樋口愉美子さんの作品展でうっとりしてきた
刺繍作家・樋口愉美子さんの作品展に行った。
樋口さんの本は数冊持っているけれど、本当にどれも画集を見ているように、美しい。
「美しい」といっても、良い意味で「崇高」とか「近寄りがたい」という畏れ多い感じではない。すぐそばにあるものを愛でるような、面白がるような視点で、「ありのままに寄り添っている」感じの美しさだ。
普段なら見落としそうなものを、樋口さんは刺繍でキラキラ輝かせてくれる。
今回、『樋口由美子 暮しの刺繍』の発売を記念した展示会だったのだけど、樋口さんの刺繍作品を間近で見ることができて、大変感激した。
展示会で実際に観る作品は、書籍の掲載以上に細やかで、鮮やかだった。且つ愛らしさと美しさが同居していて、もう「はああああ」と終始うっとり。
なにより、ファブリックパネルのなかで糸が生き生きしてしている…!これは自分の目で見てみないと、わからない。
作品展には書籍の他に、糸や刺繍枠なども売られている。なので、書籍とともに糸や刺繍枠を購入すると、すぐに作品づくりに取り掛かることができる。
しかもモチーフごとに糸が用意されているので、「えーっと、ここの部分は何番の糸で…」とか言いながら、糸を探す必要もない。これはもう、すぐにでも刺したくなる。
刺繍作品と本棚というとても居心地良い空間で、随分長居してしまった。
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本をひらくと「はじめに」という樋口さんからのメッセージにこう書かれている。
願いの提案。この部分にハッとした。季節がめぐり、それをお祝いできる環境があるということは、なんと豊かなことなのだろう。
そして、そのなかに希望がある。ああ、だから樋口さんの作品を見ると、なんだかワクワクするのだ。
大切なものは、よく目を凝らさないと見えない。いや、目を凝らしてみても見えなくて、あとで気付くなんてことはしょっちゅうだ。
だから今気付くのが大事。
「なんてことない日常」が当たり前でなく、今自分の周りにあるそこにあるものたち全てが自分を支えてくれるもので、かけがえのないものであると、樋口さんの刺繍によって改めて気付かされる。
普段は時間に追われているけれど、無心になって手で針を動かし、刺繍に没頭しているときだけは、時間がゆっくり流れているような気がする。短時間でも「何かに没頭する時間」を持てること自体が、「穏やかで幸せなこと」ということなのだろう。
図案を見ながら刺繍する時間に浸ってもいいし、見ているだけでうっとりするだけでもいい。どちらにしろ、幸せな時間を過ごせる、そんな一冊。
展示会は20日まで開催中。お近くの方は是非。
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