パンをつくる
パンをつくるようになったきっかけは、友人におしえてもらったイングリッシュマフィンだ。初めは白神こだま酵母を買ってつくっていた。2018年頃。
しばらくして、酒粕でスターターをつくるようになって、カンパーニュを焼くようになった。2021年頃。
それからすぐにキンモクセイや、干し葡萄、ビールの澱を酵母の元として使うようになった。いまのところ、全粒粉から酵母を起こしてつくっている。2024年現在。
この酵母を起こすところから書くと長すぎるかなと思ったけれど、それができるようになると、パンがとてもシンプルな材料でできていることがわかるので紹介する。パンづくりに必要な材料は小麦粉と水と塩。小麦粉は全粒粉と強力粉の二種類をつかう。
スターター
スターターは生地を膨らませる元となるもので、酵母の量や発酵のバランスがととのうまで1週間ほどかかる。一度つくれば新たに作る必要はない。
準備として、全粒粉と500ccくらいの容器(※上の画像中央の青い蓋のもの、など)を用意。容器は中が見えるもの。密閉できなくても良いけど、蓋はあった方がよい。
はじめに全粒粉を30グラム、水を30ccいれて混ぜる。常温におく。だいたい室温20℃くらいだと1日から2日で、少し泡ができて体積が増える。
体積が増えたら、また30グラムの全粒粉と水をいれて混ぜる。そして常温におく。
翌日上の半分を捨てて、全粒粉と水をはじめと同量加えて常温におく工程を繰り返す。上半分を捨てるのがもったいない場合は、クレープとかクッキーとかにつかう。
全粒粉と水は常に1対1で、どのくらい加えるかは40グラムでも50グラムでも問題ないとおもう。捨てるのがもったいないから30グラムくらいずつでやっている。
これを掛け継ぎ、とか feeding と呼ぶ。繰り返すことで、酵母や乳酸菌のバランスが一定に落ち着いてくる。
途中、容量が増える速度が早まることがあるが、5〜6日目になるとすこし落ち着く。時期は春や秋がいい。夏の暑い時期にはじめると、日ごとに加速していって、30分や1時間で倍量くらいになってしまう。そのまま発酵が進みすぎるとアルコール分が増えて酵母の元気がなくなることがある。
発酵が進みすぎる時は冷蔵庫にいれる。冷蔵庫の中でもゆるやかに発酵は進む。量が増えたら冷蔵庫にいれるようにすれば良いとおもう。毎日掛け継ぎできない時も、冷蔵しておけば1週間くらいは大丈夫。
7〜8回掛け継ぎしたあたりで、スターターの出来上がり。できたものはパンを焼くときに使って減るので、前日に全粒粉と水を60グラムと60cc加えて多めにしておく。発酵して量が増えたら、これまでは捨てていた上からの部分を100グラムほど、本生地につかう。のこりはまた掛け継ぎする。
本生地
本生地は、パンを焼くたびにその都度混ぜてつくる生地。発酵がととのって焼き上げるまでに1日。
まずは前日に増やしておいたスターターを100グラム、ボウルにとる。
つぎに水を加える。水の量は小麦粉に対して80パーセントくらいを目安にしている。
スターターが水と小麦粉1対1なので、100グラム使えばその内訳は、全粒粉50グラムと水50cc。このあと本生地を練るために強力粉を250グラム加えるので、小麦粉は全粒粉と強力粉あわせて300グラムになる。その量に対して必要な水はぜんぶで240cc。スターターの水50ccを差し引くと、ここで加える水が190ccとなる。大体で大丈夫。
かたまりがなくなるように水と混ぜ、つぎに強力粉をいれる。いろいろ使ってみたけど、最近はキタノカオリという品種のハードブレッド専用粉をつかっている。全粒粉もキタノカオリ。
強力粉を加えてまぜはじめると、すぐに力が要るようになる。巷では捏ねないパン、というのもあるけど、(合計で)5分〜10分くらいは混ぜた方がよいと感じている。休みながら、コーヒー飲んだり日記をつけたり掃除をしたりしながらやっている。
次に塩をいれる。秤に乗せながら慎重に4グラム。いまのところこの分量に落ち着いている。
塩を入れたら、濡らした手で生地をボウルの底から剥がすようにひと回しする。そして生地を掴んだら指をすべらせて片側を長く持ち上げ、半分にたたむように生地を折り重ねる。また手を濡らして、直交する角度で半分に折りたたむ。
ラップや蓋になるようなものをボウルにかぶせ、生地を10分以上やすませる。
伸ばし、たたんで休ませるという工程を4〜5回くり返す。
生地が休んでいるあいだにも水分が浸透し、グルテンが形成されていくらしい。捏ねなくてもある程度はこの作用(オートリーズという)で生地は滑らかになっていく。
4〜5回折りたたんだら、ラップをして冷蔵庫へ。一晩寝かせる。
なんとなくあまり機械に頼った温度じゃない方がいいかなと思っていて、野菜庫へ入れている。ちなみに冷蔵庫にいれなくても発酵をすすめさせてパンをつくることはできるけど、低温長時間発酵は香りがよくなるそう。
整形
翌朝、ボウルを冷蔵庫から取り出して、常温においておく。
3時間ほどおくと、さらに一回り大きくなる。
大きめの板かこね台に打ち粉(生地とおなじ強力粉)をしておく。台にしている板は富澤商店で買ったけど、ホームセンターでおなじ板を買って作れば、同じ金額で倍の広さか、2枚取れることがわかった。いまなら自作する。
何もいれなくてもいいのだけど、たまたまかぼちゃのタネがあったので入れてみる。
ここで伸ばしてまたたたむことで、生地がまたよく伸びるようになる。
丸め方はYouTubeにたくさん載っている。丸めた生地をペンペンと手でたたくのはどういう理由かわからないけどみんなやるのでなんだか面白い。元気によく伸びる生地は丸めていて気持ちが良い。
発酵がいき過ぎるとベトついたりするけど、その加減の説明はむずかしい。パンづくりで他にも知りたいことがあって、プロを含めた知り合いに訊ねてきたけど、アドバイスをあまりものにできない。ズバッと教えてほしい、と思うのだけど、どうやらそういうことではなく。たぶん、水分量、小麦粉の質や分量、室温、捏ね方などたくさんの要素がありすぎて、教えられないのだと思う。なんでもそうだけど、その人のやり方はその人が編み出すしかない。
ボウルも発酵かごも、できれば湿度を保ったまま蓋をしたい。わが家でつかっているのはエコラップ。みつろうラップともいう。友人につくってもらったり、自分で作ったりしたのが何枚かあって、いわゆるサランラップはつかっていない。かごなどは密閉加減があまいので、輪ゴムも併用する。
焼成
さて、焼く段階。使うのはオーブンではなく、ガスレンジと無水鍋(24cm)。電気のオーブンもあるけど、はじめからこれで焼いてきたし、焼き上がりが良いので、おすすめ。
強火で18分、火を消して18分。あくまで目安として、各家庭の火力に合わせて調整してほしい。
タイマーを18分にセット。
アツアツの無水鍋は取手も当然あついので、作業が立て込んでいるときや慣れないうちは緊張するとおもう。くれぐれも手で触れないように、軍手や鍋つかみなどをそばに用意しておきたい。
18分、ゴーっと普段使わないような火力を使うので、すこしコワいとおもうひともいるかもしれない。でもそうやって何年も焼いてるけど、鍋もガスレンジも意外と大丈夫。唯一の問題は安全装置がきいてしまうことがあるので、それを外すのがすこし手間かもしれない。分解してセンサーを外すだけなんだけど、それだけでひとつ記事が書けそう。
できあがったら室温に置いておいて、完全に冷めてから切るようにすると綺麗に切ることができる。焼きたてを食べてももちろん美味しいのだけど、切りにくい。そして、カンパーニュは翌日、二日目の方が美味しいような気がする。なぜだろう。好みの厚さにきってフライパンや魚を焼くグリルなどの強火でさっとあたためて。
保存は涼しい季節なら常温でジップロックなどにいれておく。暖かい時期や、長く保存したい場合は冷蔵庫や冷凍庫へ。
発酵も保存もそうだけど、基本は常温。とくに難しいことはしない。材料もシンプルだ。パンはそのむかし古代エジプトでつくられていたという記事を読んだことがある。きっとそうやってずっと作られてきたんだから、簡単でだれにでもできておいしい。