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「Twelve Minutes」感想:時間軸の存在するポイント&クリックで、止まることの無い面白さを感じられる良作

2021年8月20日、名作インディーゲームを発売することで(自分の中で)定評があるAnnapurna Interactive」から「Twelve Minutes」が発売されました。

これがまた面白くて、早速その日にクリアしたので感想です。

物語は、主人公の男性が妻の待つ自宅に帰ってきたところから始まります。
妻との語らい、雰囲気の良い中での食事、そして妻からのサプライズ...。
幸せな空気は、僅か「12分」で幕を閉じます。
警察官が突如自宅へと突入し、妻を拘束、尋問...。どうやら「妻を8年前の事件の犯人」と思っているようです。そして妻から「尋問の答え」を引き出すために、見せしめとして、交渉の材料として主人公は絞殺されてしまうのです。

と、ゲームはここからが本番。殺されたはずの主人公は、12分前の世界へ。
つまり、帰宅直後の瞬間へとタイムリープするのです。

しかし、以前と違うのは「知識」を持っていること。ただ時間が戻るのではなく、主人公は知識・記憶を引き継いでまた12分前に戻ります。それにより、妻に対して「8年前の事件について」質問することが可能になるのです。

この質問をすることでまた状況に変化が起こり、12分経過したところでまたタイムリープ。更なる知識を得た状態で、帰宅直後の状況に戻ります。
これを繰り返すことで、「家に来た警官にどう対応するか」などの変化を起こせるようになり、「妻は何の情報を知っているのか/それとも知らないのか」についてどんどん知識が増えていきます。そしてそれらを繰り返した最終地点に「真相」があるのです。

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ゲームプレイとしてはシンプルで、いわゆるポイント&クリックゲーム。いくつかのオブジェクトにインタラクト出来るので、クリックして調べたり、取得したり、何かアクションしたり。
マグカップをインタラクトすれば取得できますし、取得したマグカップをシンクにドラッグすれば水を汲めます。そのようなアクションを駆使し、物語を知り、勧めていくのです。

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ゲームプレイはシンプルですが、一般的なポイント&クリックゲームと違うのではないか、と感じるところがあります。
多くのポイント&クリックのゲームをプレイしたわけではありませんが、特徴的だと感じたは、このゲームの視点が見下ろし型であること、そして妻と同居している(第三者との関わりがある)点です。

見下ろし型の画面であることで、「キャラクターが動く」というアクションが発生します。いわゆる一人称の画面ではないので、キャラクターの動きも見ることが出来ます。これにより、謎解きに関しての「リアリティ」が生まれるのです。

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リアリティから生まれる生活感

どういうことかというと、例えば、同居している夫・妻が、急に他の部屋で換気口を外し始める姿が見えたらどう思いますか? 「ちょ、ちょっと何やってるの?」って思いますよね。このゲームだと、そういう仕組みが実装されているので、換気口を外して調べたければ「部屋のドアを閉めて、見えないようにして換気口を調べる」必要があるのです。そういった生活感というか、リアリティを大切にしている感じが伝わってきますし、何より他者からの視点を気にする必要がある謎解き、つまりは他者がどう行動するかを把握して謎を解かないといけないのが、最終的に「ちゃんと生活している中でトラブルに巻き込まれた」というリアリティを生み出しているのが見事でした。

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時間軸が存在することによる制限とカタルシス

やはり、時間軸はこのゲームにとって大きい仕組みであると思います。
このゲームにおける時間軸、言い換えればそれは「制限時間」です。基本的には「警察が踏み込んでくる時間」までが、自由行動できるタイムリミットとなります。なので、やりたいことはその警察が来るまでの時間に済ませないといけません。最初はもちろん、何をどうしていいかわからないため手当たり次第に調べたり、出来る限りの会話を妻としてみたり。それはそれでよく、プレイヤーの知識となり、クリアに近づくこととなります。

が、ここでひとつ考慮しないといけないのが、「やることが増える」ということ。ループしているのは主人公一人のため、妻に「警察が来るから急いで逃げよう」なんてことを言っても、取り合ってくれません。もちろん、「自分は12分間をループしている」なんて言っても、なおさら取り合ってくれません。つまり、「まずはその事実を納得させる」必要があるのです。
ループしている事実を納得させ、妻の過去についての話をし...ということを行っているうちに、また警察が部屋に突入してきます。つまりは、自由時間から妻への説得する時間が引かれたうえで、新たな謎に向かい合う必要があるので。ある意味で、じっくり考えられないことおよび、行動の効率化・最適化が求められるデザインとなっています。

制限時間という緊張感と、話を進めることにより行動を最適化する必要。それは厄介なように見えて、バチっとはまったときの気持ちよさは思わずガッツポーズしてしまうほどでした。

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強制的な再挑戦というモチベーション維持

個人的にポイント&クリックの苦手なところがあり、それは一回詰んじゃったら完全にそこで止まっちゃうところなんです。答えを思いつくまで、時が止まっている状態。実は、そこでゲームを諦めてしまうか、攻略を見てしまうことが多くて。

一方でこのゲームは、時間軸とタイムリープが存在することで「あの時間にあのアクションをしたらどうなるんだろう」「ああ、あれを試したかったのにもう12分経ってまたスタートに戻ってしまった」という「あれも試してみたい」という気持ちがどんどん出てくるんですよね。そして、時が止まることなく動き続ける(解法が分からなくても、時間が流れ続けているのでもうやめようかな、というポイントになりにくい)のでついつい何かアクションを試したくなる。モチベーションが下がらないことが素晴らしかったです。

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難易度の話

私のプレイ時間は3.5時間。これでエンディングまで辿り着きました。
難易度はどうなんでしょう...こういうジャンルのゲームがあまり得意でないものの、極端に詰まることなく進められたと思います。
どちらかというと、セリフにヒントがちゃんと示されていたので、違和感のあるセリフ(特に警官のセリフ)を覚えて、それをどう攻略するかで結構進めると思います。
高難易度ではないかな、というのが個人的な印象です。
よっぽどほかのポイント&クリック(特に2D)のゲームのほうが難しかったですね...。

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終わりに

アンナプルナがパブリッシュする期待の新作ということで、とても楽しみにしていました。
蓋を開けてみるとポイント&クリックで、もしかして途中で投げ出してしまうかも...と思いつつも、流れるようなループに夢中になり、発売即日にクリアしていました。

見下ろし型の視点でもわかるキャラクターの細かい動作はリアリティを増していましたし、海外の俳優には詳しくないのですが、ジェームズ・マカヴォイ、デイジー・リドリー、ウィレム・デフォーが声優として参加されているそうで、そういえば演技も違和感なくすっと入ってきたなという印象です。

物語展開はまあ少し強引な感じが無きにしも非ずですが、私としては少ない登場人物でうまくまとめているので良かったなと感じました。
おそらく評価の分かれ目はエンディングでしょうか。私はかなり孤独なエンディングであり、これで終わり? という印象が否めませんでした。
しかしこれもまたある意味で革新的で、余韻を持たせるという意図だと解釈し、上手い作りであると受け止めています。

アンナプルナの作品ということでどうしても甘めの評価になってしまっているかもしれませんが、個人的にはかなり良作と言っていいと思います。
さらに個人的には、好きなストリーマーであるstylishnoobさんがプレイしていたのが嬉しかったです。断片的ですが、ゲームの仕組みを感じるために氏のyoutube動画をリンクします。

また、メタルギアやデスストランディングの小島監督も絶賛されています。


人にお勧めするかしないかでいえば、私は十分にお勧めできる作品です。
ちょっと血の描写があったりするのでそこが苦手な方は難しいかもしれませんが、大丈夫であればぜひ。何度も12分間を体験し、最終的に完璧な12分間を体験してもらいたいです。


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