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みんなも"地すべり地形"で頭の体操してみよう!の前に・・【地質応用編vol.1】
都道府県シリーズの埼玉県では現在、秩父盆地をテーマにしています。
そこでかなり明瞭で興味深い地すべり地帯を見つけましたので、次週は少し突っ込んだ「地すべり地形判読」の話をしたいと思っていまして・・。
今回はその理由について、つらつらと話していきますので、お付き合いください。
地すべりの特徴
地すべりと言えば、専門家視点では「土石流やがけ崩れに比べれば人間が亡くなる可能性が低い」という考え方もあります(※地震が原因で発生する地すべりは除きます)。
その理由として、以下の点があげられます。
ジワジワと動く(数mm~数10cm/年)ため避難しやすい
地すべり地形が確認されれば、あらかじめ警戒しておくことができる
被害が軽微(動きが小さい)なうちに対策工事ができる
観測体制を構築すれば監視ができる
とは言え、地すべりが活発に動き出せば道路や建物は壊れますし、地すべり全体または一部の土砂崩れ等が原因で洪水や土石流を引き起こす場合もあります。
そして何といっても重要なインフラを破壊する可能性があるため、たとえ個人の命は救えても、人間社会に甚大な被害を与える危険があります。
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「見極め」は完全ではない!
私は長年、防災対策の公共事業に技術者として携わってきましたが、現地で実際に地すべりの範囲を見極める作業は、高度な技術力が必要だと痛感しています。
また日本の山間地域は地すべりが多いため、高速道路や国道などは「近くに地すべり地形があると分かっていても通さざるを得ない」ような場所もあります。
そして技術者と言っても人間ですので、見落としもあります。
この本は「日経コンストラクション」という土木建設業向けの月刊誌での連載を再編集して書籍化したもので、専門家向けの本です。
このようなタイトルではありますが、中身はどちらかというと「トラブル事例集」です。日本全国の工事現場で起こったトラブル(道路建設で山を開削したら地すべりが動いた等)について「事前にここに着目しておけば防げたのでは?」という内容です。
誰か個人が悪いというものではありません。
公共事業は、受注した会社・発注した自治体や国の機関など、大勢の人が関わっています。にも関わらず、見極められないケースもあるのです。
しかしこの本では、たびたびこのような記述がでてきます。
「経験豊富な地形・地質の技術者が関わっていたら、見極められていたのではないか。」
野外地質学の重要性と特殊性
実体験からの印象です。
私のように大学で地質学を学んでいる場合は、就職後に場数を踏むことで、「地形・地質的な見極め力」が徐々に鍛えられるですが、それ以外の専門出身の人たちは、かなり苦労している印象です。
特に学生時代にフィールド調査の経験を積んでるか否かが重要なのですが、社会情勢や諸事情もあって、現在は野外地質学を積極的に学生に指導する大学が激減しているという残念な現実があるようです。
産業技術総合研究所地質調査総合センターの吉川氏も上のページで野外地質学の人材不足について言及していらっしゃいます。
残念ながら世間では重要視されていませんが、自然災害の多い日本にとっては特に重要な課題だと思います。
みんなでやってみよう!
でも思ったんですよね。
ブラタモリがあれだけの長寿番組になっているのは、もちろんタモリさんや関係者の努力によるものですが「地形・地質」に魅力があるのも重要な要素かと思います。
そして実際に現地を歩き、岩石や地層、地形を見て回り、「大地の歴史を知る」という体験を楽しいと感じる人は多いのだと思います。
まずは地すべり地形を判読してみる
現地へ行かずとも好奇心を満足させられるものとして、これをお勧めします。
今は国土地理院の精密なデータやスーパー地形のようなアプリのおかげで、「地形図を読む」のは難しくなくなってきています。
地すべり地形を判読することで、以下の過去記事のように、地域のダイナミックな歴史を知る手掛かりにもなります。
ぜひ、みなさんに次週紹介する秩父盆地の地すべり地形の判読を通して、興味深い体験をしていただければ幸いです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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