一歩間違えればだれでも孤独に陥る
今日、ちょっと危機感をおぼえたというか、ややヒヤリとしたことがあるので書いておきたい。大多数の人、とりわけ中高年男性は、他人ごとではないはずだ。
「あなたは社会との接点がどれくらいありますか?」という話。
子ども部屋おじさん
ぼくは怪談が割と好きなんだけど、発信はしていないので、たんなる怪談好きの一般人である。
それで、興味のない人も多いだろうから簡単に説明しておくと、怪談の世界ではここ10年くらい、30代の若手で才能のある人が続々と出てきた。
そして、その人々が今40代に差し掛かっているのだが、その一人に田中俊之さんという人がいる。
この人は2013年まで一般人だった人で、単なる一般人というより、神戸の実家に寄生している職業不詳の子ども部屋おじさんみたいな人だったそうだ。
それが、関西テレビの怪談グランプリという番組で優勝して一躍注目を集めて人生が変わった人である。以後現在まで「怪談コレクター 田中俊之」として本も出すし、あちこちでライブ活動をするし、YouTubeも人気だ。
「不思議大百科」というYouTubeチャンネルを、同じく若手のホープといえる下駄華緒(げたはなお)さんと毎日更新している。
この下駄さんも、ミュージシャンで元火葬場職員という異色の経歴の持ち主だが、見てもらえばわかるけど才能あふれる人で、ここ10年でどんどん売れてきた。トークを聴いてもらえば、二人とも運が良かっただけではすまなされない実力者だとわかる。
(田中さんが中学時代に交通事故で死にかけた話をしています)。
元火葬場職員と子ども部屋おじさんがやっているとは思えないテンポのいいトークで、そこそこの芸人さんでもこうはいかなんじゃないかと思わせる。そういうわけで今はノリに乗っている田中さんだけど、別なYouTubeチャンネルでは「今の人生が信じられない」と語っていた。
思い出作りのつもりでテレビに出たら一躍人気者になってしまい、それで今だに食えているという現実が信じられないのだそうである。
もし、あのとき怪談グランプリにでていなければ、43歳の今も、実家で、お母さんの財布から金をくすねてなんとか生きていただろう、と言い、
としみじみ語っていた。
(22分あたりです)。
こういう風にシビアに自分を見つめられるのは、マジで一歩間違えれば「子供部屋おじさん」で終わっていたという自覚があるからだと思う。
そして、これを聞いて僕自身ヒヤッとしたというか、改めて考えてみると、ぼくも一歩間違えれば子ども部屋おじさんであり、社会との接点は、かなりあやうい。
でも、よくよく考えてみればだれでも危ういのである。
一歩間違えればだれでも孤独に陥る
たとえば、最近、有名な双子のおかまの有名タレントさんが、認知症が進行して行方不明になり、万引きで捕まったというニュースがあった。現在は、二人とも介護施設に入っているのだそうである。
そして、この二人が行方不明になったそもそものきっかけは、事務所を閉めて芸能生活を引退し、身寄りがお互いしかおらず、老々介護になって共倒れしたからだという。つまり社会との接点がなくなったからである。
とはいえ、日本中で彼らのことを知らない人はいない。それぞれがファッションと映画評論で一流になり、ファッションのことは知らないけど、すくなくとも映画の世界では相当の大御所だった。人脈も多彩だったはずだし、稲川淳二さんとも親交があり、ライブでもよく二人のエピソードが出てきた。
また、15年ほど前、ぼくの母がまだ生きていた頃、はとバスツアーに参加したんだけど、お台場のフジテレビではピーコさんが出てきて案内してくれたのだそうである。
これだけ世に知られ、庶民との接点もたくさんあったような人ですらちょっとまちがえると孤独におちいってこうなるのだとすれば、ぼくなどひとたまりもない。
仕事の付き合いはあてにならない
男性は、退職したとたんに奥さん以外に社会とのつながりがなくなる人が多いが、一方で、奥様の方は、いずれは旦那と別居して、気の合う仲間でシェアハウスに住みたいなどと言う人も増えている。
つまり、どんだけバリバリ働いているように見えている男性でも、元気なうちはいいが、「老いてからの社会との接点」の問題は他人事じゃないのだ。
終生の友人と呼べるような人は、そうそう見つかるものではないし、また見つけようという打算で見つかるものでもない。どうしたらいいのかわからないけど、なめてかからないことだ。リアルでの人との付き合いをコツコツと大切にしていこう。とりあえず今度の土曜は飲み会に出よう、などと思う。