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"地すべり地形"で頭の体操~エピローグ~:埼玉県中西部平坦~中山間地域【災害から身を守るvol.34-6】

「"地すべり地形"で頭の体操」を5回にわたってお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか?
だいぶマニアックで専門的でしたので、私にとっては思い切った試みでした。しかしnoteを始めて2年が経過し、古くから読んでくださっている方は地形・地質について理解が進んでるでしょうし、「そろそろ1歩踏み込んでみようかな?」と言う考えで書いていました。
今後も、たまに専門的な要素を入れてみたいと思いますので、よろしくお願いします。

ではエピローグとして、前回までに話しきれなかったことも含めて、締めくくりたいと思います。

地すべり地形はここを見よう!

地すべりの場合は、動きは一般的には年間で数cm~数10cmレベルですので、人間が体感できないゆっくりとしたスピードです。
そのため建物等の被害はあっても、人が亡くなってしまうようなことは滅多にありません。でも怖いパターンはあります。

地すべりの諸地形:スーパー地形画像に筆者加筆

以前もお話ししたように、この地すべりの末端部には崩壊跡(上図茶色点線)がたくさんあります。
地すべりは長い時間をかけて動くうちに、地質が弱くなっていきます。
そして一般的に、その影響が一番出てくるのが末端部です。上から押されて圧縮されるため、ボロボロになって崩れやすくなります。

特に上の事例のように、すぐ目の前を沢が流れていると、侵食で足もとが削られて不安定になり、崩れます。そして場合によっては土石流を引き起こします。
つまり、地すべり本体の動きはゆっくりでも、末端部の崩壊や土石流は突発的で動きが速いので危険だということになります。

このように、地形図を見る目を養うことができれば、より危険な場所を見抜くことができるようになります。ちなみに、上記のような情報はハザードマップを見るだけでは得られません

地すべりと人間との関わり

以前から「地すべりは軟らかくて耕しやすく水を含むので耕作地として適している」と話してきました。
そのため、里山農村は実は地すべり地帯だったということはよくあります。

そのような、地すべりと人間の関係性について、秩父市のこの地域は非常に分かりやすい事例です。

スーパー地形画像に筆者加筆

ザッと尾根のラインを引いてみました(※正確ではありません)。
この赤のラインの南東側と北西側では、地形が全く違うと分かると思います。南東側は地すべり地形が並んでいて、集落ができています。

北西の地域は起伏が激しく平坦な土地は少ないため、人が住みやすい土地ではないと、この地形図を見て分かりますよね。

一方の地すべり地帯では、時おり災害が起こったとしても、それ以上のメリットがあるので人が住み続けたのでしょう。

このような差ができた要因の1つは層理面の傾斜方向・・「つまり南東に傾斜してるため地すべりになりやすい」・・ですが、もう1つ理由があります。

それは河川の規模です。
南東を流れる荒川は日本有数の大きな河川ですし、その侵食力の強さも、地すべり地形に大いに関与していることでしょう。

層理面の方向河川の流れが地すべり地形を生み、そこに人間が集落をつくって歴史を刻んでいく・・。
地形・地質が人間の歴史に深くかかわっていることを知るツールとして考えてみても、地すべり地形を判読できると、より楽しめると思いませんか?

お読みいただき、ありがとうございました。

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