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侵食で川の流れが変わる?【都道府県シリーズ第2周:岐阜県 山県市編no.12】

都道府県ごとに地形・地質を見ていく「都道府県シリーズ」の2周目。
岐阜県山県市の中部には、山県市を袈裟懸けに切るように真っすぐな川(武儀川)が流れており、この河川沿いに活断層が走っています。
前回は武儀川の支流の1つに谷中分水界があることに気づき、過去の「河川争奪」の可能性を想定しました。

※前回記事はコチラ👇


河川争奪の原因はをアレコレ考える

武儀川の支流(以下、A川とします)の上流には水量の割に幅の広い谷地形があり、そこに谷中分水界がありました。
そのような地形ができた原因として「河川争奪」が想定されます。
しかし河川争奪の原因は様々。
このA川の場合は、どのような出来事が原因で河川争奪が起こったのでしょうか?
今回は規模が大きく、難しい・・・。

このような時は地形図とニラメッコするのが一番です。

岐阜県山県市武儀川周辺の地形図:スーパー地形より抜粋

私が見る限り、やはり段丘平坦面の侵食が気になります。
この平坦面は標高にそこまで差はなく、概ね約190~170mです。
広く見れば、北東の板取川沿いの平坦面と連続的に繋がっているように見えますよね。
遠い昔、A川が板取川に流れていたと考えれば、平坦面が繋がっているのは頷けます。

岐阜県山県市武儀川支流の地形図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

しかも「下流ほど侵食が進んでいる」のがポイントです。
特に上図の赤丸で囲った地域は、平坦面が侵食で細切れになっていますよね。
一般的に河川侵食は上流部ほど侵食力が強くなります。
上流域は山間地域であるため、川の流れが急流になるためです。

ただしA川の場合、もともと平坦面である谷を流れているため、上流であっても流れは緩やかです。
であれば単純に、水が集まる下流域の方が侵食力が強いとも考えられそうです。

どちらが妥当か?
はとりあえず置いておき「下流ほど侵食している」だけに着目すると「後退侵食」が頭に浮かんできます。
後退侵食とは、普段は水が流れていない谷の源頭部が、降雨によって侵食されることで、谷が後ろ(上流側)へ拡大する現象のことを言います。
(※後退侵食については、今後の日曜地質学で図入りで説明します)

「後退侵食説」で深掘ってみる

と言うことで、まずは「後退侵食説」で考察を進めてみましょう。

後退侵食で河川争奪しそうな場所の具体例

後退侵食をキーワードとして考察してみると、ある場所を思い出します。

岐阜県山県市奥峠付近の地形図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

ここです。
武儀川沿いの奥峠付近。左横ずれの証拠がある場所です。
この「B谷」で後退侵食が起きれば、A沢とつながって河川争奪が起こりますよね。
ただしこの場合、A沢もB谷も武儀川へ流れているので合流はスムーズですが、今回着目している支流は、おそらくもともとは逆に流れています。
そのようなパターンはありうるのでしょうか?

板取川の支流は案外近かった

A川がかつて板取川に流れていたのであれば、近くに板取川の支流の上流域はあるのでしょうか?
無ければこの説が揺らぎかねないな・・と思っていたら、案外とあっさり見つかりました(;^_^A

岐阜県山県市 武儀川周辺の地形図:スーパー地形より抜粋

右上が板取川で左下が武儀川。
板取川からたどってみると、武儀川の近くにまで達している支流が見えませんか?

武儀川・板取川周辺地形図:スーパー地形画像に筆者一部加筆

青線が板取川の支流です。
上流域は案外と武儀川に近いところまでに迫っています。
一方、赤線は今は武儀川へ注いでいますが、A側が板取川へ流れていた時には、青線と同じく板取川の支流でした。
そう考えると、かたちが似ていますよね。3本の支流は上流部が右に曲がっています。
そしてそのような目で見ると、曲がっているあたりには直線状の地形が見えるような気がしてきました。

武儀川・板取川周辺地形図②:スーパー地形画像に筆者一部加筆

この黒点線です。
結論から言ってしまうと、地質図ではここに断層は図示されていません

武儀川・板取川周辺の地質図:スーパー地形より抜粋

武儀川断層はもう少し南を通っていました。
しかしほぼ平行した断層が2条並ぶことは他にも良く見られますし、明確な証拠が見つからないため地質図に図示されていないだけで、もしかしたら断層があるのかもしれません。

いずれにせよ、このような支流は断層の左横ずれ運動の進行とともに、上流部が武儀川に近接したと考えられます。

次回以降で詳しく考察しましょう。

お読みいただき、ありがとうございました。

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