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小説が書けない男の日記(2023.3.19〜3.25)


3月19日(日)
 昨日とがらりと変わって晴れ渡った日、だけど吹く風はまだ冷たさを含んでいた。そしてそれは花粉を存分に孕み、私はたいそう苦しめられた。
 YouTubeで見て作ってみたくなったレアチーズケーキの材料を買い出しにいったけれど、まあまあお金がかかって、やるなら月1回くらいかななどと思った。物価高早く静まれ。

 ガルシア=マルケスの『わが悲しき娼婦たちの思い出』を手に取って一文目からおもしろい。おもしろいけれど、この一文目の持つ推進力に感嘆した。こういう推進力のある一文目を書けるようになりたい。

 満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた。

 G・ガルシア=マルケス『わが悲しき娼婦たちの思い出』(木村榮一訳、新潮社)p. 12


3月20日(月)
 よく働いた。3人が寝静まってからレアチーズケーキを作りはじめた。ヘラがなくてスプーンで必死に混ぜ合わせ、なんとか形にはなった。とはいえヘラがないと混ぜるのもだし材料を牛乳パックに流し入れたり表面を均したりするのに不便だ。来月あたり買おうかと思う。明日できあがるのが楽しみだ。


3月21日(火)
 祝日の朝。レアチーズケーキは見かけはやっぱり不格好で、均してなかったから綺麗な直方体にはならなかった。だけれど味は美味しくて、ゴムベラさえあれば今度は見た目も整えられそうだった。

 妻が数年前に亡くなった友人のお墓参りに出かけ、朝から二人をワンオペ。洗い物や洗濯をしている間、Eテレの番組見せたりして待ってもらっていて、その後3人で役場前の広場へ出かけた。おととはエルゴで抱っこし、あにちゃんはストライダーにまたがる。ここ1ヶ月くらいであにちゃんはストライダーをだいぶ乗りこなせるようになっていて、妻によると、保育園から帰ってきてから練習しているそうな。前はどうやって乗るものなのか分かっていなかった様子だったけれど、もう大丈夫なようだった。
 広場ではおととも降ろして3人で小さな丘に登ったりお茶を飲んだりしてのんびり過ごした。風もほとんどない暑いくらいの日だった。帰ってきて、おととはすぐに昼寝。あにちゃんと二人でホットケーキを作り、あとはおかずを一品作って食べた。その後におととを起こしてお昼ご飯を食べさせ、3人で昼寝を試みる。あにちゃんは風邪薬の影響もあってかすんなりと眠り、しかしおととは眠ったばかりだったので全然寝ず、結局15時30分頃に妻が帰って来る頃にようやく眠った。

 考えてみるとあにちゃんとおととの二人をワンオペした時間の最長を大きく更新した。あにちゃんがやっぱり精神的に少し成長したようで本当にありがたかった。


3月22日(水)
 仕事。明日が雨らしく夕方から頭痛が始まった。
 帰ってきてもあまり意欲が湧かずにいたが、パラパラと捲っていたモモコグミカンパニー『目を合わせるということ』の文庫にすうっと入っていけてそのまましばらく読んでいた。ガルシア=マルケスは電車にて。

3月23日(木)
 昨晩、『目を合わせるということ』を読みながら、ふと、何か地震が起きそうな予感がして、硬直した。静けさ、というのが不穏で、そのまま来るかなと思ったけれど、結局二階からゴンという音がしておととが敷き布団から体をずり落とした音だった。でも気をつけないと、と思う。どう気をつけたらいいのか分からないけれど、起きないなんてことはないのだ。それが12年前に学んだことのひとつだ。

 明日で3週連続のイベント金曜日が終わる。終わって、また2週間後だ。繁忙期も折り返し、といったところか。4月いっぱいだ、がんばろう。


3月24日(金)
 昨日の雨は止んだ。だけれど曇って肌寒い。寒暖差はご勘弁。
 イベントがまたひとつ無事に終わった。大学の卒業式なのだろう、スーツや袴が電車や駅のホームでちらちらと見かけた。 
 くたびれた一週間で、まだあと1ヶ月ほどは忙しいか。明日は久しぶりに整体。


3月25日(土)
 久しぶりに図書館に行こうとなり4人で向かう。曇りの、いまにも降り出しそうな空だったけれどなかなかしぶとく曇っていた。妻があにちゃん用にと図鑑をいろいろ借りていた。私は児童書コーナーを眺めていて、ふと『エラゴン』が目に留まり、そういえばこのシリーズは中学生だったかの頃に1巻だけ読んだっきりだということに思い至り、借りてみることにした。中学生の頃はハリー・ポッターシリーズもそうだけど、なによりダレン・シャンシリーズにはまっていたのだった。650ページもあったけれど、家での読書のお供はしばらくこれになりそうだ。楽しみ。
 昼ご飯を食べて整体。その後少しだけぷらっとすることにして、自転車でブックオフに行き、古谷田奈月『フィールダー』とフランツ・シェッツィング『深海のYrr』を文庫で上中下巻が各100円だったので買った。その後すぐ近くのスタバへ。40分くらいゆっくりして本を読みポケモンGOをした。
 『目を合わせるということ』を読み終えた。単行本で読んだときも思ったけれど、モモコさんは自分の気持ちや言葉に対して誠実だ。


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