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クリエイティブなコミュニティを宿すための試行 ー粟島大絵地図を事例にー
先日大学で行ったレクチャーの原稿を書き起こしました。
粟島で行った「粟島大絵地図」の制作現場を事例に、創造的な場や集団についてお話ししました。
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よろしくお願いします。アーティストの佐藤悠と申します。
今日は阿部慶賀先生が最近出された「コミュニティ・オブ・クリエイティビティ」をヒントに、自分の活動を振り返りながら、自分にとっての創造的な集団や場と言うものが、どういうものかを、皆さんにお伝えして行きたいと思います。
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最初に自分のこれまでの活動を紹介しながら、後半はクリエイティブな場や集団を僕自身がどういう風に意識して取り組んでいるのかをお伝えします。
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自分の作品や表現は、このように変遷しています。
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ものを作るところから始まり、場や関係性への興味が増して行き、震災後はコミュニケーションそのものが表現になっていきます。近年では、アートを伝えるレクチャーや、アートを受容する鑑賞の分野についても活動を行っています。
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学部生や院生の時は、写真のようなバルーン型のアート作品を作っていました。電気の力、空気圧で動いたり、中に人が入っていたりもします。そういう作品を作っていました。
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そこから2010年代は、ある場所に入って一定期間過ごしながら、そこにいる方達と一緒に何かを作っていく活動を始めます。写真に写っているのは、新潟の十日町莇平(あざみひら)集落という小さな集落があるんですけれども、そこで竹の大きな球体を作って、中に自分が入って毎年夏のお盆の時期に集落の坂を転がり降りるという、お祭りのような活動を10年以上続けています。「ゴロゴロ莇平」という活動です。
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これは2011年に行なった横浜の若葉台という団地の中で、100mの龍形のお神輿を作って練り歩くという、親子中心に行った「WAKABADAI SKY DRADON」という活動です。
これらの活動は中長期に及ぶんですが、もう少し瞬間的な活動として、今その場で出会った人たちとコミュニケーションしながら表現を汲み上げる作品もあります。
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「いちまいばなし」という活動ですが、一枚の紙に絵を描きながらその場の全員で即興の物語を作るという活動です。お話の続きを、「何がどうした?」「どうなった?」とその場にいる人に順番に聞いて言き、答えてもらうとそれにしてお話を作っていくというものです。これも10年以上やっていて、400話くらい、2~3000人の人とお話を作ってきました。
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そこから2016年以降は、美術のレクチャーも行っています。美術史を自分なりに解説して知ってもらうという「知ったかアート大学」という架空の大学を作って色んな所に講演をしに行っていました。特にアートプロジェクトや芸術祭とかが行われた後の地域に入って、アートと出会った後の人たちに対して、自分たちが楽しんだアートの世界をもう少し広げて知ってもらう整腸薬的な活動になります
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さらに最近は、美術鑑賞のプログラムも行っています。これまではずっといろんなものを発信していく活動を多く行ってきましたが、それがどう受容されているのか、いろんな人が表現をどうやって受け取っているのかに興味が出てきて、独自のプログラムを美術館であったり企業や大学などいろんなところで実施しています。
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大学に入学した2005年当時はものづくりをやっていたんですけども、だんだんでそこから場や関係を作る。ある地域に入るという活動が増えてきます。特に大きかったのは、震災が11年にありまして、僕自身は大きな被災はしなかったんですが、被災地を見に行った時に、今まで当たり前だったエネルギーであったり作品素材が、一瞬にしてある日を使えなくなってしまう、当たり前だった世界がある日からそうではなくなるって言う事が起こるんだなっていうことを初めて実感して、そういうことにも対応できるチャンネルを同時に持って行きたいと感じるようになり、特にそこからはコミュニケーションをベースにした活動が増えていきます。人がいればそこで成立するもの。いろんなことを考えたり、伝えたり、鑑賞したり・・そんな活動に徐々にスライドしていきました。
さらに、最近はまたものを作るところへ戻ってきている感じがします。コロナを経て、実際に手を動かして何かを行いたい。今はそれを一人ではなく色んな人とって形ですけれども、複数で何かを作り上げていくことにまた興味を持ち始めて、後半に紹介する絵を描く作品に繋がっています。
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自分の表現の特徴としては、まず、一見何もないようなところから誰かと表現を紡ぐということがあります。創造性やひらめきは遍在するっていう観点が阿部先生の著書にも書かれていますが、表現や創造性は天才だけが持っているわけではなく、すごく特殊な環境の中にだけあるわけでなく、どこにでも表現は存在するし、クリエイティビティは皆さんにもあるし、僕にもきっとあるって思っています。
僕はそんなに自分のクリエイティビティを過信していないので、むしろ色んな人の中にそういうものを見つけて、そっと引き出しつつ、自分の創造性にも自信を持っていくようなイメージで活動しています。あなたにもあるなら、きっと自分にあるよねって言う。だから、自分の創造性に自分で気づいたり、それを大事に思えるよう、自分の表現には他者が必要なんだと思います。
それから、状況に適した表現をマッチングさせていくっていうことが基本です。自分はこういうことやるのでそういう場所を選ぶというより、オファーとか場があって、それを見てじゃあこういうことができますよっていう風に提案していきます。なのでどんどん表現の形態が増えていきます。過去に行ったものをそのまま使う時もあるし、少し現地用に改修する時もあるし、全く新しいことをやった方がいいって時もあります。
そうやって表現する、アウトプットすると、僕にとってはある人にそれが伝わってないな、共有できてないなっていう部分がより明確になります。何か表現をすると、「いいね、面白いね」って感じてくれる人もいれば、それ以上に全然うまく伝わってないなとか、むしろ拒絶されてるかもみたいな人たちがよりはっきり見えてくるので、次はその人をイメージして、どうやったらアプローチできるのかなとまた新しい表現を作ることの繰り返しで、それがモチベーションやサイクルになって自分の表現が進んでいます。
そんな所が自分の活動の紹介になります。さらに詳しく知りたい人は、ウェブサイトで調べていただくと見れますので、よかったら授業後とかに見ていただければなと思います。
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ここからの流れなんですけれど、「クリエイティブなコミュニティを宿すための試行」をテーマに、今年は4ヶ月間粟島と言う四国の島に行って、大きな絵をいろんな方々と一緒に作ったんですが、その事例をもとに皆さんと一緒に「クリエイティブなコミュニティ」を考えていきたいと思います。
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まずこんなことをしましたという紹介をしますので、その後で皆さんにも主体的に考えてもらうために、僕の方から問いかけをして、ミニワークをしてもらいつつ、後半は粟島の現場でクリエイティブな場が起こるように、こういう風なアプローチをしましたというレクチャーを30分ほどお話ししたいと思います。最後15分ぐらい質疑応答を取ります。
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四国に粟島という島があるんですけれども、そこで島民や島を訪れる人たちと一緒に大きな島の絵地図を描きました。粟島は香川県にある小さな島で、現在は100人から150人ぐらいの方が住んでいます。今子供は全くいなくて、若い人もかなり少なく、ほぼほぼ後期高齢者の方が住まれています。
この島では、2010年から粟島芸術家村というプロジェクトを行ってまして、毎年2〜3人のアーティストが4ヶ月間滞在して、島で作品を作って発表するということをずっと続けています。今年は僕ともう一人、書家の森ナナさんが招聘アーティストに選ばれて、滞在しました。
作った作品の大きさとしては、高さが130 cm 横が90 cm のパネルを12枚並べていて、横幅は10 m ぐらいあります。それを一つの教室に並べて「コ」の字型に展示しています。画材はアクリル絵の具です。4ヶ月の滞在期間の中で、実質制作は2ヶ月ほどで行いました。島の人や、観光客や、製作のボランティアさんなど、みなさんで一緒に作っていきました。
制作風景の映像があるので見てみたいと思います。
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ここは下書きですね。島全体をかなり横に伸ばして変形させているので、全体の形を決めて、大体のあたりをとっていきます。
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空き家も多いんですけれども、できるだけ島にある家の数、300件ぐらいあったと思うんですけども一つ一つ実際に現地で確認しながら描いていきました。
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これはボランティアさんですけれども、大体の下書きが終わったら写真とかを参考にしたり、自分のイメージでどんどん描いて行ってもらいました。
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8月の後半からは島のお母さんたちがたくさん毎日来てくださって、午後の3時間くらい誰かは必ず来てくださってこうやって皆さんで描いてくれました。島で生まれたかた、外から嫁がれた方もいらっしゃるんですけども、それぞれ長年島にいるので、そういう記憶を頼りに描いてもらいました。ここにはこんな花が咲くとか、以前はこうだった・・みたいな。
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この方は九十歳の島のおじいさんで、普段からよく絵を描かれて自分の家の周りに飾られているので、描くのはすごい好きな人ですね。ご自宅とその周りを描いています。島の方にはまず基本的には自分の家を描いてもらいました。下書きを僕がして、色を塗ってもらうこともありますが、基本的には自分で自分の家を一から描いてもらうようにしました。
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もちろん全員が描きに来てくれるわけではなく、最終的には島の4分の1くらいの方と、100人以上の観光客の方が筆を入れてくれたと思うのですが・・こうやって他の人の家の位置は島の皆さんで話し合って確かめてもらって決めました。家がものすごく大きかったり、道がすごく入り組んでいたりとかしていて僕が見てもどこからどこまでが1軒なのかわからなかったり、全体をうまく写真に撮れなかったり、すごく苦労したところです。
そういうところは島の皆さんに協力してもらって描きました。そもそもの地図自体がすごく歪んでいるので、整合性を合わせるのが大変でした。島民の方の中には、何度も何度も現地に足を運んで写真を撮ったり、スケッチして家なみを描いてくれる方がいました。
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ここは観光客とかの方ですね。ワークショップも何回かやりましたけれども、粟島は風光明媚な観光地で、外から訪れる方も非常に多く、その方に声をかけてどんどん描いてもらいました。最初は海の部分から観光客の方に描いてもらいつつ、その後から島の部分や家の部分を島の方に描いて行ってもらうという形で進めました。
まず自分の家やその近くとか、そういうところから描いて行ってもらいつつ、慣れてくると「ここ描いて」「あそこ描い」てって写真を渡して、一からいろんなものを描いてもらえるようにしていきました。
海の部分は、自分が見た海を描いてくださいと伝えて、別に間違いとかないので自分が見た粟島の海を描いてくださいっていうことで、皆さんに任せて描いてもらいました。人によってそれぞれ塗り方が違って、色の使い方も本当に人それぞれでしたね。
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絵の具とか結構出し過ぎちゃうので分け合いながら、絵の具の容器もヨーグルトのカップとかをお家から持ってきてくださって、もったいないって言って水入れとかパレットがわりにしてました。本当はやっちゃいけないんdけど、ものを画面の上で起きまくりながら描いてましたね。
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これは船の運転手さんですね。島に行くためにみんなが必ず使う粟島汽船という船があるんですけども、そこの乗組員さんにも頼んだら船を描いてくださって。
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この方も非常に熱心に何回も来てですね、細かいところまでよく普段自分が乗っている汽船をよく見て描いてくださいました。
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ゲートボールをする、グランドゴルフって言って、僕も何回も参加しましたけれども、そこのグラウンドを描いてくれてますね。 iPad とかグーグルマップで見たりとか、現地に行って写真を撮ったりそれを印刷したりとか、デジタル機器やネットも駆使しながら描いていました。もちろん想像だけで描く人もいらっしゃいますけどね。
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これはいろんな海の塗り方をしたいということで、二人一組になって一人がどんどんランダムにいろんな色を置いていって、もう一人がぐちゃぐちゃにそれを塗っていくとちょっと不思議な模様になるみたいな方法を開発して行ってました。
かなり細いところもこう細い筆を使って塗って行くみたいな感じですね。いろんな塗り方があるので、人のを真似したりとかですね。一か月以上絵を描き続けていたので、やっぱり他の人に触発されて色々と変化が起こったりもしました。すごく濃く描く人だったのが、薄塗りの人の絵がいいなってなって徐々に薄い塗り方に変化して行ったりとかがありました。
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建て込みですね。島に来てもらってる大工さんに設置していただきました。
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これは内覧会ですね。ちょうどお彼岸かなんかで久しぶりに島にkきた人もいて、あんたの家私が描いたんよ〜と話が盛り上がっていました。
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あと、最後に少し残しておいた部分をまだ参加してない人に塗ってもらったりしました。
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そんな中で、僕は創造性が豊かに育まれる場を目指して色々なことをやっていったんですが、そういうことを阿部さんの書籍とも絡めて、具体的にどういうことをしていったらいいんだろうかって事を、ここから皆さんにも少し考えていただきたいと思います。
そこでまず「クリエイティブなコミュニティ」を今日の授業において定義をしたいんですけれども。
自分や他人がそのコミュニティの中で変化していくこと。自分が変わっていくし他人も変わっていく。そしてそれによって場も変化していく。それを肯定的に受け入れて、ポジティブに作用すると期待している集団のことを「クリエイティブなコミュニティ」と言いたいと思います。
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決められたことをずっと同じようにやっていたりとか、それぞれが自分の立場がずっと変わらないことを望んでいる集団はあまり「クリエイティブなコミュニティ」とは言わないという事ですね。
どんどんいろんなものが変化していることを受け入れて、それが何かポジティブなことに繋がっていくんじゃないかと期待する。そういうコミュニティを目指したいと思います。
なので、「変数を呼び寄せうまく付き合う」と言ってますが、いろんなものを変化させる変数的な要素を排除するのではなく、肯定的に受け入れてうまく付き合っていく。そのことで今までよりも良くなると考える、そういう場所をクリエイティブなコミュニティと定義したいと思います。
じゃあその上で皆さんに考えてもらいたいことは、同じような環境を想定して考えてもらいたいんですが、今いるこの教室の全員で1ヶ月ぐらいかけて大きな絵を描くという課題があったと仮定します。文化祭とかのイメージですかね。
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その一か月間の中で、この教室が非常にクリエイティブなコミュニティでありたいとあなたは思っています。その場合に、これが障害になるんじゃないかと思われる事象をまず想像してください。こういうことがクリエイティブな現場的に邪魔になってくる、懸念される点があるんじゃないかみたいなことをまず想像してください。その上で、それを回避したりと解決したりするそういうアイデアを想像してもらいたいと思います。
全員がクリエイティブでポジティブな関係にできるだけいられることを条件にします。描くのが好きな人達だけ盛り上がってて、後の人はもう帰っていいよみたいなのは、あまりクリエイティブなコミュニティと言わないので、出来るだけ全員がクリエイティブでありながらポジティブであるという関係を想定するのであれば、どういうことを考えられるのかなって考えていただきたいと思います。
まずは一人で2分間考えてもらって、その後で周囲の2〜3人で集まって意見交換をしてもらいます。8分ぐらいかな。それぞれの考えを共有したり、話す中で思いついたりすることもあるかもしれませんが、後でランダムにどなたかを指名しますので、ワークの過程で自分の考えたこととか、人と対話してこういうことになったってことを発表してもらいます。
*ワーク実施
では、どういう事を思いついたのかを発表してもらいたいと思います。
*発表部分割愛
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という形で、皆さんにも少し考えてもらいましたが、僕も粟島に向かう前やプランを立てる中でそういったことを考えて、できるだけ豊かな場を作りたいと思っていろんなことをやってきました。それをこれから紹介していきたいと思います。
クリエイティブなコミュニティを作るために行ったこともありますし、単純に普段自分が集団で何かをやる時に、気をつけていることも含めて話していきたいと思います。 段階的には、まずプランを立てる段階の時のこと、それから現場でのこと、また最後に具体的な環境作りについて。3段階でお話します。
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まず最初にやるのが、「軸を作る」ってことですね。不確定性、変数に向き合う準備をする。現場ってほんといろんな事が起こるんですよね。それを出来るだけ排除はしたくはないので、自分が柔軟である必要が出てきます。ただ、柔軟になるためには軸が必要で、どこまでも柔軟だと最後まで流されて、何がやりたかったのかよくわからなくなる事もあります。譲れないところを最初に決めておくのがすごく大事だと思います。
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自分が心からこのプログラムにおいてやりたいことは何なのかっていうこと。すごくシンプルにそれを持っているって事はすごく重要で、今回粟島では僕は「みんなで絵を描きたい」ってのがまずありました。自分がそういう作品を作ったことがない、絵を作品にしたことがないので、いろんな人と一緒に絵を描くってことが可能なのかっていう関心が一番中心にあったので、これをできるだけブラさずに行きたいというのをまず決めました。
これは、「自分が心からやりたい」っていうのすごく大事で、みんながやったほうがいいとか、この集団はこういうの作った方がいいっていう考え方だと、結局どこかでブレてしまうので、根本的に自分の欲望としてのやりたいことを設定すべきです。
いつも自分発信でプロジェクトが始まるわけではないと思いますが、人から与えられたオファーの中でも、自分の欲望をどこで設定できるのかっていうことを毎回考えた方が、より良いものになると思います。で、どうしても自分の欲望が設定できなければ、ぼくはそのオファーを受けないようにしています。
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軸ができると、いろんなことにポジティブに対応できる余裕もできます。変数って言いましたけど、自分が変わってしまうようなことが現場ではたくさん起きてくるわけです。
粟島でのことで言うと、いろんなお誘いとかですね。ゲートボールに来ない?とか、バーベキューしない?釣り行かない?うどん食べに香川回ろうよとか、夕日綺麗だから見においでとか、制作とは直接関係ない、いろんなお誘いが日々あるわけです。それをぼくは自分やプロジェクトが変化する変数に出会うことだと思って、できるだけ行くようにしました。
一見無駄かなって思えることを、積極的にやっていくことでそれが変数的にいろんなことに繋がっていくみたいなことは本当によく起こります。書籍の中であった縁起的な考え方とも思いますが、関係の結び目が増えると、それが変化につながっていくんですね。で、それをするにはできるだけ余裕があったほうがいい。制作でカツカツではそんなこともできなくなってしまうので、いつもそういった余裕を想定しておくことも大事だと思います。
もちろん、変数だと思ってお付き合いしてるのではなく、楽しいから皆さんとお付き合いするんですが、その延長にはそういった制作に関わる部分があるとイメージしているという感じです。日常生活と制作が同じ地平でつながっていて、分断を前提に考えるものではないってことですね。
そんな中で、自分が立てた軸すらもしかしたら変化するかもしれません。そこをどう采配するのかってのは、それぞれの判断だと思いますが、そういう可能性すら持っていた方がいいってことですね。最初に設定した軸を一旦手放す時期もあるかもしれないということです。
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さて、おおよそのプランができたら、アウトプットをしておきます。頭の中にいつまで取っておくよりも、言葉とか文字とかイメージにして外部化して自分で客観視することはすごく必要です。自分の基準としては、 A 4用紙に1枚にまとめて人に見せられるものにできるかっていうのがあります。文字の大きさは10〜12ポイントくらい。それにうまくまとめられない場合は、要素が多すぎるとかまとまってないっていうことでなので、またよく揉みます。
それができたら周囲にはこういうことがしたいんだっていうのを早めに伝えておきます。反応が知れると言うか、自分がやろうとしてる事に対するプラン段階の反応はこんな感じなんだなって早めに押さえておくと良いと思います。それがもし微妙であっても、だったらそういう反応に対してどうアプローチすると良いのかを早めに考えられるのは利点です。
あとアウトプットしておくと、リソースと出会いやすくなります。大きな絵が描きたいんだっていうことを認知してもらうことで、じゃあなんかこの人絵描いてるよとか、あの人はこれに詳しいよとか、こんな材料あるよみたいなことと出会いやすくなります。
いつまでもアイデアを頭の中に置いててもそれは人に伝わらないので、イメージができたらアウトプットして、早めに揉んでおいたほうが良いと思います。頭に置いておくと、なんかいけそうかも感が最後まで拭いにくくなるので、早めに現実の風にあたらせて、ダメな部分は潰しておいたり、対応を想定したほうが良いです。
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リサーチを行うのも非常に大事です。時間があればコミュニティの背景であったり、今の現状がどういうことなのかっていう現在地の確認がすごく大事になると思います。それで色々イメージできることや、アプローチできることも増えていきます。僕は今回絵を描くと同時に、インタビューをたくさんの人に行いました。
粟島芸術家村っていうこの10年前から始まった活動、芸術家を選んで島に呼んで4ヶ月滞在させて作品発表させるって言うのを10年以上続けていたって、すごい面白い出来事だなと思ったんですが、それを知るためのアーカイブとかがあちこちに散逸していて、歴史がよくわからなかったんですね。
なので、自分なりに立ち上げの頃に関わった人たちとか、アーティスト、島の人、行政の人12人にインタビューをして、どうやってこの活動が始まって変遷して、自分たちがその延長のどこらへんにいるのか、芸術家村に関わった人たちが何を大切にしていたのかっていうことをリサーチして、文庫型の書籍にしました。
そうすることで、制作の確度が増していくし、それによって柔軟な部分もさらに大きくなったと思います。こういうことを大切にみんなしている、だからこんなアプローチをしてみようみたいな。このリサーチはかなり大事でした。
そのリサーチの中で、今回はモチーフにも出会いました。絵を描きたいって思っていましたけれど、一体何を描けば良いかっていうところで悩んでいたんですが、リサーチを行う中で実は2008年に島の方で巻物状の絵地図を描いていたということが判明しまして。
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これは島のホテルとかで今も売ってるんですけれども、この地図の視点がすごく面白いし、描いた方ももう亡くなった方だったんですが、西山恵司さんという芸術家村の立ち上げにも関わった島の重要なキーマンだったんですね。島のみんなが知ってる方で、この人の地図をベースにもう1回描いてみようっていうことであれば、島の皆さんも乗ってきてもらいやすい、描きやすいと思いました。
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やっぱり参加してくれる人が義務とかではなく、できれば自分ごとにして、能動的に描いていくっていう、そういう雰囲気、状況にしていったほうがより良い。やらされてる感とか、頼まれたからやるって言う・・中にはそういう方もいるとは思うんですけど、そんな人ばっかりだとやっぱり現場が楽しくないと思うんですね。
関わりしろ、関わりやすさのところで、自分が今いる場所の地図を描くのは良いかなと思いました。まずは自分の家、自分の関わりがあるところだと描いてもらいやすい。島の外から来た人も、地図の前に立った時点で、その絵地図の中のどこかに関わりが発生してしまうので、無関係ではなくなります。
描くことは、見ることであり、知ることであり、思い出すことに繋がるので、描きながら、ここが昔こうだったねみたいな話も自然にしながら、普段見ている場所もよく見たらこんなだったとか、この風景を伝えるにはどうしようとか、色々考えるわけですね。
島に初めて来た人は、これからまた何回も島に来ることで最初はなんかどの場所がよく分かんなかったけれども、だんだん来るうちに地図が分かってくるとか、完成したのをまた誰かと見に来るとか、再来するきっかけにもなると思いました。
完成してからも、島の人が島のこと説明したりとか、昔のことを話したりみたいな、地図っていうモチーフであればそういうことが自然に起こっていくのではないかなっていうところも考えて、絵地図を描くプランにしました。
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今までは頭で考えたこともたくさんあったんですが、同時にやっぱり手を動かす、体を動かすっていうのも大事です。実は絵にするプランの前に島のジオラマを作るプランも考えていて、その模型をたくさん作っていました。
これは身体的に考えるって言う、思考のアプローチを変える意味もありますけど、個人的に意図的に失敗をしておくのは結構大事だなと思っていて、プランの段階でいろんな可能性がある時、なんとなくまだプランが決まらない時に、とりあえずそれを一回手で作ってみて、やっぱこれ駄目だなみたいな、可能性を潰しておくというのがあります。
1回作ってみてみると、あんまり面白くなさそうだなみたいなのがあるんですよね。それをちゃんと作って失敗をしておいた方が良いというか、後々までできるかもという可能性が残ってると、またぶれてくるんですよね。これもいけるんじゃないかなみたいなことが頭の中だけで成立しちゃってると、最後までそれを排除しにくいんですけど、一回手を動かして何か物を作ったりして、うまくいかないんじゃないかなっていう確信を持つために、体を動かし、物で作っておくみたいなのはあると思います。
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ここから現場の話ですね。 一番今回の現場で大事だなって思うのは「価値観の相対化」っていうところです。特に今回は絵を描くっていうことだったので「上手い下手」っていう意識がすごくクリエイティビティの障壁になるなと感じていました。「私は絵が下手だから描きたくない」って人がほとんどですね。それをどうやって相対化していくか、解していくかというところがまずはものすごく大事でした。
まず、伝えたのは、この絵は「上手い絵」とか、「完成された作品」を目指していませんと。そうじゃなくて「良い絵」をみんなで描きたいんですって伝えました。「良い」っていうのは何かっていうと、それぞれが感じたことがそのまま表されて集まっているって事が「良い絵」なんですって伝えてました。
あと、正しいとか、間違いはありませんと。皆さんの見た風景とか皆さんの感じた事ってのは間違いとかではないですよね。だって実際にそう感じたんですから。それは間違いではない。それを描いていただければいいんですと伝えて、間違い、正しさみたいな意識的を潰していきました。
そうやって、とにかく誰か来たら全員が筆を取って描く環境にしていきました。来た全員が関わって、その関わること自体が歓迎されて、上手い下手というのが問題ではないという状況を作りました。
いろんな人が関わると、描き方って人それぞれ全然違います。どの色を選ぶか、どの筆を選ぶか、どのくらい水や絵の具を筆につけるか、体をどう使うか、体格や手や指の大きさがどう異なるか、さまざまな要因でただ描くだけで、かなり表現は異なります。それを全て肯定して取り込んで画面の中に集めていけば、上手い下手とかっていう一つの尺度で画面を測れなくなっちゃうんですね。
上手い下手っていうのはある限られたベクトルの価値観・・一般的には大体写実的かどうかという尺度になると思いますが・・それが一つしかないと、上手い下手の意識がより明確になってしまうので、できるだけいろんな人が限りなく関わることで、その尺度を無数にしていって機能しなくさせてしまうことを意識しました。
あと、ぼくがどうしても現場で権威を持ってしまう傾向にありましたが、それもなるべく回避しようとしてました。付き合っていると、現場で自然に「先生」とか呼ばれてしまうんですが、呼んできた人を「大先生」と呼び返すことにしていました。
他に意識的に行ったことは、島の外の人にまず海から描いてもらいました。島の人に島から描いてもらうと、思い入れが強いのもあって、価値観が偏ってしまって、やっぱりそこで上手い下手みたいなベクトルが生まれてやすくなるのかなっていう危惧があったので、海の部分が結構地図の中にはたくさんあるんですけど、観光客とかボランティアさんとか、島に住んでない人にまず積極的に描いてもらいました。
そうすると、いい意味で執着がそんなに無いし、初めてきた人は島を全然よく知らなかったりするので、かなりハチャメチャな画面に自然になることが多いです。それがあった上で島の人に島を描いてもらうと、「こんな風に描いていいんだ」「こんな風な表現も全然アリなんだ」っていうので、ちょっと意識的な描くことの制約をそこでゆるくしてもらうという意図がありました。
これは鑑賞とも繋がってくるんですけど、みんな自分の描いたものに最初から自信がある人なんでほとんどいないです。ほとんどの人が「だめだわ〜」って言いながら描いてるんですけども、やっぱり他の人の表現ってすごい面白くて、人が一生懸命描いたものって、他の人にとってはかなり面白い、魅力的なんですよね。
で、これは鑑賞する中で自分の意見を大した事ないと思って言ったものが、案外面白がられる事とよく似てて、自分では自分のひらめきとか創造性の価値ってなかなか気づきにくいんですけど、それが周りの人にとっては、これすごいじゃん!おもしろいじゃん!ってなっていって、それでまた触発されて描いた人も何か変わっていくし、見た人もまた変わっていく、良い循環が起こっていくなって思いました。
なので、それぞれの「解釈」を表現の中に介在させるってのは、クリエイティブな現場で大事かなと思いました。解釈っていうのは、難しいことではなくて単純に「私はこう感じたから、こう表す」みたいな元来はあまり意識せずそれぞれの中で自然に起こっている事だと思います。
「みんなこういう描き方にしましょう」ってなってしまうと、そこに解釈の余地ってないんですが、ある程度そこの自由度がありつつ、この人はこういう風に見てるんだなぁとか、こういう表し方なんだなーっていうのが自然に出せる現場だと、それがまた変数になってどんどん触発の連鎖が起こってくるのかなと思いました。
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今回の粟島ではなかったですけど「しないことのデザイン」も集団制作においてはすごく大事ですね。参加の仕方って人それぞれなので、一生懸命制作してるっていう表現が似合う人もいれば、全然何もしてない、ぶらぶらしてるだけみたいな人もいるいたりします。それは果たして参加してるのか?っていう点です。
参加してないのではなく、そういう仕方で参加していると捉えて行かないと、場が豊かになっていかないと言うか、別にそこにいるだけでもいいし、みんなと喋ってるだけでもいいし、もちろん邪魔になるとよくないので、どこか線引きはあるとは思いますけど、絵に向き合ってないからあの人は参加してないみたいなことで線引きしてしまうと、一つの方向性を強く位置づけてしまうことになって、「上手い下手問題」のような、窮屈な場になっていくと思います。
自分の他の現場でも割とそうで、会議とかしてても子供達が何も話しを聞いてないみたいな現場がたくさんあるんですけど、彼らはそうやって参加しているっていう風に捉えようってした方が、そこにいられる人も増えますし、参加って何だろうかって捉え方を考えること自体がすごく大事です。
作業を均等に分けてやらせるのはあまり良くないし、やらないです。まず均等に分けるのが無理ですしね。そこには必ずムラが存在するので、その差異自体を大きく捉えて、いろんな参加の仕方があるんだっていう前提で取り組んだ方が良いと思います。
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禁止のルールはできるだけ作らないってのもありますね。これはちょっとうまく言語化できないところなんですけど、「何々しちゃだめ」ってあんまり良くない気がして、できるだけそういうのは明文化しないでおくっていうのがあります。もちろん危険なこととかで、禁止の線引きはあるとは思いますが、できるだけ禁止事項を書いたりはしないようにしたり、書いても禁止の形では書かないとかね「こういう風にしてみよう」とか、そういう風にしています。
ルールが明確に決まってしまうと、いろんな可能性を潰してしまうことにもなったり、考えることの余地を奪ってしまうこともあるので、ルールを作ったとしても、それはハッキングされたり書き換えられる可能性を奨励した方が良いと思います。誰かのある行動によって、こんなやり方もあったんだみたいな、ルールをハッキングして新しいやり方ができてくることもあったりするので。
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絵の大きさを決めるというのは僕の一番大きな仕事だったと思います。島が具体的にどう描かれていくのかっていうのは皆さんにほぼ任せていたので、僕はあまりコントロールできないんですけど、描く上で一番大きな制約は絵の大きさだと思いますね。
大きさを決めるというのは作品の終わりを決めるということですね。この大きさを塗り終わったらこのプロジェクトは終わりなんだっていう、そこは結構でかい制約だと思います。
それは、体と大きさとの関係で関わり方の意識が変わってくるのももちろんあって、あまりにも絵が小さいと自分が描いた部分の責任が大きい気がすると思うんですが、10mぐらいあれば多少なんか描いたぐらいで遠目からわかんないよねみたいに言って、描くハードルを下げたりして。
あとはこれだけ大きいから、本当に皆さんにも手伝ってもらわないと終わらないみたいな、それも自然に伝わるところで「大丈夫?これ終わるの?」「自分も手伝わないとやばいのでは?」と思ってもらいやすくなるというのもあります。なので、大きさを決めるというのはシンプルですけど結構制約としては大きいかなと思います。
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塗り絵の様にするっていうのもありましたね。特に山の部分とか枠線を区切って描きやすくと言うか、とにかくこれ1マス塗りましょうよって。とりあえず1マス塗ったら、まあ隣もいけますよねって、どんどんやってもらうという風にしました。あと、別に線は無視してもよくて、その通りに描かなくてもいいですよっていう、これもルールのハッキングと一緒ですけど、枠線はあるけれど描きたいようにようにやってくださいと伝えて任せました。本当に無視する人もいたし、無視しつつ最後また上から線を描く人もいました。
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時間差の参加っていうのも一つありましたね。全員で一斉にやる時間ばかりじゃない。もちろんみんな予定もあるから、1日中アトリエは開けておいて人が来たらやる感じで、参加には時間差があるんですよね。あとはやっぱりこう島の人たちが集まるのでそこには色んな関係があるので、あんまり一緒は苦手だなって人もいるんですね。そういう人たちは時間をずらしてきてもらう形にして、ネガティブなことが起こらないようにしました。
時間差があることで、描いたものを見る時間もできた気がします。描いている時ってどうしても描いてるものと一体化しちゃうので、ちょっと離れて見るみたいな、自分のとか人の描いたものとかを見る時間もそこで生まれてくるので、「昨日とこんな風に変わったんだ」っていう、そういうことがまた次の触発つにつながっていると思うので、全員が一斉に参加しなきゃいけないっていうことはないと思います。
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あとこれは実際やって思ったことですけど、使うメディア自体が魅力的だと、またみんなのテンションも上がるんだなって思いました。使ったのはアクリル絵の具ですが、絵の具ってもう大人だと使わない人が多くて、久しぶりに使うし、好きに描けるからそれだけで楽しいみたいな、そういう形でモチベーションが上がって、ず集中して描いて方がかなりいらっしゃったので、そこのチョイスって結構大事だったんだなって改めて思いました。
なので絵の具も買える種類をできるだけ買って並べてお店みたいな形にして、ちょっとそこでもテンション上げてもらって、で、特に初めて参加する人には好きなだけ使ってもらう形で、絵の具に触れてること自体がすごく楽しいみたいな感覚があったので、手に触れるものの魅力ってすごく大事なんだなっていう風に思いました。
はい。で、そんな風に絵を完成させていったんですが、振り返ってすごく良いものができたなと思っていて、粟島の人たち、そこに関わる人たちはものすごくクリエイティブだなっていうふうに思ったんですが、実は結構島のあちこちに既にもう表出している島の人たちのクリエイティビティってのがあるんですよ。
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漁具のブイを使ったリサイクルアートであったり、海ほたるっていう海の中で光る生物がいるんですけどそれを使ってショーを開発したりとか、結構あと絵を描いている人とかも多くて、それを自分で飾ってたりとか、平均年齢八十歳ぐらいの劇団があってそこで衣装とかも自分たちで作って100回くらい講演したりとかしてて、非常にクリエイティブなものが島のあちこちに溢れていています。
これは、一つは、限られたものしかない島っていう環境があって、なかなか外から大きな物をホイホイと持ってこれないとか、あと外国航路の船員さんが島には多くて、1年ぐらい同じ船の中でずっと生活してること多かったので、限られたリソースの中で豊かに生きるにはどうしたらいいかってことを考えざるを得ない環境が粟島の日常だったんですね。
そこで生まれるクリエイティブがたくさんあって、皆さんそういうものをすで持っていたんですよね。で、すでに皆さんが持っているポテンシャルを、僕はアーティストなのでアートっていう切り口でどうやって表出させるかっていうことが今回の課題だったんだなっていう風に思いました。
でもこれは粟島っていう特殊な環境に限った話ではなくて、最初の方にも言ったクリエイティブは遍在していて、どこにでも自然にあるものなんだってことと一緒で、皆さんの中に偏在しているクリエイティビティを、どうやって自然に美しい形で、ポジティブな形でみんなが豊かになる形で表出させるのにはっていうことを考えると、クリエイティブな場やコミュニティができていくのではないかなという風に思いました。
以上です。
ここから質疑応答
作品について詳しくは以下のリンクを参照ください。