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スサノオとアマテラス -誓と神々の誕生-
三貴子の誕生
イザナギの禊で誕生した三貴子のアマテラス、ツクヨミ、スサノオですが、それぞれ治める場所を示されます。以後アマテラスとスサノオは記紀ではたびたび登場しますが、ツクヨミの話はほとんど出てきません。
天照大御神に賜ひて詔らししく、「汝が命は、高天原を知らせ」と、事依さして賜ひき(中略)次に月読命に詔らししく、「汝が命は夜之食国を知らせ」(中略)次に建速湏佐之男命に詔らししく、「汝が命は、海原を知らせ」と、事依さしき。
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イザナギに海を治めるよう言われたスサノオですが、母(イザナミ)に会いたいと根の国行きを希望したためイザナギの怒りを買い、天界から追放されます。
スサノオとアマテラスの誓
スサノオは追放される前に、高天原のアマテラスに挨拶に行こうとしますが、スサノオが攻めてきたと思いアマテラスは武装して待ち受けます。
古事記には、その様子を“御髪を解き、御みづらに纒かして”と、髪をといて「みづら(男性の髪型)」にするという記述があり、アマテラスが女神であることを示唆しています。
スサノオは「やましい事はない」と弁明し、その証として「誓」で子を生むことを提案します。誓とは言った言葉の可否を判断する一種の占いです。
天照大御神勅詔らししく、「然あらば、汝が心之清く明きは何を以ちてか知らむ。」とのらしき。
是に、速湏佐之男命答へ白ししく、「各宇気比て子生まむ。」とまをしき。
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まずはアマテラスがスサノオの十拳剣を噛み砕くと三柱の女神(宗像三女神)が生まれます。
次にスサノオがアマテラスの八尺の勾玉を噛み砕くと五柱の男神(天之忍穂耳命、天之菩卑能命、天津日子根命、活津日子根命、熊野久須毘命)が生まれました。
この結果に、スサノオは勝利宣言をします。
我が心清く明かし。故我が生らす子手弱女を得つ。此に因りて言さば、自づから我勝ちぬ
つまり「心が清いから、私の剣から女神が生まれた」と、スサノオは勝利を主張します。
ただし、これは古事記の話で日本書紀だと少しニュアンスが変わりますがスサノオの勝ちは変わりません。
誓約に勝ったスサノオは高天原で乱暴狼藉を繰り返し、ショックでアマテラスは天岩戸に隠れてしまいます。
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誓で生まれた神々
誓で生まれた神ですが、十拳剣から生まれた田心姫神、湍津姫神、市杵島姫神は宗像三女神として宗像大社をはじめ各地で祀られており、勾玉から生まれた天之忍穂耳命は神武天皇の高祖父となり、天之菩卑能命は大国主の説得に遣わされるなど、たびたび神話にも登場します。