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山奥にひっそりと・・:山梨県南西部山間地域【災害から身をまもるvol.31】

山梨県南西部山間地域は、昔の火山島がいくつも衝突してきたと言う、世界的にもまずらしい地域です。
そんな地域だからか、よ~く見ると複雑な面白い地形があちこちに見られます。今回はそのうちの1つを紹介したいと思います。

場所は?

確認しましょう。

17_周囲都道府県位置図

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

山梨県は関東地方の北西部に位置しています。

17_地形区分

南西部山間地域はです。

1710_地域範囲市町村

上図の8市町それぞれの一部地域です。
今回は市川三郷町が舞台になります。


地形を見る

さあ、行ってみましょう♬

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富士川が真ん中を南北に流れていますが、その周囲は割と複雑な地形なんですよね。特に北の方は細かい地形が多いですよね。

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その北部をちょっと拡大!
気になる場所は真ん中より少し右上です。

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何やら円形の地形・・・池?沼?湖?
そして周囲は平坦な土地で、しかも階段状になっている。
何となく違和感のある地形ですよね。

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やはり水溜まりっぽいです。
こんなに円形ってことは火山系の地形?でも周囲を見ても火山系の地形には見えません。

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すんごい不思議な地形!
でも私は分かってきました。これは多分、地すべり地形です。

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国土地理院地形図をかぶせました。
でした!
凄い名前ですよね。四尾連湖(しびれこ)です!

名前の由来は・・・

四尾連湖の神が「尾崎龍王」という龍神であり、四つの尾を連ねた竜が住んでいる湖ということで「四尾連湖」といわれるようになったといわれています。(※市川三郷町ホームページより引用)

他にも、2人の武将が「怪牛」を退治したという伝説もあるそう。

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地質図を見てみると、一番広く分布している緑色が玄武岩です。
これは昔の伊豆・小笠原諸島だった火山島近くの海底火山だったと言われています。上の薄緑は海底火山の周囲に溜まった砂や泥などです。(砂岩・泥岩など)
そして問題の四尾連湖の近くのさらに薄い緑は地すべり堆積物と書いてあります。お!当りでした!(笑)

う~ん、でもこの地質図、ちょっと違うと思います。
この地形で、この範囲だけが地すべりってのはおかしいです。
シームレス地質図は日本全体を網羅する地質図としてつくられたので、細部は大まかなのでしょう。それと地すべりの場合、規模によっては表現しない場合も多いので、取り扱いが難しかったのでしょうね。


どんな地すべり?

はい。一応私、長らく技術者として多くの地すべりを調査してましたので、ちょこっと解析してみましょう♬

171001_四尾連湖地すべり01

こんな感じです。
赤が地すべりの範囲で、赤点線は地すべり堆積物が流れた時の流れ残りかも?という範囲です。
黒線のケバケバは地すべり活動でつくられたです。

ちなみにこれは豪雨や雪解け水で動くような一般的な地すべりではなく、地震で動いた地すべりでは?と思います。
詳細なデータは見ていないので断定はできませんが、平成20年岩手宮城内陸地震で動いた「荒砥沢地すべり」の隣の山と雰囲気がソックリなんです。
そこは平成20年の地震では動きませんでしたが、昔の地震で動いたと考えられる山でした。
四尾連湖の地すべりを詳しく研究した論文はなくて、研究発表会の要旨(鈴木ほか2015)によれば、約5万年前に地すべりが動き、四尾連湖ができたと考えられているようです。


断面で見る

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こんな感じで切ってみます。

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スーパー地形アプリの機能を用いて筆者作成

やはり、地震地すべりっぽい断面に見えます。
技術者目線ですみません(;^_^A

171001_四尾連湖地すべり03

上記断面図に筆者一部加筆

地形・地質条件をもとに、こんなカタチを想定しました。
黄色矢印のように地すべりが動き、背後の隙間を埋めるように、頭部が沈下して四尾連湖ができたと考えられます。

地質は玄武岩で基本的には硬い岩石ですが、変質作用が進むと緑泥石(りょくでいせき)という粘土鉱物ができやすく、その緑泥石が地すべりの原因になります。

また海底火山ですので泥岩が挟まっていることも多く、それが「すべり面」になってる可能性もあります。


今は動いてる?

もちろん100%安全とは言えませんが、研究論文が見つからないということは、公共事業で調査されていないと考えられます。
ということは住民の方々が困るような動きはなさそうです。

171001_四尾連湖地すべり04

地すべり地形区分図(防災科学技術研究所:J-SHIS Mapより)

確認してみたら、地すべり地形として国の研究所にも認識はされているようです。

避暑地的な場所みたいで、山荘やロッジ、キャンプ場があるようです。
是非、行ってみて現地調査してみたい!(笑)

以上、お読みいただきありがとうございました。
最後に3D画像をお楽しみください♬

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参考文献

鈴木輝美・苅谷愛彦(2015)御坂山地西部・四尾連湖周辺に形成された地すべり性堰き止め湖沼.日本地球惑星科学連合2015年大会講演要旨.

尾崎正紀・牧本 博・杉山雄一・三村弘二・酒井 彰・久保和也・加藤碩一(2002)20万分の1地質図幅「甲府」、産総研地質調査総合センター.

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