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漢字#6「畾」「𫝓」

 「畾」や「𫝓」について。意外と身近な漢字に関わりがあるかも。

「畾」

 「という漢字をご存知でしょうか。こちらは「ルイ」または「ライ」と読みます。漢和辞典によると、

①かみなり
②土を運ぶ道具。ふご。もっこ。
③土を積み重ねたとりで。
④石をころがし落とす。
「田+田+田」。田の印を三つ重ねて、同じ物が重なることを示す。

漢字源第四版より

 とあり、同じ漢字を3つ組み合わせることで「ごろごろと積み重なっている」というイメージを持つ漢字になっています。

「雷」

 現在では雨かんむりに田の字で書きますが、元々は「雨+畾=靁」で書かれていました。

漢字源第四版より

 金は金文、篆は篆書(てんしょ)、楷は楷書のこと表します。篆書を見るとよく分かるように、昔は「田」では無く「畾」を用いていましたが、やがて省略されるようになりました。

 「畾」が持つ「ごろごろと積み重なっているイメージ」と雨かんむりが組み合わさることで、「雨雲の中に陰陽の気が積み重なって、ごろごろと音を出すこと」を表しています。

「儡」

 「畾」をパーツに含む熟語の中で、おそらく1番有名なのが「傀儡」です。カイライ、または熟字訓でくぐつと読みます。(熟字訓について#1参照)

 どちらの読みも①他人に操られる者、②操り人形という意味があります。

 「土のかたまりを積み重ねて、頭を大きくこしらえた人形」というところから「畾」の字が使われています。

 よく用いられるのは「傀儡政権」という言葉で、名目上独立国でありながら、実質的には他国の意志に従って統治を行う政府のことを言います。

「畳」

 畳にはたたむ、かさねるという意味があるように、積み重なるイメージを持つ「畾」の字が関係しています。

 旧字体では「」と書きますが、「靁」と同様に田が省略されました。

 重なるという意味を持つ「畳」を含む熟語は、いくつかあります。

畳語…同じ単語を重ねてつくった語。「ひとびと」
   など。
畳韻…漢字二字の熟語で同じ韻字を重ねるもの。
   「彷徨(ほうこう)」など。
畳字…同じ字を重ねて書くときに、あとの字の代わり
   に用いる符号。「ゝ」 「々」など。

漢検 漢字辞典

 他にも「畾」を含む漢字はいくつかあるそうなので探してみてはいかがでしょうか。

「𫝓」

 こちらはいわゆる略字と呼ばれるもので、「」の略字になります。現在でもたまに見かける略字としては㐧(第)、门(門)などがあります。

 力の下の4画によって、「力という字が3つ使われている」ということを表しています。

「渋」

 「」の字にも「𫝓」同様に省略するための4画が使われています。それもそのはずで、渋の旧字体は「」と書き、今でも名字などでたまに見かけることがあります。

 正確には「」が旧字体で、「」は俗字(世間で通用しているが正式ではない漢字)だったのですが、昭和21年に当用漢字になったいきさつがあります。
(詳しくはhttps://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/shibui)

 以下は勝手な自分の推測ですが、踊り字(畳字)と呼ばれる、同じ文字を書く時の省略記号である「ゝ」を二つ用いた結果、現在のような4画で表すようになったのではないかと考えています。

(もし知っている方がいればご教授お願いします🙇‍♂️)

「塁」

「畾」も「協」や「澁」と同様に、同じ漢字が3つ使われている漢字です。畾についても4画を用いて省略している漢字があります。

  一塁二塁という時の「」という漢字です。お察しの通り、旧字体では「」と書きます。

とりでかさ(ねる)という読みを持ち、ごろごろ積み重なるという「畾」のイメージを引き継いでいます。

漢検 漢字辞典より

 また、現在用いられる字体ではありませんが、「畳」の旧字体である「」に関しても、「」という書き方が存在します。

 他にも「𫝓」や「渋」のようなパーツを持つ漢字を知っていたら是非ご教授いただけると嬉しいです。

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