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「ちょっと感じた不思議」は壮大な物語の序章だった【都道府県シリーズ第2周:岐阜県 山県市編no.11】

都道府県ごとに地形・地質を見ていく「都道府県シリーズ」の2周目。
岐阜県山県市の中部には、山県市を袈裟懸けに切るように真っすぐな川(武儀川)が流れており、この河川沿いに活断層が走っています。
前回までは断層の「左横ずれ」の証拠となる地形を詳しく見てきました。

※前回記事はコチラ👇

今回は少し視点を移し、支流の「不思議な地形」のナゾを追っていきます!


場所は?

さっそく場所を確認しましょう。

岐阜県山県市武儀川周辺の地形図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

今回気になっている不思議な場所は武儀川の支流です。
これまで見てきた奥峠よりやや下流域。上図で赤丸で囲った場所です。
この縮尺でも、よ~く見ると変な感じがしますが、どうでしょうか?

川の流れを探ると不思議が見える

ではこの支流、どんなところが不思議で変なのか?地形図を拡大して詳しく見てみましょう。

岐阜県山県市武儀川支流の地形図:スーパー地形より抜粋

拡大しました!
南西に武儀川が見えます。そこに支流が合流していますよね。
この支流を上流(北東方向)の方へたどってみてください。

何か不思議な感じがしませんか?
上流へたどっていくと、北東の幅の広い谷(河川)へ繋がってしまいます。

岐阜県山県市武儀川の支流:スーパー地形画像に筆者一部加筆

こんな感じです。
地形図上で支流の流れをたどると、青実線までは確認できるのですが青点線のあたりが分からなくなります。
そして北東の河川は川幅が広く、とても武儀川の上流とは思えません

もっと詳しく見る:中~下流域

状況をもっと詳しく知るために国土地理院地形図を見てみましょう。
まずは、支流の中~下流域です。

岐阜県山県市武儀川の支流拡大図①:スーパー地形画像に筆者一部加筆

中流域(上図の右上)では幅の広く平坦な谷地形が目立ちます。
特に赤丸で囲った「出戸」という地名の周辺は平坦地が広がっていますが、実は良く見ると河道付近が低く、2段になっています。
この落差は10~20m程度であり、侵食が進んでいるのが分かります。
これより上流は河道付近と平坦地の落差は小さくなり、約5mです。

一方、下流は平坦地の面積が小さく、分断されて細切れになっています。
河川との標高差も50mに達するなど、さらに侵食が進んでいます。

もっと詳しく見る:上~中流域

次は上~中流域を見ましょう。

岐阜県山県市武儀川の支流拡大図②:スーパー地形画像に筆者一部加筆

この赤丸で囲った約500m区間は、地形図を拡大してもどっちへ流れているか分かりませんでした。
これはもう、現地で確認するしかありません。
標高を見ると真ん中あたりが195mで、左右にズレるにしたがって標高が下がりました。おそらく赤丸の真ん中あたりが分水界です。

岐阜県山県市武儀川の支流拡大図③:スーパー地形画像に筆者一部加筆

水の流れは上図のように想定されます。
これぞまさに、谷中分水界ですね。

さらに上流(下流)は?

さらに上流・・・いや、分水界を挟んでいるので「下流」ですね。
もう少し下流を見てみましょう。

岐阜県山県市武儀川支流の谷中分水界 反対側の下流域:スーパー地形画像に筆者一部加筆

分水界の反対側の小川は「柿野川」へ流れ、その柿野川は「板取川」へ合流します。板取川の川幅を見ると、水量は武儀川の同等以上。
やはり武儀川の支流の上流域と考えるには無理がありますよね。

不思議の正体は河川争奪か?

まず結論から先に言えば、おそらくこれは河川争奪によるものです。

なお武儀川の支流の中流域である「出戸」の標高は約145m、分水界の向こうの小川が柿野川に合流する箇所は約170m、柿野川が板取川に合流する箇所は約145mです。
つまりこのまま上流へ侵食が進めば、柿野川と板取川上流域までが、武儀川に争奪されることになります。

現在は人間が河川を管理しているのでそうはならないでしょうが・・

長良川・武儀川・板取川の地形図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

さらに広い目で見ると、武儀川と板取川は長良川の支流でした。
武儀川と板取川は合流点が約10kmほど離れており、一見すると別の水系に見えますが、両河川間で支流を奪い合っているのですね。

でも考察を進めていくと、どうも支流の奪い合いと言うスケールにはとどまらなさそうな、壮大なものになりそうなのです。

次回へ続きます!
お読みいただき、ありがとうございました。


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