【ハザードマップだって「人間がつくっている」ことを忘れずに】ゆるく楽しむ月曜地質学:2024年7月15日号
仙台市もやっと梅雨らしい天気になり、先週は雨降りが多く、ジメジメした一週間でした。
それでも仙台市の梅雨にしては晴れの日もあり、まだ気持ちよく過ごせています。
ひどい年は一日中霧雨が一週間続いたりしますからね(;^_^A
ハザードマップの"裏読み"の大切さ
松山城が建っている「城山」で土砂災害が発生しました。
亡くなった方々もおり、本当に胸が痛みます。
はじめにお断りさせていただきますが、この記事は、私がいくつかのネットニュース記事の情報をもとに想定したものであり、必ずしも正確ではないとご了承ください。
もちろん長年、災害復旧事業に携わった技術者ですので、全くの見当違いではありませんが・・。
災害に関して考える上での参考意見として捉えていただければ幸いです。
災害発生箇所
「城山」と言っても広いので、どこが崩れたのだろう?といくつか記事を見たのですが、平面図に場所を示したものは見つけられませんでした。
ある記事で使っていたハザードマップと空中斜め写真から想定しました。
管理用道路には既に亀裂が入っており、対策工事が始まる矢先の出来事だったということで、なおさら残念な気持ちになりました。
なぜハザードマップは「空白」だったのか
この山地は、ご覧のように周囲が急斜面で囲まれており、「急傾斜地」として、ハザードマップでも赤色や黄色で塗られています。
しかし上図で示した「土石流の出口」と想定される箇所は、白色でした。
つまり「災害が想定されていなかった」ということです。
それもそのはず。
この場所は谷地形であるため、急傾斜地ではありません。
でも、かと言って安全か?と言えば、そうとも言えません。
今度はそのままの地形図をお示しします。
上の図と見比べて、災害発生箇所を良く観察してみてください。
城山を取り囲む斜面の中には、いくつもの「谷地形」が見えますよね。
これらの中でも、今回の災害発生箇所は一番流路がはっきりしているように見えませんか?
つまりこの谷は、昔から水が集中的に流れる場所だったと考えられます。
だとすると、谷のどこかで土砂崩れが発生すれば、そのまま土石流になる危険が想定できます。
さらに細かく見ると、谷の源頭部付近には細かい乱れた地形があり、過去に土砂崩れがあったと疑われます。
この場所は確かに急傾斜地ではありませんが、土石流の可能性は考えられます。なぜ空白だったのでしょうか?
みんなが「自分ごと」として考えるのが大切
私はここで、国や行政を批判するつもりはありません。
と言うのも、自分も公共事業に関わった身として痛感していますが、「危険か?安全か?」の線引きは、非常に難しいからです。
ましてや、このような市街地で昔から人が住んでいるような場所なら、なおさらです。
「災害の可能性が指摘されてしまったら、地価が下落する」と言う人もいます。
また「子供のころから80年ここに住んでいるが土砂崩れなんて1度もなかったぞ」と怒るお年寄りもいるかも知れません。
私は「少しでも可能性があるなら危険だと知らせるべき」と思う人間ですが、世の中はそう考える人だけではありません。
みなさんはどう思いますか?
少なくとも私自身は、私たち一般市民が「自分ごと」として災害を捉え、上のような問題を議論し、国や行政に大きな声をあげることが大切だと思います。
周囲と話しても「自分は大丈夫」と思っている人が多く、弱気になってしまうことも多いのですが、改めて「自然災害に関する情報発信」は大切だと思い知らされました。
ハザードマップは人間がつくっています。
間違いだって見落としだってあるかも知れないし、「忖度」が働いているかもしれません。
命がかかっている大切なものですので、どうか「自分ごと」として考えてほしいと願っています。
今週の予告
先週も引き続き、思うように執筆が進みませんでした。
以下の日程を目標に頑張ろうと思います。
では、今週もよろしくお願いいたします。