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ひとり親の恋、始まるか
愛する文具を眺める。それだけで吐息が漏れる、地味で陰気なシングルマザー。物語はいつの間にか始まっていた。
マッチングアプリ(以後アプリ)を始めたのは夏。これまで3人の方とリアルでお会いした。うち1人、いいなと思っていた人がいて。3回ほどデートした。しかしお相手から「このままだと弱った時に甘えすぎてしまう」と言われ連絡をブロックされる。51歳バツ2、会社社長だった。弱った時に甘えることの何が悪いのか私にはわからなかったが。思うに、社長さんだからだろう。強くいなければという観念があったのかもしれない。離婚という大きな別れを経験した身の上、この別れが自分を苦しめることはなかった。「次に行こう」。まだ夏の終わりのことだった。
それ以降、仕事が忙しくなった。アプリは一旦脇へ。来た「いいね」のチェックはしてたけど、まだ恋は早かったかなと。出会いから意識は遠ざかった。そんなある日。10月初旬。ピコンとやってきたのが、10個も年下のカレだった。高年収、高身長、医療従事者。詐欺師か何かですか?と疑い深い私は思う。メッセージはタダだしな。挨拶から始めてみる。すると、意外と共通点がある。お互い絵文字は使わないし、愛想もないけど。気負いのないやりとりが心地よい。会いたい、会えない、残念だね、また今度。こんなやりとりが続いても、彼は誘うことを諦めないでいてくれた。その心意気は何処から?結果、あまりにも会えないため「電話しましょう」と提案される。いや、そうだよね。なんで早くそうしなかったのか。マッチングから3週間は経ってる。こんな間の抜けたやりとりもクスッと笑えた。
昨晩、初めて彼の声を聞いた。とても耳触りのいいトーン。こんな声で内診されたら惚れてまうやろ。妄想が1人走りする。彼の理想は「素朴な年上の女性」だったそう。私のプロフィールのどこに素朴さを感じたのか。聞いてみた。だが、「言語化できない」と。おーそうか、そうなのか!お医者さんのカレには「なんとなく」という感性があるのだ。妙にホッとしてしまった。私は感性の人間で。言いようのないモワッとした形なきものが好き。「言語化できない」「なんとなくそう思う」を知っている男性はそれだけで色気だ。言葉を欲するのが女性の特徴と言われるが「うまく言えないけど」という己の感性を信じて相手に向き合える男性なんて、もうたまらない。要は、第六感、直感をカレは信じているのだ。その点、正直私は自分の直感をあてにしていない。大抵間違っていることが多いし、どちらかというと男性の直感の方が案外的を得てるんじゃないかな、とさえ思うから。ちなみに、今まで出会ってきた男性はどこか格好つけ。ハキハキ喋ることを美徳としている人が多かった。こちらからすると疲れる。もう辟易していた。
で、カレもカレで、仕事がそういうスペックを求められる分、プライベートは3大欲求に忠実に。まったりできる人。つまりそういう意味で素朴な人を求めていたんだね。(ここまで書いてやっと素朴の意味がわかったかも)
とにかく、カレの「言語化できない」は声の次にキュンときた。即日ライン交換。こんな時に思い出してしまうのが元夫だ。なんでも言語化して答えないと不機嫌になる人だったから。それを思うと「なんとなく」が通じるだけでカレとのコミュニケーションは気楽だ。今日、相変わらずメッセージの返事はすんごい遅いしそっけないけど。それもまたいい。お互い忙しいので。
それと、さっきアプリを開いたら彼とのメッセージは消えていた。「1ヶ月だけ」のつもりで有料登録していたそうだから。これはもう、私と「始まった」から終えた感があるよね?そうよね?笑
もう恋なんてしない、なんて思っても人は懲りずに恋しちゃうんだな。始まりは終わりの始まりだけど。今はこの味を噛み締めていたい。は〜〜〜🍑