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足りないピースは足りないままで【おやつ日記:8月1日〜8月31日】

8月1日(木)

夜道を自転車で漕いでいる親子がいる。
お母さんが前で、娘さんがうしろ。
わたしはそのすぐあとを、のろのろついていく。
小さな自転車をしゃかしゃか動かす娘さんは、立ち漕ぎでふらふらとあぶなっかしい。
その前にいるお母さんは、大きくストロークするように、足をゆったりと動かしている。
娘さんは一生懸命、お母さんの自転車に必死についていっている。
娘さんはそのようなお母さんの姿を見て、大きくなっていくんだろうなあと思う。

次第に、わたしの自転車と親子の距離は開いていった。

8月10日(土)

バナナを買ってうっかりそのまま放っておくと、すぐに熟してとろとろにやわらかくなるので、タイミングを見計らって、アルミホイルにくるんで冷凍庫にいれている。

そのタイミングというのが、なかなかに難しい。かたくてもあまり甘くないからだめ、やわらかすぎるとじゅくじゅくになってだめ、ということになるので、結構気を使う。

今日は冷凍バナナと無印で買った「牛乳でつくるラッシー」を使って、バナナラッシーを作った。バナナをレンジにかけて、スプーンの裏でつぶして、小ぶりなグラスに「牛乳でつくるラッシー」と水、牛乳をいれてぐるぐるすると、できあがり。ちょっと夏らしい飲みものを飲んだ気分だ。

無印良品のフリーペーパー「ごくごく」をパラパラめくりながら、バナナラッシーをごくごくのみほした。



8月11日(日)

お盆。お寺さんがくるということで、せっかくなので祖母の家に行った。若いお寺さんはお経を読むと、お茶も飲まずにささっと帰ってしまった。忙しそうだ。

そのあと家族でお寿司を食べに行った。お寿司はもちろんのことだけど、茶碗蒸しが特に美味しかった。多分「だし」が違うんだと思う。

食べたあと、アルバイトの店員さんに、祖母が「ああ、ごちそうさま、ごちそうさま」ととても丁寧に手を合わせていた。アルバイトの女の子は最初ちょっとびっくりしていたようだったけれど、恥ずかしそうに笑って「ありがとうございます」と言ってお膳を下げてくれた。

祖母のこういう素直なところを尊敬している。

お寿司ってやっぱりテンションあがるね


8月13日(火)

京都の美術館「えき」KYOTOでやっていた、「みうらじゅんFES〜マイブームの全貌展」に行く。
みうらさんはここに展示されているもの全部残していたの?!と思うと驚きが隠せない。さすがマイブームという言葉の生みの親。みうらじゅんさんの奥深さに触れられる展示会だった。

みうらじゅんさんといえばラジオで話しているイメージしかなくて、本職である絵を見るのは初めて。仏像もそうだし、有名人のイラストもそうだけど本当にそっくりで、こんな細かいところまでみているなんてすごいなあ…!と思った。

コロナの時に一日一枚書いたというコロナ画
科捜研の女もいますね

様々なブーム展示があるのだが、気になったのは「角煮ブーム」と「冷蔵庫マグネットブーム」。冷蔵庫の一面に水道局のマグネットが貼っているという展示方法で、「いかにも触ってくれ」と言わんばかりなのだが、触るのは禁止なのが残念。

「はかせたろう」という世界の名画に下着を履かせてみる、というコーナーも面白かった。

角煮ブーム 台湾にはこういうのがあるのか
個人的に真ん中の下のバンドの絵馬がツボ
思わずツッコミ入れたくなっちゃう


8月14日(水)

龍谷大ミュージアムで行われていた「阿弥陀さん、七変化!」展に行く。母に誘われて行ったのだけど、これ本当に500円でいいの?というぐらい大満足だった。

1番気になったのは、宝冠阿弥陀如来坐像(滋賀県・梵釈寺)。
ずっと観音さまだと思われていたけれど、本当は阿弥陀さまだった、という仏像だ。確かに美しい装飾を身につけていて、観音さまっぽい。見た目では判断できないんだな、と思う。

ベゼクリク石窟寺院の壁画を再現

ミュージアムの中にカフェがあるのだが、ガラス越しに袈裟を着たお坊さんが、コーヒーフロートにのったごろん、としたまるいバニラアイスを、一生懸命スプーンですくって食べているのが見えた。

わたしが「あの人の食べているのめちゃ美味しそう」というと、母も「本当、美味しそうに食べてはる」と言い、惹かれるようにそのお店に入って昼食をとった。

デザートは、コーヒーフロート…ではなく、阿弥陀展限定のパフェを食べた。限定に弱い。

「阿」があれば、完璧だったのだけど…


8月21日(水)

お昼休みにいそいそと銀行に行き、家賃の支払いをすませる。銀行を出たあと、小さくホッと息をついた。これで今月もなんとか住める。

先月はうっかり家賃の支払いを忘れていて、管理会社に大変迷惑をかけた。メールやら電話をもらっていたのにタイミング悪く出られず、実家にも電話がかかってきたらしい。管理会社に何度も何度も謝って、すぐに家賃を払いに行った。
忘れた自分が情けなくて、肩を落とした。

信頼ってこういうところからほころびてくる。
何度も自分のこういううっかりやだらしない態度で誰かを傷つけてきた。

もうやらないように、今は紙に「家賃」と書いて、玄関に貼っているのだけど、またうっかりしそうで怖い。

8月22日(木)

「料理上手」ってどういう人なのだろう、と思いながら冷蔵庫を開けたら、大根が4分の1ぐらい出てきた。

面倒くさいな、と思ったけど大根しかなかったので、厚くならないように半月切りにして、塩をふって、オリーブオイルでじっくり焼く。

それを丁寧にお皿の上にのせて、ポン酢をかけてネギをふった。

別に料理上手じゃなくても、あるもので美味しいもの食べられたらそれでいいか、と思った。

8月23日(金)

「どうぞ」と職場の人にお菓子をもらった。その人はお客さんにもらったらしい。いつも訪問すると、お菓子をくれるのだという。

そのお菓子はクルクルとスティックみたいなかたちをしていて、「薪パイ」と書いている。初めて聞く名前だな、と思ったのだが、なんとりくろーおじさんのお店が出しているではないか。

りくろーおじさんといえば、あのふるんふるん、しゅわしゅわのスフレチーズケーキなのだが、こういうパイも売ってたなんて知らなかった。

ちょうどいい大きさで、ちょっと誰かと食べるのにいいお菓子だなあ、と思う。「ちょうどいい大きさでちょっといいお菓子」は探すのが簡単なようで、難しい。貴重なので、その場でメモをする。

りくろーおじさんのスフレチーズケーキはあつあつのできたてよりも、冷蔵庫で冷ました2日目以降のほうが好みだ。フォークをケーキにいれたとき、すうっと吸いついてしっとり美味しい。

この流れでりくろーおじさんのチーズケーキを食べたくなってきた、と書きたいところだが、今はビアードパパのシュークリームを食べたい。


8月24日(土)

早起きして美容院へ。髪の毛がヂリヂリになって、頭部がちょっとした鳥の巣みたいになっていたので、カットとストレートパーマをしてもらった。美容師さんによると1年間ストレートパーマをしていなかったらしい。そりゃ鳥の巣ができるはずだ。

わたしの髪の毛はものすごく剛毛で一本一本太いので、定期的にメンテナンスが必要なのだが、最近こころなしかその剛毛さも勢いが衰えている気がする。

一時期なんかは本当にひどくて、髪の毛が指に垂直にささる(!)なんてことも一度や二度とではなくあったのだが、もうそんなこともなくなってしまった。

手で後頭部をかきわけるようにさわっても、量が減っていて、「ああ少なくなったなあ」と思う。

中高生の多感な頃は、自分の癖毛と多量の髪の毛の量を呪い、「もっと減ってくれないかなあ」とか「サラサラになってくれないかなあ」と乙女ごごろに思っていたけれど、いざ量が減ってしまうとしょんぼりしてしまう。

自分が望んでおいて、老いていざそういうふうになるとこんな気持ちになるなんて、我ながら勝手なものだが、みんなそんなもん、だと思うことにする。

8月30日(金)

職場の人とユニバーサルスタジオジャパンの話になって、ETが10年以上前になくなっていた、という事実に衝撃を受ける。なんとスパイダーマンもなくなっていたらしい。「あれは?シュワちゃんのやつ」と聞くと、それもなくなったという。

今、USJのアトラクションってなにがあるのだろう。最後に行ったのは、ハリーポッターができる直前だ。ジョーズとジュラシックパークはまだあるみたいだが、もしかしたら時間の問題かもしれない。

自分の知っているものがなくなっていくことは、自分をかたちづくったものがなくなるということで、少しさみしい。ポンっと、乗っていた汽車から突然降ろされた気分になる。けれど、降ろされてもそこから自力で歩かなければならない。生きるということはそういうことで、頭ではわかっているけれど、心が割り切れない。そんなさみしい気分や孤独を日常的によく感じている。

でもそれが悪いのかっていわれると、全然違う。ものは考えようで、また違う景色を楽しむ権利がある。わたしはそういう選択をしていきたい。


8月31日(土)

「図書館とか本屋さんに行ったら、トイレに行きたくなる」
この現象ってなんていう名前だったかな、とふと気になったのだけど、思い出せない。

立ちながらテーブルを拭いていた母に、「図書館とか本屋さんに行ったらトイレに行きたくなる現象、あれ、なんていう名前やったかな?」と聞いたら、「そんなん名前あるん?」と言われた。

「でも確かに本屋行ったらトイレ行きたくなるよなあ」
「うん、なんかこの現象に確か人の名前がついてたんやけどなあ…ナカジマ キョウコ現象的な」
「結構多いみたいやけどなあ、本屋行ったらトイレ行きたくなる人」
「最近、お母さん本屋とか行ってへんやろ?」
「うーん、まあな、でも昔はよく行ってたし、トイレもよく行ってたよ」

そのあと彼女の話をよくよく聞くと、いつも本屋に行く前に下剤を飲んで行っていたという。…なぜ。彼女の場合、それは本を読むことで起きたリラックス効果ではなく、ただの下剤効果だ。

ちなみに「図書館とか本屋に行ったら、トイレに行きたくなる」この現象は、青木まりこ現象という名前だった。ナカジマキョウコさんにも、青木まりこさんにも、大変失礼なことをしてしまい、申し訳ない。

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