「はじめまして」でも笑顔を引き出す、カップル撮影の魔法のことば
ここ数か月ほど、週末カメラマンとしてカップルや家族を撮影しています。
ありがたいことに、私の撮った写真を見て「いい笑顔を撮ってる」という感想をいただくことが増えてきました。
笑顔を引き出す・・・というと、どんなことを想像しますか?
私はずっと、陽気で人好きでおしゃべり上手な人のことを想像していました。
noteにはちょくちょく書いてますが、私は話すのが得意なタイプではありません。気の利いた冗談なんて言えないし、自分自身があんまりずかずか踏み込まれたくない性格なだけに、人との距離を詰めるのも得意じゃない。
そんな私でも、撮影を重ねてやっと「笑顔」を引き出す方法を見つけたのでご紹介します。
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まず、第1段階として言うこと。
「無理して笑わなくていいです」
多くの方は、こう言うと少しほっとしてくれます。そして表情がちょっとだけやわらかくなる。
真顔なら真顔でいいんです。
よく「笑顔は最高」なんて言いますけど、それは内面からこぼれちゃった笑顔のこと。無理して口角だけ上げても、目じりは下がらないんですよね。
それに私自身も、カメラを向けられたときに「笑って~!」って言われるのがほんとうに苦手で。
子どもの頃、親戚で集まったときに「ぽんずちゃん笑顔が足りないわよ~~!!」なんて言われて、よくむくれていました。おもしろくもないのに誰が笑えるかい、と。だからアルバムの中の私は、不満げにこっちをにらみつけています。笑
ただそうは言いつつも、カメラマンとして撮る側にまわる以上、やっぱり笑った画もほしいというのが本音。
そこで、このマジックワードを使います。
それは・・・
「近づいてください」
これだけです。
え、こんなこと?と拍子抜けするかもしれません。
でもこれが、意外と効くんです。
(近づくのはカメラじゃないですよ!お互いに、です。)
「もすこし、近づいてください」
「あとお互い5ミリずつ、顔と顔を近づけてみてください」
こんな感じで、顔と顔の物理的な距離をなくしてもらいます。
いくら恋人同士でも、人前で顔がくっつきそうなほど近づくことってないんですよね。特に日本人ってシャイな人が多いですから、人前じゃなくてもなかなか至近距離でまじまじと相手の顔を見る機会なんてない。
だからむしろ、ぎゅーーーっと近づくと、笑わずにいるほうが難しいんです。
ほっぺたがくっつくくらい、おでこがぶつかるくらい、近づいてもらう。
そうすると、自然な笑顔がこぼれます。私は笑わせるんじゃなくて、その、こぼれた笑顔をただカメラをとおして掬い取るだけ。
これは余談ですけど、撮影のときじゃなくても恋人や家族同士で有効なコミュニケーションかなって思ってます。ハグのかわりに、ほっぺた、むぎゅっとくっつけてみてください。
たぶんちょっと笑っちゃうと思う。
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カメラマンとしてお仕事で撮るときの、私のスタンスの話も少しだけお話しさせてください。
よく、「カメラマンは被写体の恋人のつもりで撮れ」という指南を見かけます。それはそれで正しくて有効だと思っています。
だけど私の場合は、先にもお話ししたように心の距離を詰めるのがちょっと苦手。初対面の人と「恋人のように」濃密なお話をすると考えただけで、緊張して胃がキュッと縮むような気持ちになってしまう。
だから、目指しているのは被写体さんの恋人ではなく「ついついのろけたくなるようなバーの店員さん」。
ちょっと背伸びして訪れたバーで、「お似合いのおふたりですね」なんて言われて嬉しくなって、話すつもりもなかったのに「じつは今日、記念日なんです」なんて言っちゃったりして。そんな経験はありませんか?
イメージとしてはディズニーのキャストさんも近いかもしれません。お揃いの耳をつけてるときに「かわいいですね」なんて言われて、隣を見るとふだんはクールな彼がにこにこしてたりする。
私のもとを訪ねてきてくれた二人にとって、そんな立ち位置になりたい。
写真という成果物だけでなく、「安心してのろけられる時間」も提供できたらなぁって思っています。
だから、いっぱいのろけてください。
もちろん、話したくないことを話す必要はないです。
でも、普段なかなか顔を見て言わないようなことや、口に出すと照れちゃうようなこと、話してみると意外と楽しかったりします。「かわいいね」とか「今日の服に合ってるよ」とか、そんなカジュアルなことでもいいと思います。
撮影はだいたい午前中のことが多いのですが、撮影のあと、ゲストの二人がいつもよりちょっぴり幸せな気持ちでデートの続きを楽しんでくれたらいいなぁ。そんなふうに思ってます。
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カメラ目線のつくり笑顔じゃなくて、はにかんでたり、照れて下を向いてたり、お互いを見つめる横顔だったり、爆笑していたり。顔は見えなくても、しっかりとつないだ手だったり。
そんな等身大の姿を写真に残しておきたいと思ったら、ぜひ声をかけてください。お手伝いします。
サポートいただけたら、旅に出たときのごはん代にさせていただきます。旅のあいだの栄養状態が、ちょっと良くなります。