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そうだ、宮城に行こう!〜仙台から川渡温泉まで〜⑨
●坂道でも元気いっぱい
雪煙にあまりにも興奮したせいで、気力がMAXになり元気が出てきたので。旅館に帰る前に寄り道をすることにした。カメラを見た宿のご主人が「写真を撮るなら…」と、街が一望できるスポットを教えてくださっていたのだ。せっかくなら、回り道してそこも寄っていこう。
街が一望できる、というだけあって少し小高い場所になる。つまりは坂道だ。しかし美味しいシチューで体力も回復、雪煙の興奮で気力も回復しているのだから余裕がある。所々でシャッターを切りながら、軽快に坂道を上っていく。
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●伝えたい相手は、どこかの誰かではなく、自分だからこそ
ここは広島からは、あまりにも遠い。次に来る機会があるかどうかも、わからない。だからこそ誰かにとっては何でもないこの風景写真が、自分にとっては宝物のような1枚になる。
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自分にとって、写真とはとても私的なものなのだと思う。仕事ではなくプライベートで撮るものに限れば、「誰かに見せて共感して欲しい」というよりも。「自分が見るためのものだ」という要素が強い。
外部デバイスのようなものなのだ。「ファインダーを覗いた時の気持ち、どうしてシャッターを切ろうと思ったのかという考え、そこへ向かうまでの思い…」日常と生活の中で埋もれてしまうであろうものを、外部に記録しておくための手段。
もちろん、二次的に「これを見た誰かが、何かを感じてくれたら嬉しい」という気持ちもある。でも別に、だれかにいいねと言われなくたって。誰にも伝わらなくたって。究極、自分にとって意味のある写真でさえあれば、それで構わないのだ。伝えたい相手は、いつもどこかの誰かではなく、自分である。
写真に対してこういうスタンスなので、いくら写真を撮ることが好きでも"写真家"というものには心底向いてないんだろうなと思う。
●あなたとわたしで、共有したいもの
一方で仕事で撮ることは、また別の感覚である。伝えるべき相手、見せるべき相手が明確にいるからだ。「わたしはこれが素敵だと思いますが、あなたはどう思いますか?」という問いかけが常にそこには存在し、写真は自分の所有物ではなく相手と共有するものとなる。
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どのようなものが望まれているか事前にヒアリングしたり、こちらから提案してみたり、人とのやり取りの中で撮っていく写真は。
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自分の目を通した世界でありながら、誰かと共に形づくっていくもので。
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誰かのために…という意思が想いが込められたそれらは、自分のために撮った写真とはぜんぜん違うものになる。
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そこにはいつも誰かの望みが、想いが、愛が、存在していて。自分のために撮った写真とは、異なる輝きに満ちている。
自分のためにしかシャッターを切れない人間だからこそ。必ず誰かしらの存在が介入することとなる「仕事としての写真」の方が、「趣味としての写真」よりも向いているのかもしれない。
旅からは少し話がずれてしまったけれど、自分の写真を見ていると、そんな風に思う。
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