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可動域エクササイズでゴルフパフォーマンスアップ

東京都内を中心に、プロゴルファーをはじめとするアスリートのトレーニング指導に携わっている齋藤雄介です。

肩研では2つ目の執筆記事となります。
今回もゴルファーに携わる皆様に向けた内容となっております。前回に引き続きスポーツパフォーマンスの向上に興味のある方々にも参考にしていただけると幸いです。

目次

・はじめに

・ゴルフスイングに必要な可動域

・肩、体幹、股関節の可動域を改善させるエクササイズ

・まとめ

はじめに

 スポーツを行うにあたって「身体が柔らかいほうがよい」という言葉は、皆さん聞いたことがあるのではないでしょうか。この「身体が柔らかいほうがよい」とは、何に良いのでしょうか?
ケガ予防に効果があるのでしょうか?それともパフォーマンス向上に役立つのでしょうか?
もしかしたら、柔軟性は関係ないなんてこともあるかもしれませんよね。

今回は、ゴルファーに必要な可動域についてパフォーマンスの観点からお伝えします。

ゴルフスイングに必要な可動域

ゴルフは、身体の回転する力をクラブに伝えてボールを飛ばすスポーツです。
そして、この回転する力は、身体を大きく捻ることができるほど強くなると考えられています。

ゴルフにおいて、この捻りの大きさを『Xファクター』と呼びます。

Xファクターとは、上半身(体幹)と下半身(骨盤)の回転角度の差を指します。
具体的には、骨盤に対して体幹がどれだけ捻転しているかを示す指標です。
ダウンスイング開始時に最大となると良いと言われています。

このXファクターを構成する要素には、肩、胸腰椎、股関節の可動域、筋力など様々な要素が絡み合っています。

Xファクターという言葉が一般のゴルファーの間で認知されているくらい、可動域についてゴルフでは注目されています。
実際にゴルフの上手さによるの違いによる可動域を見てみましょう。

この研究では、熟練ゴルファー(ハンディキャップ5以下)と平均的なゴルファー(ハンディキャップ10~20)の肩、体幹、股関節の可動域をそれぞれ矢状面、前額面、水平面で調べています。矢状面は前後、前額面は左右、水平面は回旋の動きとなります。

結果を見てみると、矢状面、前額面での可動域には差が見られず、回旋に関わる水平面の可動域は全て熟練ゴルファーの方が全て大きいという結果でした。(赤太字が大きな差があったことを示す箇所です)
※ここにある表は論文の通りに示しています。前額面の体幹の可動域に赤字でP値0.003と効果量の1.70(1.26~2.14)は、本来、水平面の体幹の数値であり元論文の記載ミスだと思われますのでご注意ください。

熟練ゴルファーの方が年齢が若いという違いはありますが、加齢によって水平面の可動域だけ狭くなることは考えにくいです。ゴルフの上手い選手は肩、体幹、股関節の回旋可動域が広いという特徴を持っているのでしょう。

またこの研究ではXファクターとゴルフパフォーマンスの指標についても調べられており、Xファクターはボールスピード(r = 0.733、p < 0.001)と飛距離(r = 0.737、p < 0.001)と強い正の相関がありました。

以上の結果から、熟練ゴルファーは大きなXファクターを作り出すことでゴルフのパフォーマンスを高めており、そのためには体幹と股関節の柔軟性が重要であることが示唆されています。


そこで今回は、熟練ゴルファーで数値の良かった肩、体幹、股関節の水平面の可動域を改善するエクササイズをご紹介します。

肩、体幹、股関節の可動域を改善するエクササイズ

まずは肩関節の外旋、内旋の可動域を改善するエクササイズです。

肩関節は関係がなさそうに思われますが、右打ちであればバックスイングの時に右肩が外旋、左肩は内旋し、フォロースルー時は右肩が内旋、左肩が外旋することで強くボールを打つことに役立ちます。

非常にシンプルなエクササイズです。手首の動きに惑わされずしっかりと肩関節を動かしてください。体幹部も固定してまっすぐをキープしたまま行いましょう。


次に体幹のエクササイズです。

体幹の回旋は「よく腰を回す」と表現されますが、実際に回旋するのは胸(胸椎)の部分です。
胸椎の回旋可動域を改善するエクササイズをご紹介します。

最終的には画像のように180°開くことを目標に軽い反動を使いながら胸を張って徐々に可動域を大きくしていきましょう。骨盤から下は固定し動かないようにしてください。また前に出した足も動かないようにしましょう。

最後に股関節の回旋に関わるエクササイズをご紹介します。  
股関節の可動域が出ないことで、回旋の動きをあまりできない腰椎を過度に動かしてしまい腰痛につながることもあります。ケガを防ぐという観点からもしっかりと股間節の可動域を確保しておきましょう。

足や膝をあげたところで少しだけキープしましょう。この姿勢をつくると膝が痛み場合がありますのでその場合は無理をしないでください。普段使われていないためにお尻が攣ることがあります。攣ってしまうからやめてしまうのではなく身体が起き始めていると思って無理ない範囲で継続してください。


このエクササイズは、私が指導してるゴルファーにもよく使用しています。


肩、体幹、股関節のエクササイズをそれぞれ紹介しました。
どのエクササイズも10~20回を2~3セット繰り返してみてください。徐々に可動域が改善されていくと思います。

まとめ

・熟練ゴルファーの方が肩、体幹、股関節の回旋可動域が大きい

・熟練ゴルファーの方がXファクターが大きく、
 ボールスピードと飛距離もよい

・回旋可動域を改善するエクササイズが特に重要

肩、体幹、股関節の水平面の可動域の大切さをゴルフパフォーマンスの観点からお伝えしました。
今回ご紹介したエクササイズを丁寧に継続的に実施していただくことで、可動域が改善しゴルフのパフォーマンスの向上に役立ってきます。

ゴルフのスコアアップを目指している方は、ぜひ行ってみてください。

また水平面以外の可動域もケガをしにくい身体をつくるという意味では重要です。
今回ご紹介はしていませんが、一般的なよく知られているストレッチもぜひ実施してください。

参考文献

McHugh ,MP ,O’Mahoney, CA, Orishimo , KF, Kremenic , IJ, and Nicholas,SJ. Importance of transverse plane flexibility for proficiency in golf. J Strength Cond Res36(2): e49–e54, 2022

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