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百字小説㊶~㊿いっき読み ▶大作


㊶「病気」

「私って病気なんですか」「はい。奇病の一つのメルキョ病ですので手術が必要です。もしかすると人工臓器を埋め込むかも」これを聞いて私は嬉しくなった。この病状を種に話をすれば芸能人としての仕事が増える。
(98字)
 

㊷「サイボーグ」

私はサイボーグ人間である。そうはいってもほとんどが生身の肉体であり「ほぼ人」である。だからケガをすれば血が出て、身体能力も一般的。容姿もワガママボディーの中年男性。ただ脳がサイボーグ化しただけである。
(100字)
 

㊸「小銭稼ぎ」

金欠なので小銭稼ぎ。私は家にあるモノをかき集めた。使わない家具からホコリまで全部。これらは最近、資源として買い取ってもらえるようになった。今の私の部屋にはモノといモノもない。私は仕方なく髪を切った。
(99字)
 

㊹「予知された未来」

未来予知しても未来は変えられない。予知した未来は「未来を知った自身」の運命だから。私は数年後に病死する未来を見た。どうせ死ぬのならと私は遊びに金を使い果たした。だから今の私には、治療費を払う金がない。
(100字)
 

㊺「地獄」

人間は誰もが地獄に堕ちる。私も例外ではなく死んで地獄に向かっているところである。しかし地獄に行きたいわけなく抜け道がないか探している。ここまでやって諦められないと何度も思い、もう何千年もかかっている。
(100字)
 

㊻「漫画家」

あの漫画、今週も休載だ。「アイディアを忘れてしまった」と誤認させる装置をあの作者に送り込んで、休載続きだ。作者はノイローゼだろう。今の内に私が人気漫画家になろう。さっきアイディアが浮かんだ気がするし。
(100字)
 

㊼「飛行機」

東京発ロンドン着の飛行機、ロンドン発NY着の飛行機、NY発東京着の飛行機。私はこの三つのフライトを乗り続けている。これでずっと夜にいることができる。もちろん席は窓側で、かぐや姫のいる月を見つめられる。
(98字)
 

㊽「死刑囚」

友人を殺すほど幸せになると思い込むサイコパスは死刑囚となった。私はその死刑囚を看守として見守るのが仕事である。何か月も監視した、ある日の点呼の時。死刑囚は「ありがとう心の友、看守さん。」と言った。
(98字)
 

㊾「信号待ちにて」

私が車に乗って信号待ちしていると、見知らぬ人に窓を叩かれた。窓を開けてみると、その人は大きなビニール袋を私に掴ませて足早に帰った。袋には「あなたの排出した排気ガス。あなたが綺麗に処理してください」と。
(100字)
 

㊿「成功の秘訣」

物事を成したいのなら、成したいことと反対のイメージを持たせると意外性によって成功する。普段は運動音痴のフリをすることで体育祭ではクラスの英雄になれる。そう思い迎えた当日、私は二人三脚のみの出場である。
(100字)
 

▶大作

「面白い話を思いついた」と思いパソコンに打ち込み始める。大作小説になる確信が力強い表現になり冒頭部分が書きあがった。しかし見返すと支離滅裂。私は力なく適当な名前で保存した。いったいこれで何文字分かね。
(100字)


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↓前回の10+1作品


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