴君ハバネロ、ビーノ
おやつカンパニー → ベビースター、ブタメン
名だたるロングブランド達が並びます。改めて見直してみると、飲料もそうですがフレーバーによる水平展開の量には驚かされます。
これらの中でも今回はポテトチップス、それもCalbeeと湖池屋に絞ってみていきたいと思います。
ポテトチップス業界1位と2位を比べ、"トップの戦略"とそれに"対抗するための戦略"この二つをパッケージデザインを通して覗いてみましょう。
Calbee ポテトチップス
まずはこちら一度は食べたことがあるであろうCalbeeポテトチップスです。ブランドロゴ、品名、フレーバー名、シズル写真の優先順位が整理され、
センタリングの構造、王道レイアウトをしています。
また真ん中に動きある切り返しが入る事で手軽なスナック菓子らしい軽快なイメージを演出しています。
カルビーという企業ブランドを前面に押し出しています。
CMでもお馴染み「カルビー♪のポテトチップス♪」というフレーズからも
カルビーという企業ブランドをしっかりと伝え続ける姿勢が伺えます。
このパッケージの中で意外に侮れないと思ったのがジャガイモのキャラクター。イラストによって製品の識別性、ユニークネスを一段と感じさせます。
これがないだけでどこかPB製品のような味気なさに。
歴代パッケージの変遷が日経ビジネスで特集されている記事の中で見る事が
できます。またキャラクターに関してもご興味がありましたらぜひ。
湖池屋 ポテトチップス
続きまして、湖池屋のポテトチップス。
基本的なレイアウトフォーマットはCalbeeも湖池屋も同じですが、こちらはブランドロゴの存在が控えめに。
後述します"KOIKEYA PRIDE POTATO"を湖池屋の顔として認知してもらう為にこちらは控えめになっていると思われます。
詳細を見ていきましょう。
・アーチで組まれた赤文字の「ポテトチップス」青い景色の前面に黄色字の「うすしお」とCalbeeと比べて微妙な色使いの差ですがこちらの方がシズルを感じます。
・「うすしお」の字体は少し柔らかく、身近な存在に感じさせます。
要素を品名、フレーバー名、シズル写真+アイコンと絞っている分、色数が多くてもそこまで繁雑な印象を受けません。
全体を通して"純粋に中味の良さを伝える"ことを目指したデザインですね。
湖池屋 KOIKEYA PRIDE POTATO
最後は湖池屋のKOIKEYA PRIDE POTATOです。
湖池屋のリブランディングと同時に発売された商品。要素を減らし、ジャンクな"スナック菓子"から大人向けの"嗜好品"のようなデザイン。
初期のデザインを見たときの衝撃は凄まじいものでした。
それでは詳細を見ていきましょう。
・まずは本体の形状、袋型からしっかりと自立する形に変更されています。
シャープなシルエットが品質感を感じさせ、売り場並んでる時の"個"ではなく複数並んだ、"面での存在感"が考慮されています。
・湖池屋のブランドマークをメインに掲げ、センタリングでかっちりとレイアウト、品質感を感じさせます。手書き風の「本格うす塩味」によって少し動きを出し単調さを消しています。また"本格"の一言も購買意欲をそそられます。
・湖池屋そのもののリブランディングによって商品で伝えるべきメッセージを明確化したことで要素は減らしながらも、しっかりと役割を果たしているパッケージデザインになっています。
湖池屋リブランディングやパッケージ新旧の調査を行なっている記事もあります。ご参考までに。
パッケージから読み解く"Calbee"と"湖池屋"の戦略
"Calbee"は製品を磨き続けることで認知を獲得し、定番化に至りました。
うすしお味を認知させる記号化されたカラーリングとデザインフォーマットなど定番商品の"顔"が作られ標準化されていきます。
"湖池屋"はNo.1に寄り添う形でその標準化されたフォーマットをもちいて同じ土俵で横に並ぶ形で勝負をしてきました。しかし、リブランディングを経て自分たちの"価値"を見つめ直し、商品に託す"価値"を明確化しました。
その結果、"ジャンクなスナック菓子"から"大人向けの嗜好品のようなスナック菓子"という新しい市場を開拓しました。
この2社のような出来事は日常茶飯事起きています。
市場にすでに出ている製品を見て「〇〇の製品は青メインのカラーだから同じカテゴリーのうちの新製品も青くしよう。」やその逆もまた然りです。
既に市場に並んでいる製品をうかがいつつ自分たちの顔を作ってしまいがちです。(失敗しない為には横並びのマーケティングも必要だと思いますが)
デザイン上たとえ同じディティールになったとしても、その理由を他者ではなく自分たちの中に持ち、自立する事が重要ではないでしょうか。
商品を市場に出すと言うことは、その商品に価値があると考えているからです。品質なのか、価格なのかそれとも機能なのか。
その価値を正しく認識し伝え、そして購買へと繋げる。
モノと人を繋ぐ、橋渡しをするパッケージデザイン。中身の魅力を最大限に理解し、包みたいですね。
最後に
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
これらはデザインを個人的に観察したものです。
実際のコンセプトや正解を書いている訳ではありませんのでご注意下さい。
デザインを行う際の参考、パッケージデザインに興味を持つきっかけになれば良いと考えています。
・画像出典 それぞれ公式サイトニュースリリースよりお借りしていますCalbee https://www.calbee.co.jp/
湖池屋 https://koikeya.co.jp/
📖前回記事も併せてご覧いただけたらうれしいです!😇