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食レポ|五右衛門の明太子と辛子高菜の博多風

 体内に注いだコーヒーが心拍を鎮め、意識は刻々と現れる時間へと焦点を合わせた。木々が揺れるような人々のざわめき。日曜午後の昼下がり。満たされた空気が僕の後を追う。店を後にし、家族が待つ近くの「洋麺屋五右衛門」へと向かった。

 奥のボックス席へと身を滑らせる。適度に明るさを落とした店内。五右衛門は僕の記憶を高校時代へと巻き戻す。部活の帰り。何カ月かに一度、近くの五右衛門で空腹を満たした。決まったメニューはない。たらこが多かった気もする。何を頼むか。そして、一口目を口に運んだ後に何を言うか。味の感想を言い合う、そんな平穏な時間が楽しかった。

 昔からパスタが好きだ。パスタとソースでの成立。その潔さにも好感を覚えた。無限に広がるバリエーション。毎日でも食べられる。母親が作るパスタを口にし、本気でそう思った。メニューを手にし、じっくりと眼を行き渡らせる。僕は「明太子と辛子高菜の博多風」を注文した。

 先に供された妻たちのパスタを横目で見ながら、他愛もない雑談を交わす。五分程度の間。差し出された有田焼の大皿。こんもりと盛られた色鮮やかな食材の数々が眼を引く。明太子、シラス、万能ネギ、刻み海苔。その周囲には白ごまが散りばめられている。中央には宝石のように卵黄が輝く。円を描くように、それらの具材を割り箸で混ぜ合わせた。右から左。下から上。世界が同じ色に染まっていく。そんな感覚が肌に浮かぶ。

 手前の麺を引き上げる。濃厚なバターの味わいが口いっぱいに広がる。バターを潤滑油として、うまみが押し寄せる。辛子高菜とパスタ。合わないはずがない。遠くに和の趣を伴った辛味が顔をのぞかせる。豊富な具材がまとまり、完成した連動性を体現していた。麺に絡んだベーコンも肉気と塩気をもたらす。時を追うようにして、皿から麺が消えていく。

 変わらない。そして、懐かしい。品は違えど、通底しているテイストが五右衛門にはある。変わらない黄金律。僕は今日もそれに触れた。


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