このようにして川はカワる!!:秋田県中北東部高山間地域【災害から身をまもるvol.33-4】
秋田県仙北市の北西部に「昔の地震で動いたかもしれない」地すべり地形があります。その地域を流れる川をよく見ると、さらに面白そうなストーリーが見えてきました!
場所の再確認
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
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今回は上図の⑨地域の中の・・・
仙北市の北西部のあたりです。
地形を見る
では問題の地形を見てみましょう。
地すべり地形の頭部を流れる川!これが気になるんです。
この川は湯渕沢と呼ばれており、中ノ滝と二天ノ滝という2つの滝があります。
川沿いの地形を見ると、中ノ滝から上流は両岸の岩盤が硬いためかV字谷になっています(赤点線)。
しかし、その上流はなだらかな地形を流れています。一般的には、川の上流ほどV字谷が続きそうなイメージなので、少し不思議な感じですよね。
二天ノ滝までは地すべり地形なので、なだらかなのは分かりますが、滝の上流も比較的ゆるやかな流れのように見えます。
スーパー地形アプリの機能で作成した断面図に筆者加筆(縦縮尺5倍)
湯渕沢の断面図をつくってみました。これを見ると、最上流部(二天ノ滝より上流)が一番流れが緩やかで、違和感がありますね。
そもそも二天ノ滝は地すべりで生じた段差によってつくられたと考えると、地すべりが動く前は、果たして湯渕沢は今のような流れだったのか?と、疑問に思えてきませんか?
川の流れが変わった歴史とは
おそらくですが、二天ノ滝の上流域は、地すべりが動く前は逆方向に、下図のように流れていたのではないか?と私は考えました。
そして当時の湯渕沢は中ノ滝上流のV字谷が最上流部だったのではないか?
地すべり範囲は以前は山だったはずなので、おそらく川は流れていなかったと考えられるためです。
北部を拡大するとこんな感じ。
等高線での表現ですみません(;^_^A
さすがにスーパー地形のような図はつくれないので等高線の表現にしましたが、それでも難しいので細部はいい加減です(笑)
地すべり(赤点線)が動く前は山だったので、図の右手側ほど標高が高い状態で、川の流れはこんな感じ。
そして地すべりが動くことにより、赤点線部の川(谷)が埋め立てられ、右側から「標高の高い斜面」がズレてくるので、紫点線のところで堰き止められます。
地形図で見てみましょう。
赤線の範囲で堰き止められたため、水たまりができ、水が逆流。
そして二天ノ滝方面へ水が流れて滝がつくられ、現在の湯渕沢の流れができたのではないでしょうか?
青で囲った地域に平坦地があるのは、水たまりができて泥や砂が溜まったからだと考えられます。実際、北東の平坦地が現在は荒地(地図記号より)であり、湿地に藪が茂っている状態と考えられますので、かつて水たまりだった可能性は高いでしょう。
実際、荒砥沢地すべりでも側部が堰き止められ、水たまりができていました。それは人為的に解消されましたが、遠い昔であれば、このように逆流したかもしれませんね。
ちなみに二天ノ滝はウィキペディアに載っていました。
なかなか立派な滝で、ぜひ行ってみたいですが、道が通じていなくてアクセスは大変なようです(;^_^A
このように大地の歴史をだとっていくと、「動くこと山のごとし」であり、「川の流れは絶える」こともあるのですね(笑)
以上となります。
お読みいただき、ありがとうございました。