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地震と土砂崩れが巡り巡って・・:三重県西部平坦~中山間地域【災害から身をまもるvol.22】
前回は上野盆地に池が多い理由の1つ目として花崗岩の堰き止めについてお話ししました。
今回はその2つ目の理由「断層のせい?」についてです!
理由②:断層のせい?
断層が直接関係しているわけではないですが、根本原因は断層でしょう。
特に、北の崖(急斜面)沿いは、この可能性はありそうです。
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
コレですね。
このまっすぐな崖(急斜面)に沿って断層があるそうです。
その名は「木津川断層」。
木津川断層帯(地震本部より)
直近の活動は1854年(安政元年)で「伊賀上野地震」と呼ばれています。
そしてこの断層が動いて地震になると、断層の北側(崖)が約2.5mも高くなると想定されています。
つまりあの崖は、長い年月の間に何度も地震が起きるたびに高くなり、山になったのでしょう。
断面図はこんな感じです。平地と山の標高差は約400mです。
花崗岩の風化と土砂災害
地震の時に断層沿いの崖が崩れたこともあったでしょう。
また崩れないにしても、少なくとも地震の衝撃で花崗岩が割れたり、もともとあった節理(割れ目)が開いて水が浸み込み、風化が進んだと考えられます。
神戸の六甲山地も断層運動の影響で風化が進みました。
ここの花崗岩も同様だと考えられます。
出典:池田(1997)より
花崗岩はこんな感じで風化が進み、水が浸み込みます。
そして斜面の途中から湧水として水がしみ出します。そういう場所は大雨の時に崩れやすい。
特に崖の北側の山地は台地状で傾斜が緩めなので水は浸み込みやすそう。
この地域では山の中腹にも池がありますよね。これはまさに、湧水がある場所なのでしょう。
そしてこのように、小刻みに多数の川が流れているのも、あちこちに湧水があるからだと考えられます。
アップにして地形だけ見ると分かりやすいのですが、土砂崩れや土石流なので土砂が流れたような地形が目立ちます。
こんな感じです。
崩れた土砂が当時の川を堰き止めたり、凹地をつくってそこに水がたまったりなどして池ができた事もあったと考えられます。
まとめますと・・
①:度重なる断層活動(地震)で花崗岩の山地に割れ目ができる。
②:割れ目に水が浸み込み、風化が進む。
③:山地に水が浸み込んで溜まりやすくなり、中腹から湧水が出る。
④:豊富な湧水を利用して人工的に池がつくられた。
⑤:土砂崩れが頻発し、堰き止めなどで自然に出来た池もある。
地震や土砂崩れは人間に災害をもたらしますが、巡り巡って「豊富な湧水」という恩恵もあるんですね。
やはり我々人類は災害を避けつつ、自然の恩恵を上手に活用するよう、もっと知恵を絞って工夫していきたいものです。
以上、お読みいただきありがとうございました。
参考文献
池田 碩(1997)花崗岩地形の特徴ー組織地形学の視点からー.奈良大学紀要、第26号、p.33ー49.