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百字小説 51~60 いっき読み ▶話題


(51)「アナウンス」

アナウンスが入る。「本日はご搭乗頂きありがとうございます。只今ウェイストゲージが最大値に達し、化粧室のご利用が出来なくなりました。ご了承下さい。」東京発NY着のフライトの道半ば、私は水を飲む手を止めた。
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(52)「ご自由に」

住宅街の道端で「ご自由に」との張り紙のついた箱。通りがかりの人が中をのぞく。しかし中には何もなかった。その人は苛立って箱を蹴っ飛ばして歩き去った。その箱をご自由に使っていいということは知らない様子で。
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(53)「キャリーケース」

その女性はキャリーケースを持って水族館に来ていた。水族館受付の私が「こちらでお荷物お預かりしましょうか」と尋ねると「彼氏と旅行なんです。なので結構です」と答えた。そのキャリーケースの中身はまさか……。
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(54)「夜空」

その夜はいつになく街は静寂に包まれ、住人各々は固唾をのんで見上げていた。視線の先には、空を埋め尽くすほどの流星群の七色の煌めき。二度とない現象を見ることができる世界には、またとは無い平和が訪れていた。
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(55)「アンドロイド」

「人にそっくりですね」と感想を絞り出すと、博士は完全自立型アンドロイドの完成を自慢した。博士溺愛アンドロイドの外観は横幅広い巨漢。こうでもないと必要機器を内蔵不可能とはいえ私は漫画の読みすぎだろうか。
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(56)「悪魔」

いつからか自分に悪魔が付いていた。しかし見かけだけで、悪魔の助言で万事上手く行く。富も名声も思うままに。だから私はたまに悪魔に感謝する。悪魔は決まって「お前が幸せだと不幸が広がるんだ」と返答するのだ。
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(57)「釣方」

この魚の釣り方を教えてやろう。こいつは鋭い歯を持つが草食性だからルアーでは食い付かない。垂直に穴を掘って、もんどり返しを仕掛ける。これで三ヶ日ほど待てば捕まる。是非試してみてくれ。生息地は知らないが。
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(58)「トンネル」

無限トンネルと呼ばれる崩落したままの末崎トンネルをかれこれ一時間突き進んでいる。いまだ出口は見えない。繋がっている先を記事にしたいが噂通り道路は無限に続く。もう少しで何か得られそうだが引き返すべきか。
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(59)「内見部屋」

内見した部屋は天井が低く、シーリングライトの暖かみを感じるほどだった。間取りもかなりの圧迫感。縦長3畳のリビングと洗面所とトイレだけ。そもそも部屋が地下9階だから窓も無い。やっぱり火星移住辞めようか。
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(60)「街角」

ミュージシャン目指して、今日も街角で冴えない曲を一人ポツンと演奏してる。何も無く今日も終わると思った時、一人の子どもが母の後を歩きながら拍手をくれた。これだけで目が潤む私はきっと明日も歌ってるだろう。
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▶話題

盛り上がる話は上手い普遍的話より下手でも突飛な話だと思う。合コンの為に私は記憶を遡り、珍しげな話を引っ張り出して脚色をつけて準備した。迎えた当日。盛り上がったのは私以外の人のとりとめのない話であった。
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↓前回の10+1作品


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