2022年 ゲームミュージック特集
2022年も色々とゲームをプレイし、先日ベスト〇〇ゲームという切り口でnoteを書きました。
一応、(最近はかなり少なくなりましたが)ゲーム音楽のDJとして10年以上の経験があるので、自分なりに2022年のゲーム音楽を掘り下げたnoteを書いてみようと思います。
未来に語り継がれる音楽であろう『ソニック』
とにかくゲーム全体としての音楽であれば、『ソニックフロンティア』が最強でした。急いでゴールまで辿り着かないといけない電脳空間ステージでは、スピード感のあるクラブミュージックが鳴り響きます。
一方で探索を行うオープンワールドでは静かめでありつつ感情を揺さぶる、ヒーリングのようなアンビエントのような音楽。さらにはボス戦では激しいロック(しかも超かっこいい)と、あらゆるジャンルの音楽が詰め込まれた宝箱のようなゲームミュージック。
ソニックフロンティアの音楽は遠い未来まで語り継がれると思います。
彗星のように現れた『インターネット・エンジェル』
ゲーム主題歌で言えば、今年は『NEEDY GIRL OVERDOSE』の『INTERNET OVERDOSE』が突出していました。
曲の発表自体は2021年ですが、2022年1月のゲーム発売以降ぐいぐいと広まり、その人気と知名度は、キャラクターの超てんちゃんと同様止まるところを知りません。Aiobahn氏の曲とKOTOKO氏の歌声はまさにニコニコ動画。
歌舞伎町のコンカフェからTikTok、そして海外まで、インターネットエンジェルの曲はまだまだ広まっていきそうです。
もはや「音」が見えた、AAAタイトル
ゲーム全体のBGMもさることながら、特定のシーンでの音楽が強烈な印象を残したのが『Horizon Forbidden West』です。特に、音の集落の異質な雰囲気。オープンワールドは環境音が中心となることが多いと思いますが、逆に音がメインとなるエリアを作ることで、BGMが発生する違和感を無くすとともに、不気味なほど神聖な雰囲気を醸し出していました。
他にも、花火が上がるシーンは音楽、映像を合わせてハリウッド映画のような迫力があり、先ほどの音の集落と合わせて、音楽そのものの存在感が可視化できるのではと思えるくらいはっきりとしていました。
「ゆるさ」をクラブミュージックで表現
ゲームのために作られた、オリジナル曲というわけではありませんが、『Olli Olli World』の音楽もまた素晴らしかったです。ソニックフロンティアがスピード感、つまりBPM早めのクラブミュージックで攻めているのに対して、こちらはもっとBPM遅めな曲が多くなっています。
スケボーをテーマとしたゲームであり、スピードが出るという点はソニックと共通しています。ゲームもなかなか忙しない操作を必要としますが、そこは何というか、スケボーというカルチャーの雰囲気でしょうか。
BPMが速い曲も一部ありますが、パキッとしたEDMではなく、やはりどこかパンチ薄めの、勢いがありつつも爽やかな風のような曲でした。ローファイな曲もあり、やや脱力感を覚えるような演出を重視したのではないでしょうか。確かインディーなアーティストの曲をゲーム内のBGMとして使っていたはず。いいBGMでした。
夢の中のぼんやりミュージック
音ゲーはもちろんその音楽がメインコンテンツなので、良い音楽であることが多いと思います。
今年は年末にプレイした『MELATONIN』の音楽に惹かれました。リズム天国オマージュなゲームですが、青年の夢の中がテーマなので、かなりローファイでぼんやりした音楽。肩肘張らず、心休まる素敵なゲームとゲームミュージックでした。
物語のある音ゲーの強さ
音ゲーで言えば、2021年に発売され今年日本語化された『Rhythm Doctor』の音楽の印象は非常に色濃く記憶に残っています。
音ゲーにどうやって物語が入るのか。それはぜひプレイしていただければと思います。特に、『All The Times』はもはや音ゲーの新境地であり、ゲームセンターではなくPCのゲームだからこそ出来る語り口。演出込みで、忘れられない1曲です。サントラ発売、熱望しています。
戦う女の子のガールズロック
なかなかプレイできていないのであまり曲を知らないのですが、スマホゲームの音楽も最近力が入っています。
今年特に良いなあと思ったのが、『ヘブンバーンズレッド』。
麻枝 准氏のシナリオということで、アニメ『Angel Beats!』の『Girls Dead Monster』のようなサウンドを期待し、プレイしていました。
そしてその期待を裏切らない、高いクオリティのガールズロックバンド。彼女らの楽曲はそれだけで十二分にコンテンツの魅力となっています。
特に、「Burn My Soul」における切なさはなんなんでしょうか。この曲をひたすら聞いていました。
美しく静かな音楽は魔法のような切なさ
今年初出の音源では無いですが、『魔法使いの夜』のBGMも素晴らしかったですね。
10年前に発売されていたゲームが今年移植されたわけですが、しかしこの音楽の素晴らしさは驚きでした。ノベルゲームであるため、基本的にプレイヤーが行うのは文章を読むこと、ただそれだけです。
そのため、プレイヤーの受ける印象として音楽の占めるウェイトは大きくなるわけですが、本作の音楽は、間違いなく文章やイラストによる雰囲気をより繊細かつ濃密に演出しています。
スピードランにはスピード感
インディー作品、『Neon White』の音楽も今年は外せません。
Machine Girlによる、FPSとスピードランを合わせた忙しないゲーム性にぴったりの、ジャングルやドラムンベースを中心としたBGMで構成されている音楽は、プレイヤーにゲームプレイを止めさせません。ブレイクコアと言ってもいいであろう音楽もまた、スピード感に加えて激しさを増長させています。
ゲームの仕様として、何度も同じステージを繰り返してより速いタイムに挑戦するものとなっています。
その際、リプレイしてもBGMが途切れたり頭から再生されるのではなく、ゲームプレイが途切れても音楽はずっと続いているのも、良い仕様だなと思いました。小気味の良いSEも好きでした。
音楽が、個性のあるビジュアルをより強くする
漫画がそのまま動いているようなビジュアルと、トリックと弾薬補充がセットになっているスタイリッシュなかっこよさに注目しがちなインディーゲーム『Rollerdrome』ですが、その音楽も素晴らしい。
Electric Dragon氏のインタビュー動画の通り、アナログシンセサイザーを使用し作られた70年代のテイストであるそうです。70年代には生まれていないしその頃の音楽も聞いていない私ですが、氏の音楽でまさにこのゲームのテーマである「レトロフューチャー」を体感した気持ちになりました。
スタイリッシュなアクションと、ビジュアルで構成された世界観をさらに彩るBGMで夢中になれる本作は、先ほど紹介した『olli olli world』を開発したRoll7の作品。Roll7の次回作、そしてその音楽にも期待です。
猫もロボも夢中になる音楽
インディーで言うと、『STRAY』の音楽も非常に質が高かったです。
猫に気を取られがちですが、実は世界を彩る音楽もまた魅力。
アンビエント、神聖、雑多、ネコ、ロボ、サイバーパンク。そんな単語がごちゃまぜになっているようで、統一感をもちゲームを彩ります。
サイバーパンクの世界でありつつ、道端には朽ち果ててサビだらけになった機械。サイバー感とスラム感、そして猫の視点という3要素がうまくかみ合った音楽ではないでしょうか。
目立つシステムに隠れた目立たないフリー名曲たち
今年、その仕組みに注目された作品と言えば『7 days to End with you』が間違いなく挙げられます。しかし、実はその音楽も素晴らしい。ドット絵のゲーム、そしてあの物語にぴったりでした。
実はどうやら、このゲーム曲は著作権フリーのBGMを使用されているようで。フリーBGMの質の高さに驚くと同時に、なんてぴったりな曲をチョイスされたんだろうと唸りました。
映画的な演出には映画的な音楽を
ベスト〇〇ゲームの記事でも書きましたが、とにかく『South of the Circle』の演出は凄いです。まるで映画の場面転換を見ているようで、騙し絵を見ているような感覚。そしてこの物語性の強いアドベンチャーゲームは、Ed Critchley氏の音楽をもって完成します。
物語の演出とBGMの盛り上がりが一致するコンテンツは感情に訴えてきますが、このゲームも同じ。特に再序盤、吹雪の中どんどん激しくなるピアノの音は、まるで音楽が襲ってくるような迫力を感じ一気にゲームに引き込まれました。
「部屋でだらける暑い夏休み」が音楽になった
『じゃあ、また』の音楽もまた素晴らしかったです。作曲は、名作ホラーゲーム『返校 -Detention-』のBGMも担当された張衞帆氏。短編で胸を打つ物語なのですが、特に夏の暑い日を表現しているローファイな曲である『Summer of Youth』を聞いた瞬間、「ああ、夏休みの暑い日、懐かしいな」と思わせられました。
1時間程度で終わるゲームですが、その音楽は全て見事としか言えない美しさと具体性を持ち、まるで映像のように迫ってきます。物語と音楽の2軸が非常に魅力的なこのゲーム、ぜひ遊んでみてください。
いつの間にか気分は18世紀フランス
ゲームが、とある特定の時代、特定の地域を舞台にしている場合、その舞台特有の音楽がゲームのBGMとなることはよくある、というよりもはや必然では無いでしょうか。『Card Shark』は、18世紀のフランスを舞台としたイカサマアドベンチャーです。
成り上がっていくゲームなので、大半は豪華なお屋敷やパーティー会場のような場所が舞台。物語としての演出はもちろん、純粋に音楽だけでも雰囲気や明るさ、匂いを感じるような、BGMとして抜群の音楽でした。
ドット絵×ラップの妙
日本語ラップからクラブに興味を持った身として『ikenfell』のBGMは外せません。夫婦のアーティスト「Aivi & Surasshu」が音楽を担当する本作、昨年12月頃に日本語化されたのでプレイ。ゲームボーイアドバンス調のドット絵と、スーパーマリオRPGのようなバトルアクションが面白いなあと思っていましたが、イベント戦闘時に突如入ってきたボーカル、そしてそのラップのかっこよさに脱帽。しかもそのスキルも高く、2番のラップは痺れました。
聞こえないはずのボーカルが聞こえる
これは今年発売でもないんですが、今年プレイした『英雄伝説 零の軌跡』の音楽。軌跡シリーズの音楽は素晴らしいのですが、特に『鉱山町マインツ』のBGMには驚きました。
王道3DRPGの軌跡シリーズ、これは鉱山のある町のBGMですが、まるでボーカルが聞こえそうなメロディ、そして鉱山の寂しさというより、人間の感情の切なさのようなものまで伝わってきます。美しいカントリーミュージックのような曲でした。
リマスターでも色褪せない、クロノアの名曲
素晴らしいリマスターであった『風のクロノア 1&2アンコール』、当時の音楽を特にリマスタリングしたわけでは無いようですが(調べたけど出てこなかったので、そうだよね……?)、改めて聞いても全く色褪せず魅力的な音楽であることに驚き、懐かしく感じました。
やはり名曲は「STEPPING WIND」でしょうか。懐かしかった……。
まさかの復活と変わらない歌声
格闘ゲームの金字塔、ストリートファイター。
その新作『ストリートファイター6』のイメージソングに、まさかの『恋しさと せつなさと 心強さと』が復活。誰か有名歌手がカバーするのではなく、篠原涼子さんご本人が28年ぶりに歌われています。これがまずファンとして熱い気持ちになるのですが、何よりその歌声の変わらなさ。本当に驚きました。改めて聞いてもいい曲ですね。
あれ? イロモノかと思ったらいい曲
女子高生が戦国時代に異世界転生して、同じように異世界から集まった忍び(女の子)たちと、魔王を倒す……という、突っ込みどころ満載なストーリーの『サムライメイデン』。
そのオープニング主題歌「DIVINE TUNING」は、冒頭から漢字と英語と口語が混ざる歌詞のハチャメチャ具合。妙に頭に残るその歌詞を聞き、大丈夫かこの曲……と思って聞いていたのですが、サビのエモい感じと和風な感じに思わず聞き惚れてしまいました。
ちなみにネタバレになるので載せませんが、エンディング曲もめちゃくちゃ良い曲です。
終わりに
コロナ以降DJ活動は減り、今年は2回のみ。
代わりにラジオ出演とnoteでの活動が増えたのですが、多分今後のこのくらいのペースになっていくのかな? と予想しています。
そうなるとリミックス音楽を掘る時間が減り、ゲームをプレイし原曲を知る機会が増えてくるのかなと思います。
昔の良い曲も大事にしつつ、新しい曲を貪欲に知識として取り入れていきたいですね。
仕事も年々責任が増し、業務も増し、さすがに20代の頃のように月2月3とDJをするのはもう不可能ですし、アウトプットの方法としてポッドキャストを選択しようかなと。まだちょっと恥ずかしさがあり踏ん切りがつかず出来ていませんが、始めたら聞いてみてくださいね。