912回目:【心理】記憶の定着方法〜新しい万年筆とポケットノート〜
2024年03月10日の備忘録
このブログでは、私のメモ帳の取り方に関して少しシェアしようと思う。
【1】そもそも私はメモを取らなかった
私は、インドに駐在中商談や面談では、ほぼメモを取らない。これは、普通のビジネスマンにはあってはならないスタイルと言えるだろう。
【1-1】メモを取らない理由
商談中私は何をしているかというと、会話の流れの中での相手の顔つき、相手の仕草を洞察している。更には、会話の流れから、我々が本当に聞きたい事が適切に返答が返ってきているか、話が違う方向に行っていないかに、全ての神経を集中させている。
肝心のメモは、常に横に座っているインド人に任せている。私の横にいるインド人も、私がそういう役目を果たしていることを理解している。ここはインドだ。全て英語で行われる。その英語も日本人には分かりにくい。だから、一生懸命メモを取っていると、本来聞きたかった事を、メモをしているうちに逃してしまうのだ。一生懸命メモを取る事は、横に座っているインド人に任せた。
更に、商談中ノートに書き殴ったメモ。これを見返す事はあるのだろうか。今までの経験上、あるようで意外と無い。あるとすれば、商談議事録を書く時だろうか。であれば、私の場合、数字など100%忘れてはならない事はiPadに軽く書いて、記憶がなくなる前に、その日のうちに商談議事録を書き上げる癖をつけている。メモが無いから、忘れる前に全てその日のうちに議事録を完成させるのだ。あと、隣にインド人にメモさせているので、最悪私が忘れても大丈夫なシステムとなっていた。
【1-2】記録手段は録音とiPad
そんな私もたまには記録を取る。それは、一語一句逃してはならないとても重要な商談だったりする時だ。その時でも私はメモを取らない。”録音”する。だから、私は常にキーパーソンの近くに座るようにしている。それは、”音を拾うため”だ。更には、商談中全くメモを取らない私もノートは使う。それは事前準備であったり、頭を整理するために使う。そのメモ帳はiPadで電子化されたノートを使う。紙のノートを使っていたら、何冊も増えて後から検索出来なくなるからだ。
【2】そんな私が万年筆買った
メモを取らない私が、何を思ったかメモをとり始めた。理由は簡単。「万年筆」を買ったからだ。悩みに悩んで妻に内緒で買った。妻に、「万年筆欲しい」と相談したところ、「iPadがあるのに、何で必要なの?」と正論で一蹴された。ただ、私は欲しかった。理由は、「形から入りたかった」からだ。それ以外理由なし。
【2-1】イタリア製AURORA
妻に内緒で買った万年筆は、イタリア製のAURORAというブランドだ。モデルは、「イプシロン」。色味は、「イエローゴールド」。まるみを持った曲線美のイタリアンデザインと書きやすさを併せ持った「Y(イプシロン)」シリーズ。クリップが「Y」の形をしている「Yークリップ」が特徴。付属のコンバータとカートリッジのどちらかを選んで使うことのできる両用式タイプ。私が尊敬する会社の上司が持っていたものと同じ型。そろそろ私もそういう物を買ってもいい年頃になっただろうと思い買った。
【2-2】万年筆の歴史
万年筆の歴史も調べた。万年筆は長い歴史を持つ筆記具。その誕生には諸説あるが、一般的には1809年にイギリスのフレデリック・バーソロミュー・フォルシュが発明したと言われている。フォルシュが発明した万年筆は、軸内部にインキを貯蔵し、毛細管現象でペン先に供給する仕組みだった。しかし、初期の万年筆はインク漏れや故障などが多く、実用性に欠けていた。
その後、1884年にニューヨークで保険外交員をしていたアメリカのルイス・エドワード・ウォーターマンは、ある大口契約を取り交わす席で、万全を期して新品のペンを用意していた。ところがそのペンからインクが漏れ、重要な契約書を汚してしまう。ウォーターマンが大急ぎで新しい契約書を持って来たときには既に、ライバル会社と契約を結んだ後だった。この苦い経験が、ウォーターマンに空気圧を利用してインキを供給する毛細管現象を用いた万年筆を開発させたらしい。これが現在の万年筆の原型と言われている。ウォーターマンの発明以降、万年筆は改良を重ね、現在では様々な種類の万年筆が販売されている。ウォーターマンは現在世界的に有名な万年筆ブランドとして親しまれている。
この歴史も妻に話し、購入の許可を得るべく交渉したが、残念ながら妻はこの感動のストーリーに全く感動をする事もなく、薄い反応をされて終わった。
【3】万年筆を買ったら、逆にメモをしたくなった。
折角買った万年筆。買ったからには書かなきゃならない。という事で、私は無印の小さいメモ帳を買って、それを常に胸ポケットに入れるようにした。
この小さなメモ帳”ポケットノート”には、私なりのコンセントがある。それは、「私の将来に役に立ちそうな知識」「興味を持った知識」「何となく考えた事」を取り敢えずストレスをかけずにサラッと書くということ。ニュースや新聞読んだ時に、面白い記事を見つけたら、その時の単語や記事の内容を軽く書く。商談中、「個人的に面白い」と思ったことを軽く書く。将来、何の役に立つかわからないけど、何となく気になったら軽く書く。そういうコンセプトだ。内容は、仕事と関係ある時もあれば、関係ない時もある。私個人の情報ノートとして常に肌身離さず持つようになった。
このメモ帳は、いわゆる実際は見返さない事が多い、「内容の濃いノート」とは違い、「良く見返す簡単なポケットノート」となっているのが大事な点。面積が小さいから、具体的に書くスペースが無い。だから、自ずとサラッと単語だけ書くことになる。その代わり良く見返すノート。薄いノートの方が寧ろいい。厚いノートだと、重いし、見返す気がなくなる。
【4】記憶が異常に定着し始めた。
すると、2ヶ月もしたら自分の生活に変化が出始めた。曖昧に軽く書いてあるにも関わらず、意外とポケットノートに書いていた内容を、実生活の会話で使えるようになって来たのだ。これは、“いつの間にか覚えていた現象” と言えるかもしれない。
【4-1】分散学習
私が経験真っ只中の“いつの間にか覚えていた現象” は、知らぬ間に行なっていた「分散学習」の成果かもしれない。「分散学習」とは、休憩などを入れながら、間隔を置いて学習を繰り返すこと。実は、1回にまとめて頭に詰め込む「集中学習」の記憶よりも、この「分散学習」の記憶のほうが長続きすると言われてる。これを心理学では「分散効果」と呼ぶ。
理化学研究所が2011年6月15日に発表した研究によると、「集中学習」の記憶は小脳皮質に保持されるが、学習時に “間隔を空ける” と記憶が移動して、小脳核に長期記憶として保持されるそうだ。また、記憶が移動して固定化されるためには、“休憩などで間隔を空ける” 際につくられるタンパク質が不可欠とのこと。
【4-2】薄く・速く・繰り返すと記憶は定着する
別の観点でも、 “いつの間にか覚えていた現象” が理にかなう行動に後押しされていたと気づいた。日本人初の世界記憶力グランドマスター・記憶力日本選手権大会6回の最多優勝者である池田義博氏が提唱する勉強法と、以下の点が重なっていたからだ。
分散学習をベースにした「3サイクル反復速習法」
資料の内容を思い出しながら書く「1分間ライティング」
【4-3】3サイクル反復速習
「3サイクル反復速習法」とは、「速くザッと終わらせる勉強」を繰り返すこと。このベースにあるのが、前出の分散効果だ。同氏は「覚えるべきことを薄く分散して覚えたほうが、記憶に定着しやすい」と伝えている。取り敢えず、ポケットノートに軽く、薄く、速く書いているものの、その内容は時より重複する。そして、常日頃から見直しているため、いつの間にか記憶に定着していたのかもしれない。
【4-4】1分間ライティング
「1分間ライティング」とは、短い制限時間のなかで、思い出しながら、頑張って書き出すという勉強法。これは、強制アウトプットである。この点にも心当たりがある。それは、私がメモの内容を思い出しながら、このブログを執筆する行為と重なっている。私が書くブログは、意外とポケットノートに軽く書き殴った内容をベースに執筆されている。池田氏いわく、こうするとアウトプット効果で記憶が強化され、覚えたかどうか確認できる。
【5】効率のいい勉強法
当初は「スキマ時間に少しずつ勉強するぐらいでは、記憶に残らないではないか?」と思っていた私。机に座って本を広げる私。しかし、上述の経験をふまえると、間を空けながらスキマ時間に勉強することはむしろ、記憶の定着に好条件だと気づき始めた。なお、池田氏の「1分間ライティング」では、まだ覚えていない箇所がたくさんあっても、無理矢理アウトプットすることに意味があるそうだ。大変でも “思い出そう、書き出そう” とすることが、記憶の定着に効果的らしい。スタンフォード大学オンラインハイスクール校長の星友啓氏も、ノートや教科書を見ずに思い出そうとするのは大変だが、ただ書かれたものを見直す “やったつもり” だけの復習より、ずっと効果的だと伝えている。
【6】万年筆買って良かった。
私の新システム”ポケットノート”は、あえて「軽く」「速く」「薄く」書くことにする。そして、曖昧にメモされているその内容を、頑張って思い出す行為を続ける。それは、ブログの執筆だ。万年筆の使い道が見つかって本当に良かった。欲しかった万年筆愛着が半端ない。無くさないようにしなければ。
因みに、妻に内緒で買った万年筆は、後日妻に見つかることになる。インドで撮った集合写真を見せたときだ。キラキラと胸元に光る謎の物体。
私「今日、●●で商談したんだよ。こんな感じで。」
妻「へ〜商談頑張ったね〜・・・・ん?私くん、その胸に光っているものは何?」
私「?!?! こ・・これ。ごめん。買った。。(汗)」
妻「へぇ・・・黄色の万年筆かぁ。黄色・・。なんかおもちゃみたいだね・・やっぱ、あんまりカッコよくないなぁ。」
重要なのはそこだったんかい!!