けもなれ第1話で感じた辛さと希望
かわいいガッキーが出てるのに、大好きな野木亜紀子さんの脚本なのに、放送前からずいぶんと楽しみにしてたのに。
「獣になれない私たち」の第一話を観て、途中で苦しくなって観るのを止めてしまった。
プライベートでも仕事でも、ガッキー演じる主人公の晶(あきら)は不遇だ。結婚を意識する年齢なのに、煮え切らない態度の彼氏。過去には父からのDV経験があるし、母とは絶縁中。
個人的に一番苦しい気持ちになったのは、職場の描写だった。怒鳴り散らす上司に、責任転嫁する同僚。誰より働いてるはずなのに、仕事は減るどころか増えるいっぽうで苦しそうな晶。
怒鳴り散らす社長によく似た人を実生活で知っているので、そのリアルさに嫌な記憶が蘇ってきて思わず冷や汗をかいてしまった。
逃げ恥のようなほんわかした空気のドラマだと思い込んでいたので同居人と一緒に観てたのだけど、耐えられなくなってチャンネルを変えてしまった。
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でも一晩明けて、やっぱり続きを観ることにした。
だって野木さんの脚本だもの。逃げ恥でもアンナチュラルでも、野木さんのつむぐ言葉に惚れたんだもの。野木さんの届けるメッセージに勇気をもらったもの。野木さんを信じろ私・・・!!
というわけで最後まで観てみた。そしたら、最後の10分でこのドラマのイメージがガラリと変わった。
今までずっとオフィスカジュアルのお手本みたいな格好をしていた晶が、ごついヒールのブーツにサングラス姿で出勤する。これだけ聞くとシュールなように聞こえるかもしれないけど、観ていて涙が出た。
ガッキーのサングラス姿でまさか泣いてしまうなんて、思ってもみなかった。
着たい服を着る。単純なようでいて、案外難しいことだ。特に普段から人の目を気にして本音をそっと心にしまうタイプの人にとっては。
社長の部屋には「永遠の処女」と呼ばれる原節子の写真が飾ってある。これはガッキーのパブリックイメージの比喩と思っていいだろう。永遠に清純で、おだやかで、誰からも愛されるパーフェクトな女性、ガッキー。
でもこのドラマは、そのイメージを壊してみせた。
「ガッキーはいつもにこやかでパーフェクト」というイメージが視聴者の中にガッツリ根付いているからこそ、サングラスにブーツ姿の晶が新しく見える。
この姿を「社長に対する反抗」と受け取った人もいるようだけど、それは違うだろう。好きな服、着たっていいんだよというメッセージだ。もう少し大きい言い方をするなら、息苦しさを感じながら生きている現代人に対して、「もっと自分を大事にしてあげて」というエールだ。
このドラマの痛快なスタートに拍手を送りたい。観るのが辛いことには変わりないけれど、たぶんこのドラマは応援歌になってくれるはずだ。
というわけで、来週からは、リアタイで観ます。