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『ブラッシュアップライフ』を観ると、大切な人に今すぐ会って雑談したくなる


※ドラマ『ブラッシュアップライフ』についてネタバレしています※

ドラマのあらすじ
交通事故で死亡した女性は死後の世界に送られるが、生前の人生を最初からやり直すチャンスをつかみ取る。来世のために徳を積むべく、彼女の2周目の人生が幕を開ける。

Netflixより

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 『ブラッシュアップライフ』というドラマが面白いと方々で話題になっていたので、遅らばせながらNetflixで観ているのだが、とても面白い。

何が面白いかというと、主人公たちが繰り広げる会話だ。「これはドラマだし有り得ない…いや、あるある!」という一見どうでもいいけれど、現実ではそこらかしこに溢れているだろうという彼女たちの会話劇が、ギリギリラインでリアルなのだ。

「うんうん、わかるー」と思わずこちらもポテチを片手に、うなずきながら楽しんで観ている。



わたしのほうが年齢が少し上だけど、主人公たちとほぼ同世代という点も、楽しんで観れる一因になっているのだろう。

「セーラムーンごっこぉー!(誰がセーラームーンをやるかで揉めた)」
「たまごっちぃー!(はじめて買ってもらったのはなぜか英語版だった)」
「プリクラぁー!(今では考えられないようなポーズが流行った)」
など、ひとつひとつの自分の思い出を重ね合わせながら、懐かしさも感じている。


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ある雨の朝。この日は友人とランチの予定があり、化粧をしながら『ブラッシュアップライフ』を見ていた。第8話だった。



4周目のやり直しの人生を送っている主人公麻美が、5周目のやり直しの人生を送っている友人・まりりんから、近い将来2人の親友(みーぽんとなっち)が亡くなることを知らされる深刻な回だった。

2人は飛行機事故で亡くなったため、まりりんはみーぽんとなっちを救うべく、このやり直しの人生でパイロットになることを決意。やっと2人の乗る便のフライトを任されることになったが、残念ながら事故に巻き込まれて、まりりんも2人の友人も亡くなる。


「なんか…突然すぎて実感わかないね」と言いながら、麻美は他の同級生たち(ふくちゃんとみさごん)とカラオケでお茶することに。「1ヶ月前もここでまりりんと一緒にお茶してここにきたんだよ」と言いながら、カラオケで3人で朝まで過ごして帰る。


そして麻美が39歳のとき。研究に勤しむ日々だったが工事現場で事故に遭い、4周目の人生に幕を閉じる。そのとき人間に生まれ変われるチャンスがあったのだがそれを捨てて、「近藤麻美」として5周目の人生をやり直すことに決める。

それは人間に生まれ変わるためでも、徳を積むためでもなく、今世をよりよいものにするためだ。


ただ幸せになってほしい。



それだけの思いで、「ツツジの蜜は吸わない方がいいよ」と保育園の同級生に教え(毒性があり中毒を起こす可能性があるから)、保育園の洋子先生にはもらった番号を捨てるようにお願いし(このあと保護者の父親と不倫関係になるから)、「みやおかさんはきこんしゃ」とれなちゃんに幸せのおまじないを教え(宮岡さんは既婚者であることを隠してれなちゃんと付き合う悪い男だから)、とにかく周りのために帆走する。

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8話を見終えたあと、気づけば化粧そっちのけで泣いていた。

お葬式の帰り、麻美が友人たちと過ごした楽しい時間を回想しながら空を見上げるシーンがあるのだが、そこで涙がポロポロ出てしまい、それからずっと感情がゆさぶられて、せっかく塗ったアイシャドウもファンデーションもぐちゃぐちゃになってしまい、涙が止まらなかった。


どうでもいい雑談ができる人や一緒に笑ってくれる人は、本当に大切な人なのだ。今日あった出来事を「ねえ、聞いて!」って真っ先に言いたい人って、絶対離したらダメな人なのだ、と改めて強く思った。


わたしはそもそも雑談というものが苦手だった。
というか、今でも苦手だ。

「意味のない会話はなるだけしたくない」「時間の無駄じゃないか」と思っていたのだが、ドラマを見始めてから「雑談こそが幸せな日常をつくっているのではないか」と考え方が少しずつ変わっていった。


今そばにいる人と、いつこんなくだらない話ができなくなるかがわからない。この時間は突然失われるかもしれない。後悔したくない。意味のない時間なんてない、意味のない時間と思っているその時間は、きっとそれが幸せなのだと気づいていない&忘れている証拠なのだ、と思うようになった。


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実をいうと、今日のランチで友人に会うのが怖かった。

30代後半まで生かされてきたというのに、これといった「道」のようなものをわたしは何一つもっていない。家族のために家事や子育てをしているわけでもない、特に仕事で重要なポジションを担って頑張っているわけでもない。趣味などで一芸に秀でているわけでもない。

根無草みたいに生きている自分が恥ずかしくて、「今何やってるの?」と聞かれても何も言えない自分をさらけだすのが、嫌だったし、怖かった。ますます比べて自信をなくしそうだった。


けれど、そんなのどうでもよくなった。


真の友人との会話に、別にオチも中身もいらない。ただ一緒に時間を過ごせるだけでいいのだ。

「あの先生キライ」とか、今日のドラマの話とか、「毎日ダルイ」とか、人のあれこれとか、そんなことを言っていたあの頃の延長線みたいに、ご飯を食べながらくだらない話を肴に、楽しい時間をただただ、過ごすのだ。

ライフステージが変わると、人間関係も自然と変わっていく。女性は特に難しい。時間が合わなくてお互いすれ違うことも多いし、話もだんだん合わなくなっていく。誰も悪くないのだけど、「なんか会いたくないなあ」と思うときもある。

けれど、そういうときはお互いの気持ちを察しながら、何かあったら助けにいく準備はいつでもしておくのがいいのかもしれない、と思った。

またどうでもいい話で笑える日がくるように。

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それから涙をぬぐって丁寧にファンデーションを塗り直し、アイシャドウを瞼にのせ、雨がしとしと降る中、待ち合わせのお店に向かった。

グッと手に力をこめてお店のドアをあけると友人は先に入っていて、わたしに気づくと片手をあげた。髪の毛はメッシュが入っていて、なんだかカッコよかった。

「髪の毛のメッシュかっこいいなー」

「いやな、一回断ったのにな、それやのに、やで?なんかチャラい美容師さんがチャらーくやりはってん」


そう言って、彼女はチャラい美容師さんのモノマネをしだし、わたしは「あはは」と声を出して笑った。それから2人そろって、ホタルイカとなすとほうれん草のトマトソースパスタを注文した。ひとりでも美味しいけれど、心を許せるふたりのほうが美味しい、と思った。

ホタルイカとなすとほうれん草のトマトソースパスタ。
ホタルイカなんてめったに食べられないぞ。


前菜のキッシュ





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