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イギリスのNHSは立ち直れるのか?来春に「10か年計画」を発表【全文無料】

パンデミックにより、ほとんどの国で、医療サービスに関する課題が浮き彫りになったかと思います。

イギリスではその前からNHS(国民保健サービス)は予約が取りづらかったり、緊急でない治療や手術の待ち時間が長すぎたりとさまざまな課題があったのが、パンデミックでさらに悪化。地域によっては、救急車で到着しても診察を受けるのに何時間もかかったりしたそう。なんとも恐ろしい話です😱


不満の高まるなか、医療従事者と国民からアイデアを募る

現在のNHSがどれだけの不満を招いているか、データを見てみましょう。2010年にはイギリス国民の70%がNHSに関して「非常に/かなり満足している」と回答していたのに対して、2023年にはわずか23%。半数を超える52%が「非常に/かなり不満」と述べているのです。

イギリスでは今年7月4日の総選挙で14年ぶりの政権交代が起こり、キア・スターマー首相率いる労働党が、NHSを復活させるという難題に挑むことになりました。

ともあれ、潤沢な資金があるわけではなし。かと言って国民が納得する計画なしに保険料を大幅に引き上げることもできません。

そんなわけで苦肉の策というか、医療従事者と一般市民に対して、医療サービスに関する体験やアイデアを共有するよう求めることに。「change.nhs.uk」またはNHSアプリを通じて、来年初めまで意見を提出することができます。

たしかに、状況を把握することからしか改革は始められないのでしょう。意見を聞くこと自体にガス抜きの効果もあるかもしれませんね。しかし、広範囲に意見を集めてもそれをどこまで生かせるのかはまったく見通せません。結局は、緊急性の高いところから手をつけるしかないのかな💦

病気の予防にも尽力?

労働党は、根本的な問題として病気の予防にも力を入れたいと考えているようです。現在検討されているのは、糖尿病や高血圧の患者にスマートウォッチなどのウェアラブルツールを配布し、健康状態をモニターすることです。

このような考え方には個人的に大賛成。喫煙、肥満、アルコール依存など、深刻な病気を引き起こす可能性がある習慣のある人が減れば、NHSの負担が軽くなるだけではなく、働ける人が増えて社会が潤います。

ただ、口で言うほど簡単な話ではないのはたしか。どのような形で予防を支援するが有効かは、専門家の意見やデータなしには見極められないでしょう。

NHSアプリで全医療データにアクセスできるように

NHSの医療従事者は、システムを通じて、各患者の医療データにある程度はアクセスできます。しかし、治療記録や検査結果、医師からの手紙は、それぞれの病院で個別に管理されていることも少なくありません。たとえば救急車で運ばれてきても、目の前の医療従事者が必ずしも患者データをすべて見られるわけではありませんでした。

これはたしかに非効率。したがって「アナログからデジタルへ」を掲げ、医療従事者がすべてのデータを閲覧できるようにすると共に、患者自身もNHSアプリを通じて自分のデータにアクセスできるようにしようという方向性で話が進んでいます。ただ、情報漏洩のリスクなどに関する懸念も囁かれています。

まとめ:来春に政府が「10か年計画」を発表予定

最初にご紹介したアイデア募集も含め、さまざまな検討を経た、NHSを立て直すための「10か年計画」が来春に発表される見込みです。

実際にどのようなロードマップが提示されるのかは、まだはっきりとはわかりませんが、上述のような内容は盛り込まれることになりそう。

イギリスはほかにもさまざまな問題を抱えているとはいえ、NHSは最大の課題のひとつなので、これにどう対処するかで現与党である労働党の手腕がジャッジされることとなるでしょう。

そしてもちろん、わたしを含めたイギリス永住者にとっても医療サービスの話は重要!10年後に「いやー、あの頃のNHSはまじでヤバかったよね」と、笑い話にできることを願ってやみません☺️

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