崖と崖じゃないところは何が違う?:佐賀県北西部平坦~中山間地域【災害から身をまもるvol.27】
佐賀県の北西部平坦~中山間地域は約720万年~258万年前に噴火した玄武岩に覆われた溶岩台地でした。
その東にある南北方向のまっすぐな崖をきっかけに、この地域のある秘密が分かりましたので、今回はそのお話です。
場所は?
はい!再確認しましょう。
北西部平坦~中山間地域は上図の⑤です。
玄海町の全域と、唐津市・伊万里市それぞれの一部地域です。
地形を見る
では行ってみましょう~。
ある程度同じ標高(同じ色)が広がっていますが、台地内部は細かい凹凸は多そうですね。
そして、これなんですよね~。気になる崖。
南北にまっすぐと約6kmにわたってのびています。
立派な崖で、目立ちますよね。
河川に沿って平坦地が出来ていますし、水田があって人が住んでいます。
でも良く見てみると台地からの水が滝や急流となって流れ込み、あちこち浸食しています。そして土砂が流下して扇状地も出来ています。
北の方も同じですね。
そしてやはり、扇状地はことごとく水田になっています。
いやぁ、見事な崖です。
この落差は200mくらいありますので、崖の向こうの台地はちょっとした異世界ですよね。
台地ですから周囲にはこのような崖は多いでしょうね。
・・・と思いきや、パッと見て目立つような真っすぐな崖、案外と少ないんですよね。台地の縁は案外とガチャガチャと入り組んでいます。
同じ台地の縁なのに、何が違うんでしょう?
他の場所は?
さっそく見てみましょう。
西の方を拡大してみました。
崖になっていない台地の縁はどんな感じでしょう?
もちろん崖になっている場所も沢山ありますが、冒頭の地域のような長くのびた崖はないですね。
どちらかと言うと、沢や尾根が細かく入り組んだ地形が多い。
目立つ崖はここくらい。対岸と何が違うのか??
あ・・ちょっと分かってきました。
崖の対岸斜面は農村地帯でいわゆる里山ですね。
そして崖の裏の北向き斜面も里山的な場所です。
これ、重要な手がかりですよ。
さらにアップです。
やっぱり、そうか!!
どうでしょう?分かりましたか?
ここもですね。
やっぱり!!
ここはザッと見て2箇所あります。
ここはだいぶ進んでいますね。
ここもだなぁ・・。
犯人は??
目立つ大きな崖が出来づらく、小刻みな地形をつくった原因はズバリ!
地すべりです。
どうも、この周辺は地すべりだらけです。
細かく見るとキリがなさそうなので、いくつかお見せします。
地すべり地形については、こちらを参照ください。
以下、もと地形図と図示したものを並べるので見比べて見てください。
だいたいで描いています。
こんな感じ。
ここは以前にだいぶ動いたらしく、もとの山のカタチは残っていません。
西の地域はだいぶ小刻みな地形ですよね。
東の地すべりよりも、浸食がさらに進んで小さい地すべりや土砂崩れがアチコチで起きているような雰囲気です。
ここの場合は、まだ山のカタチが残った状態ですね。
なんで?
そう、変ですよね。
同じ台地でも、地すべりが多い場所とそうじゃない場所の違いは何なのでしょう?
理由は簡単でした。
目立つ崖のうち、東の崖は花崗岩(ピンク)・花崗閃緑岩(濃いピンク)の上に直接、玄武岩(薄紫)が載っています。
一方、地すべりの箇所は玄武岩の下は砂岩(黄色)です。
ちなみにこの砂岩、この地質図では一括で砂岩になってますが、細かく地層が分かれ、泥岩も入っています。泥岩は非常に滑りやすいのです。
北西の崖は、地層の傾きが逆(北~北西)であるため、地すべりにならず崖として残りました。
今回は以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。
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