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Ryoji Ikeda「ultratronics」

Ryoji Ikedaという名を聞いて、すぐにピンとくる人はそう多くはないだろう。

同時に私は、難解・意味不明に思われがちなエレクトロニカ/音響系ミュージシャンの中で、これほどまでに分かりやすく鮮烈で、しかも聴きごたえのある作品を生み出している人は私の中ではRyoji Ikedaしか知らない。

先日横浜公演は終わってしまっているが、初のジャパンツアーが絶賛開催中でRyoji Ikedaに直に触れる最大のチャンスだと思うので、記事を書いてみようと思う。

Ryoji Ikedaとは何者か?

Ryoji Ikeda(池田亮司)は岐阜県出身のミュージシャン/現代芸術家である。

どちらかというとアート的側面が強いと筆者は見ている。

なので、エレクトロニカ/音響系の中でも敷居が高いと思われている節があるが、実際のところまだ聴きやすい方である。

私が彼を知ったのは約10年前、ちょうど「supercodex」というアルバムが発表された頃だ。

その頃私はヘヴィ・ドローン/パワー・アンビエント系(EARTHやSUNN O))))をよく聴いていたが今ほど音響系に精通しておらず、「こういうミュージシャンもいるんだな」という程度の認識でしかなかった。

この認識は、今私が言った敷居が高い、と同じ認識であるだろう。

新しいアルバム「ultratronics」が発表されてようやくジャパンツアーが決まった今、やっとそういう認識が外れてきたのではないか?と考察している。

ultratronics

Ryoji Ikeda - ultratronics (2022)

Ryoji Ikedaの10年ぶり10作目のアルバムである「ultratronics」は彼の音楽活動の集大成的作品であることは間違いない。

2013年~2022年までの音源を中心に構成されているが、1989年~1999年の音源も含まれる。

要するにこの射程の広さが本作品最大の特徴であり、彼がどういったミュージシャンなのかを分かりやすく描写している。

最初から最後まで通しで聴いてみればわかるが、途切れることなく流れていくように曲が進んでいく。

インターネットがこの世界に誕生してから、スマートフォンの登場やSNS、VtuberそしてチャットGPT。

現実と電子の世界の境界線がどんどん曖昧になる今、克明にその世界を描写する。

アート的側面を強調しつつもヒップホップやクラブミュージック的なノリも垣間見られ、驚くほどに聴きやすく感じられるだろう。

本作品の白眉は(5)だと私は思う。
(2)(7)(11)も素晴らしい出来だ。

指定席でゆっくり観ることもできるが、席数に限りがあるのでお早めに。

是非、電子世界との未知なる邂逅を体感していただきたい。

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