『ライフイズストレンジ ダブルエクスポージャー』感想:マックス再登場のエモさと魅力。それが物語の平坦さをカバーするか否かで評価が分かれるであろう作品
ライフイズストレンジ、本当に好きなんですよ。
洋ゲー、アドベンチャーゲーム、そういったものにあまり触れず、FFやドラクエのRPGばかりやっていた自分がふと触れたライフイズストレンジ。
初代をクリアしたのは2016年ですね。
その後、シリーズ作である『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』『ライフ イズ ストレンジ 2』『ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ』をプレイ。
シリーズと同じDONTNODが開発した『Tell Me Why』もプレイ。(ライフイズストレンジはDONTNODが開発していましたが、現在はDeck Nineが開発しています)
つまり、初代ライフイズストレンジをプレイしてからこの作品に沼ってしまった私としては、「初代主人公のマックスが続投、初代から数年後が舞台の『ライフイズストレンジ ダブルエクスポージャー』」はもう、歓喜どころじゃない作品だったんですよね。
当然ながら発売初日に購入。
5日後にクリアしました。
結論としては、「マックスの成長が見られるのが本当に最高」「ストーリー展開は最近のライフイズストレンジシリーズ。悪くはないが初代には及ばない」といったところでしょうか。
ゲームはアドベンチャーゲームであり、物語を体験するものとなっています。
アクションやバトルはありません。
特定の場面、特定の場所を歩き、物を調べたり話を聞き、謎を解いてどんどん物語を進めていくゲームです。
初代ライフイズストレンジの10年後。
主人公のマックスは、大学で写真の講師となっていました。
ときには不法侵入をしてまで、自分の求める写真を追求するマックス。
そこには、初代を変わらない、写真に対する熱意がありました。
同行するのは、同じ大学の院生、サフィ。
サバサバとしてマックスを守り、ときに励ます彼女。
二人は良き友人でした。
さらに、物理学・天文学に情熱を注ぐ院生のモーゼスを含めた3人は、仲の良い友人として関係を築いていました。
そんなとある日。
サフィとモーゼスと一緒に星を見ていたマックス。
いつの間にかサフィがふらりと消え、追いかけるマックスに聞こえたのは銃声。
サフィのいる高台へとたどり着いたとき、そこには銃で撃たれたサフィがいたのです。
物語は、ここから始まります。
サフィは死亡。
しかしその後、マックスは「サフィが死亡した世界」と、「サフィが生きている世界」、その両方を行き来する力を手に入れます。
これが今作のカギとなる、超能力です。
サフィの死の真相は。
サフィには、そして周りの人には、どんな事実が存在していたのか。
並行世界を行き来して、マックスは徐々にその真相へと近づいていきます。
そこには、想像していなかった闇があるとは、想像もせず。
主人公であるマックス。
初代では時間を巻き戻す力がありましたが、今作では並行世界への移動という力を使うこととなります。
同じ時間に、別の世界線へと移動する。
そのため、移動前の世界からはマックスそのものが消えてなくなり、また戻ってきた際にマックスが出現します。文字通り、移動するのです。この力を使い、物語の真相に近づいていきます。
例えば、サフィが死んだ世界線では、事件現場周辺は警察によって封鎖されており、近寄ることができません。
一方で、サフィが殺されていない世界線では、何も事件は起こっていないため現場に近づくことができる。
現場に近づいた際に、(特定の移動スポットから)世界線を移動してくることで、警察の目を盗んで現場を調べることができます。
今作の謎解きは、主にこの仕組みを用いて展開されます。
片方の世界線では頑なに隠されていた事実も、もうひとつの世界線ではガードが甘く調べやすくなっていたりと、2つの世界は微妙に異なります。
サフィの死という事実で分かたれた世界を利用し、マックスが持っている好奇心と正義感で、真実を追求するのです。
素晴らしいのは「マックスの成長」
過去のライフイズストレンジシリーズと何が違うかって、やはり主人公の続投かつ新たな物語、というところでしょう。
ライフイズストレンジ ビフォアザストームでは、初代のメインキャラであるクロエが主人公であったものの、内容は初代の前日譚。それもそれで面白かったのですが、あくまで前日譚であったなと思います。
今作は、マックスという主人公の「その後」を描いたものであり、完全に「正統続編」です。
一体物語がどう転び、どういう登場人物がどういう働きをするのか、そういったものが全く予想できない、完全新作でした。
プレイして感じたのは、やはりマックスの成長でしょう。
初代の時点ではまだ学生であったマックス。それが、大学の講師となり、学生に指導したり、相談に乗ったり。ときには疎まれることもある彼女は、すっかり自立した存在になっていました。
そもそも初代の頃からやや引っ込み思案、スクールカーストでは下のほうであったマックスが、その性格のまま大人になって、穏やかな先生となっている姿に思わずグッときます。
しかし、ところどころ、自己肯定感の低さや自身のなさが垣間見えるところも。そこもまた、年齢は重ねても根本は変わらないマックスの良さがありました。
ここが本当に良いんですよね。
初代であれほど辛い目に遭い、つらい経験をしてきたマックス。
彼女が数年を経て、クロエのことも忘れずに生きている。
これだけでエモいですし、何よりクロエを過去の人、忘れたりせず、ずっと覚えていて気にしている姿も、初代からの続編感を強くし、胸がギュッとなります。
初代の人間関係も薄く維持しつつ、完全に新しい街で生きているマックス。
新たな人間関係も構築しながら、難しい事件に向き合います。
その過程で感じるのは、やはりマックスの成長です。
普通、身近な人が亡くなったら強く気持ちは落ち込むもの。
それでも、マックスは比較的淡白なリアクションに見えました。
錯乱するでもなく、生活が乱れるわけでもなく。
もちろんそういった描写が省略された可能性もありますが、かなりメンタルが落ち着いているように見えました。
これがまさに成長、だと思います。
特にマックスは、クロエやアルカディア・ベイという街において、普通の人が経験しないような体験をしてきたこともあり、その土台があるからこその精神的な安定さを感じました。
プレイヤーとしては、マックスと一緒につらい体験をしてきたからこそ、納得できるマックスの落ち着いた振る舞いが、どこかマックスが遠くに行ってしまったような寂しさもありつつ、心強い安心感を感じられるところでした。
やはり、同じ主人公の続投、しかもかなりゲーム内の年数が離れている場合の最大の魅力は、その描写されていない数年間のキャラクターの成長を想像できるところでしょう。ここはとても良かった。
一方で変わらないマックスのパーソナリティを表す動作、演出の魅力もそのまま。
このあたりの表現のうまさは、さすがとしか言いようがありません。
特に表情。特に目の動き。
非常にこだわりを感じました。
まさにノンバーバル。ゲームにおける「語らずして伝わる」というコミュニケーションがここに極まったなと、感じました。
初代と比べると、衝撃度の弱い物語
ライフイズストレンジの良さは何よりも物語です。
特に、初代の第5章のどんでん返し、緊張と緩和は、いまだに心に残っていますし、あの面白さは忘れられません。初代の魅力的な物語があったからこそ、シリーズがいくつも続いているのだと思います。
では今作はどうなのか。
初代主人公の続投という時点で魅力的なのですが、それだけではありません。
ネタバレになるので詳細は言えませんが、超能力という点で、今までのシリーズにはなかった展開が発生します。
その事実は全く予想していないものでしたし、逆に言えばその事実が明らかになることで物語すべての辻褄が合う、確かに新鮮な要素でした。
一方で、それを用いたとしても…いやむしろ、新要素、新たな超能力展開という、幅広な物語となったからこそ、全体的に「広く浅く」な物語になったように思えます。
初代は時間を巻き戻すというシンプルなもの。物語はほぼクロエとの時間を過ごし、2人の関係が強まった中でのラストだったので、理解しやすい展開だったと思います。
今作は、その相棒的なポジションであったサフィが序盤で死んでしまう展開。
死んだ世界線ではサフィが存在せず、全体的に沈んだ空気に。一方で生きている世界では問題が何も起こらないはずが、こっちはこっちでトラブルが。世界が2つあることで、同じ人物でも別々の状況にあり、彼らのトラブルに関わっていくのですが…。
なんというか、まんべんなく登場キャラクターと関われる分、サフィとの関係性に深みがあまり出ず(半分の世界では死んでいるのでなおさら)、ここも物語を広く浅く感じたところではありました。
さらに、超能力がメインのこのシリーズでこんなことを言うのも野暮かもしれませんが、ある意味様々な謎が「トンデモ展開」で解決されているな、と思ったのも事実。
初代では時間を巻き戻す力を得たマックスが、いつでも時間を巻き戻し、人のために尽くしていった、その結果…という物語であり、また選択で物語が展開していくゲームだからこそ、やり直すこと、やり直せないことという物語の仕組みとも合致していたと思います。
今作はそういった意味では、「どうにかゴジラを倒そうとして科学を発展させてきたが急にウルトラマンが来て解決した」というような、地続きではない解決方法であったような印象を受けました。
ここがもしかしたら、繰り返しになりますが広く浅い物語と感じた大きな理由かもしれません。
もちろん、トンデモ展開で解決したからこそ更なる物語の展開もあるのですが…やはり、一本筋の通った物語であった初代には及ばないなと思ってしまったあたりでした。
また、超能力的に説明のない部分もあり(まあ超能力ってそういうものではあると思うんですが)、なんというか、「説明がなくてもなんか納得する超能力」と、「なんでそんなことになっちゃうの?」という超能力があるというか。やや後者の印象が目立っていました。
まとめると、やはり全体的に広く浅い物語に感じ、そこには初代にはない展開もあったものの、物語の魅力を強く高める結果にはなっていなかったかな、と思います。
それでも、このゲームに好意的な印象を持ってしまう、マックスの魅力
先ほど書いた通り、マックスの成長はこのゲームの大きな魅力です。
物語は薄めな印象ですが、それでもマックスのまっすぐに真相を暴こうとする気持ち、そしてその目的を達成するには勝手に人のパソコンをいじったり、私物を漁ったりするというやや倫理観のズレたあたり、そういう、正義感と打算的な部分がしっかり混ざっている性格が本当に人間らしく魅力的でした。
このあたりは、初代よりもさらに図々しくなったように思えます。それは年齢を重ねたというところもあるかと思いますが、劇中での言葉から解釈すると「クロエと出会ったこと」も大きいかと思います。
クロエという破天荒な相棒と出会ったからこそ、その影響を受けて今の性格がある。そういう強さ、心の機微の描写は、相変わらずうまい作品でした。
主人公続投というメリットを十二分に生かしているゲームだと思います。
そして、マックスの魅力をどの程度感じられるか。
それがまさに今作の評価を図るバロメーターになっているのは間違いありません。
物語としては先述の通りやや薄め。また、物語の全てを決定づける、最も大きな選択肢も、そこまで衝撃的なものは感じませんでした。
ただ、そこに至るまでのマックスの行動にとても愛着が沸いていて。
本当にいいキャラクターなんだなと改めて感じました。
私としては、今年遊んだゲームの中でも、トップクラスに好きなキャラクターとなったマックス。
やや薄めの物語という、やや低めになりそうな評価を覆すとすれば、彼女の魅力の強さです。私はマックスの魅力を十二分に感じたため、「マックスの旅の続きを見たいのであればプレイすべき」と言えます。
一方で、ライフイズストレンジ初代があまり楽しめなかった人や、そもそも初代を遊んでいない人には、おすすめはしにくいです。
昨今。選択型アドベンチャーには、安くて面白いものもあふれていますので、そちらを勧めます。決して今作の物語がつまらないわけではないのですが、やはり初代と比べると…というところがありますので、もし初代のあのマックスが好きであれば、ぜひ遊んでみてもらえるといいのかなと、私は総評的に思います。
steamの評価はやや好評。70%のプレイヤーが高評価というのは、妥当でしょう。高評価90%を超える作品ではないなと思います。
その他:続編があるということの物語の影響
物語的にも、いったん解決はしていますが、ただ間違いなく続編、このエクスポージャーの世界での続編があるであろうことははっきりしています。そういう物語の終わり方でした。
ここが少し物語が弱い原因かなと。
これは別noteでも書いたんですが、要するに「この作品に全身全霊を注ぎ込み、キャラクターはどんどん退場させる、物語も完結させる」というゲームのほうが、「続編を匂わせたり、ビジネスを多角的に展開したい魂胆がある」ゲームよりも、物語のインパクトは強くなるのではないか、というところです。
マックスの旅路がまだこれから見られることに対しては非常に嬉しい、しかしもしかすると今作はその踏み台であったのではないか…ついそういった思いもよぎってしまいます。
とはいえ、もしそうだったとしても、次回作は間違いなく今作以上に跳ねる作品だと思うので、そのあたりはとても楽しみですね。
まとめ
結局、マックスの成長が嬉しいし、あの大好きな初代ライフイズストレンジの世界をまた感じられた、こういう部分は最高でした。
ただ、悪いわけではないですが、ライフイズストレンジの冠を被ったゲームとすると、少し物語のパンチは弱いかなと。
もちろん、引きのうまさは間違いなく、驚きの展開の連続ではありましたが、その割に静かな終わり方というか。ライフイズストレンジの醍醐味である「悩ましい選択肢」にもそこまでプレッシャーを感じなかったのもあります。
多様なキャラクターとの関わりは良いですが、一方で並行世界を行き来するため、「これはどっちの世界の話(キャラクターの状況)だっけ」と少し混乱することも。
続編だからといって、時間を巻き戻す初代のシステムに頼らない気概を感じられましたが、並行世界への移動はちょっと地味だったかなとも思えます。
翻訳と日本語音声は完璧。しかし一部音声ミス(字幕と日本語音声が違う)ところと、音量バランスがちぐはぐなところもあり。ここはアプデで解消されるでしょう。
やはりもう初代ライフイズストレンジの正統続編と言っていいであろう内容だからこそ、大傑作の初代と比べて、辛口になってしまいます。
でも私はそれ以上にマックスと再度、物語を体験できたことに強く感謝しています。
むしろマックスの「これまでの変化」、「今作を通じての変化」を感じられた、良い作品だったなと思います。
そう、マックスの成長か、物語そのものの面白さか、焦点を当てるところで大きく評価が分かれる作品だと思います。
私のライフイズストレンジの評価は初代 > 2 > エクスポージャー > before the storm > true colors といったあたりでしょうか。
そして間違いなく存在する次作。
これはおそらく今作と同じ世界、ほぼ同じ時間軸と考えていいと思います。
期待が高まります。
例えどんな作品であったとしても、ライフイズストレンジが選択型アドベンチャーゲームの新たな扉を開いてくれて、シリーズ全て遊んでいる私としては、これからもずっと追い続けると思います。
まさに次作がライフイズストレンジシリーズの、ひとつの集大成となるのではないでしょうか。
心の底から楽しみですし、もしかしたらここでライフイズストレンジの魅力が完全に断たれる、期待外れな作品かもしれないという恐れもあります。
しかし、それでもやっぱり、早くまたマックスと旅をしたい。
そんな気持ちで、今はいっぱいです。
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