【独り身レズビアン放浪記】理想の先に女の子がいてほしい
キャプテン・マーベルからMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)にどハマりしている話は以前の記事に書きましたが、最近こんなツイートを見かけて、私は大興奮してしまいました。
見た瞬間、うわー!これ、小さい頃私が欲しかったやつだ!と思いました。
特撮ヒーローのおもちゃで似たようなものは、私の子ども時代にもきっとあったと思います。
でもそのヒーローたちは多くが男性だった。紅一点的に加わっている女性ヒーローのおもちゃは、マイナーでなかなか出回っていなかったし、何より紅一点のヒーローは、ヒーローチームの中でも必ず弱い方でした。
(今の特撮ヒーローものでどうなっているかは存じていません。もしかしたらもっと先進的になっているかも!)
結果、私はセーラームーンのおもちゃを欲しがる子になりました。
私自身は、フェミニン系やファンシー系のデザインがけして嫌いではなかったので、そのことに不満は抱いていませんでした。
でも今、キャプテン・マーベルのおもちゃを着けている女の子を見た時、「子どもの頃にこれがあったら絶対欲しかった!」という確信めいた思いとともに心が湧き立ったのです。
たぶん幼い頃の私は、視覚的デザインよりも文脈にこだわるタイプの子どもだったのかもしれません。
私の憧れの対象は、「女の子である私のためのもの」と思えるものでなければならなかったのです。
特撮ヒーローも2歳上の兄と一緒に楽しんで見ていたけれど、私が応援するのはいつも紅一点の女性ヒーローで、でもその描写はいつも弱々しい。
それまでは、魔法でご近所トラブルを解決するようなヒロインしかいなかった女児アニメ界に現れた「美少女戦士」であるセーラームーンに、夢中になるのは当然の流れだったでしょう。
女の子だって男性ヒーローに憧れていい!それは全くその通りです。
でも、まだニチアサやセーラームーンを楽しみに見ていたくらいの年齢の頃にもすでに、私は「このヒーローたちは私と同じ女の子じゃないし、私のためにメッセージを送ってない」と確かに感じ取っていました。
デザインが女の子向けだからセーラームーンが好きだったんじゃない。ちゃんと女の子の方を向いている、女の子が憧れるための、強いヒーロー像だったから好きだったんだ。
キャプテン・マーベルのおもちゃの写真に、一気に謎が解けたような気がしました。
おもちゃ業界や児童向け番組の制作現場では、「やっぱり女の子にはファンシーなデザインが好まれるし、男の子にはロボットや武器や車が好まれる」と言われているようですが、私自身に関しては「デザインで選んでなかったな」と今になって発見しています。
セーラームーンのティアラも、キャプテン・マーベルのグローブも、どちらも好き。大事なのはその持ち主が女性の強いヒーローであることです。
私の理想の先にいるのは、女の子であってほしかったんです。
もちろんデザインにこだわりがあって視覚イメージで好きなものを選ぶ子どももいるだろうし、私とは違うアイデンティティから異性のヒーローに自分の理想を重ねる子どももいると思います。
何が正解というものはないけれど、きっと私と同じように、キラキラしたファンシーなデザインかどうかよりも「女の子である自分自身のためのヒーローが存在している」という事実を重要視するタイプの女子は、今も昔もけっこういるんじゃないかと思うのです。
話は変わりますが、最近、若い女性芸能人とかアイドルにも、カジュアルにフェミニズムが浸透していることに驚くことがあります。
けっこう前に、Perfumeののっちが愛読書に雨宮まみさんの『女の子よ銃を取れ』を挙げていて驚いたことがありましたが、雨宮まみさんとかジェーン・スーさんとか、瀧波ユカリさんとかが、わりと今時のカルチャーに敏感な女の子たちに身近な存在になってるんですよね。
しかし、同時に彼女たちは、東村アキコさんの漫画も読んでたりするし、山﨑ケイさんの『ちょうどいいブスのススメ』とかに共感したりもするんですよ。(のっちがそうかどうかはわからないですよ!)
なんていうかみんな、「女の子のための言葉」がほしいんだと思うんです。
元気で、あけすけに言いたいことが言えて、物怖じしない女の子のロールモデルを、本当に涙ぐましいほどに求めている女の子たちの姿がそこにあるんじゃないかと。
実際、「男の人をうまく手のひらで転がして(という男性への忖度をして)したたかに生きよう」みたいなメッセージを発信している女性も、本人は「女の子のための言葉」だと思っているのだと思います。
でも、「したたかに生きている」という実感は、自分のありのままの尊厳を肯定してはくれない。
本物の女の子のための言葉は何なのか。
キャプテン・マーベルのグローブみたいなものを、セーラームーンのティアラみたいなものを、私は女の子たちに手渡したい。
女の子のための女の子の理想が、もっと豊かであってほしいと願うのです。
文・宇井彩野
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