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大っぴらすぎる「出産ハイ」に違和感 子どもを産めるって当たり前じゃない

昨夜、色々と頭をぐるぐるさせながら眠りにつき、朝4時に目が覚めた瞬間にもこの思いで頭が埋め尽くされていたので、書き留めておこうと思った。

子どもを産めるって本当に奇跡で、当たり前のことじゃない。


だからこそ幸せで、子どもを授かった本人たちには幸せであってほしいけど、あまりに大っぴらにハイになっている人たちを見ると、引いてしまう。

それが当たり前じゃない人も、たくさんいるから。


私も遺伝子的に自然妊娠できない身体だからそう思うのかなぁ、と思う。


昨夜、日本のトップYouTuberであるHIKAKIN氏が、自身と自身の奥様の間に授かった子どもに関する、氏曰く「ドキュメンタリー動画」を投稿していた。

HIKAKIN氏のことは好きだが、私はこの動画を観ていて終始、違和感しか感じられなかった。
適切な言葉は見つからないのだが、一体何を見せられているんだろう…?という気持ちだった、というのが、一番近い表現になるのではないかと思う。

そもそも、動画を観るまでの入り (意気込み、心持ち) にも問題があったのだと思う。


HIKAKIN氏は、該当動画を投稿するちょうど一週間前にあたる7月25日、
18秒間、無音で文章だけが流れる予告動画のようなものを投稿していた。

その文面は、

"ここ数週間、人生を見つめ直す時間にしていました。
動画が全然アップロードできず申し訳ありません。

8月1日(木)にHikakinTVにて、
僕の人生に関わる大切な報告があります。
よろしくお願いします。

HIKAKIN"

というものだった。


どこか不穏な空気感を醸し出しているこれに対し、「もしかして引退…?」「何があったの?」と、コメント欄で心配する視聴者の声も少なくなかった。

また、昨夜投稿された例の動画の枠ができた瞬間からも (真っ白い背景に真っ黒なでかい文字で「ご報告」という文字だけが書かれたサムネが掲載されている時間が続いていた)、視聴者のその不安をどこか煽るような雰囲気は変わらなかった。

「ご懐妊とかなら明るく発表するはずだし、本当に何があったんだろう…?」という主旨のコメントも多数みかけた。


そうして蓋を開けたら、ご出産の報告動画だったのだ。


もちろん、「大切なご報告」という言葉を見て、最近結婚したHIKAKIN氏 (の奥様) が妊娠・出産というのは、頭をよぎらなかったわけではない。
むしろ、きっとそれに関わることであろうと思っていた。

ただ、【妊娠または出産をしたから】、【◯◯という決意をしました】
という動画なのだと思っていた。
(例えば、「子どもが生まれて、子育てとしっかり向き合いたいから、1年間動画投稿をお休みすることにしました」など)

さらには、あそこまで不穏な空気感を作り出している以上、「引退します」という内容なのではないかもとも、私も考えた。

特段ファンなわけではないけれど、日本のトップYouTuberであるHIKAKIN氏の、不穏な雰囲気の予告動画。

何があったんだろう、しっかり見届けねば、という思いのもと、久しぶりにプレミア公開の待機までして、動画を最初から最後まで視聴した。

始めは、「やはりご出産されたのかぁ、めでたいなぁ」という気持ちで観ていた。
そして、「出産したから、◯◯することにした」の部分の報告を待ちながら、動画を観続けた。

しかし動画は、HIKAKIN氏がずっと嬉しそうにお子さんを抱いて喋ったり、育児の一部を切り取った様子などが流れ、進んでいく。


そしてついに、動画は終わってしまった。

HIKAKIN氏の報告は、【パパになったから、もっと仕事を頑張る】というものだったのだ。

拍子抜けしてしまった。


「サムネ詐欺」なんていう、「ご報告」と題してその重い言葉にそぐわない内容の報告をする「ご報告動画」を作ることを指す言葉が存在するけれど、
最近はそれが一種の動画ジャンルというか、嫌悪されながらも一つの文化的なものにもなりつつある中で、
ある意味、こんなにもしっかりとした、これぞ "真の" というべき「サムネ詐欺」に遭ったと感じたのは、久しぶりというか、むしろ初めてだったかもしれない。

論点が少しズレてしまったかもしれないが、それほど今回の動画の内容、及び報告方法には、驚愕してしまったのだ。

そして、この私の動画視聴体験の経緯についても細かく書いたのは、
HIKAKIN氏は、視聴者の不安を煽るような意図は、なかったのではないか…?と、感じたからである。

ここで、この記事のタイトル、文章の冒頭に繋がる。
HIKAKIN氏はいわゆる、「出産ハイ」状態にあるから、こういう事態になったのではないかと感じている。

始めにも書いたが、出産は本当におめでたいことで、結果として「パパになったからさらにお仕事を頑張ります」という平和な報告で、本当によかった。

でも私は、こういった出来事を一つのドキュメンタリーのような形の見せ方で、それも変なドキドキをさせられたのちに見せられるのは、あまり好きじゃないと思った。
見せている相手が不特定多数、それも人数が大人数になればなるほど、違和感を覚えてしまう。

これが、影響力の高いインフルエンサーとして、出産や産後ケア施設の紹介があったり、動画として別の付加価値があったのなら、わかるのだ。
(最後におすすめのベビー用品紹介みたいなものはあったけど、使っている様子等が分かりやすく紹介されているわけではなく、本人もオマケという立ち位置で制作していた)


あの動画のメッセージはあくまで、「子どもが生まれて、僕はこんなにも幸せです」が主体であった。


全ての人々に気を遣って生きるなんて、そんなことは無理だと思う。


でも、「妊娠」「出産」というのは、誰にとっても当たり前に起きることじゃない。
例えば「結婚」とも違って、自分でするかしないかを選べるものではない。
子どもが産まれることの幸せは、誰もが感じられる幸せではないのだ。

それを、「こんなにも幸せだ!」と見せつけられるのは、私はどうもダメだ。
また、先述した動画が公開されるまでの経緯 (HIKAKIN氏の今回の全体的な報告の仕方)、
そして最近は不妊症を抱える人たちなどについても一昔前より広く認知されつつある中で、日本のトップYouTuberとしてそういったことに対する配慮のなさにも、がっかりしてしまったんだと思う。


私がいつも拝聴させていただいている美容系YouTuberの関根りささんは、治療方法が存在しない難病を抱えている長男さんを大切に育てている。
そんな想像を絶する大変さの中、自身と夫のジョージさんのお二方ともが遺伝子的に健康的な乳児を妊娠しにくい体質であるということが分かり、
様々な苦悩を乗り越えた末に、二人目のお子さんもほしいという決断に至り、渡米して体外受精の治療を現在行なっている。

その様子を彼女はあくまで明るく、そして自分と少しでも似た境遇にいる人の役に立とうと、一生懸命ファクトチェックしながら自身の体験と詳しい情報を発信してくれている。
ご本人の本件に関する向き合い方や振る舞いもそうだが、編集している動画も重苦しさを感じさせないように工夫していることが伝わってくる。
本当は辛いだろうに、強く生きている関根りささんの姿にいつも励まされている。


ちょうど現在進行形でこういった人の記録も追っていた中、今回のHIKAKIN氏の「僕、幸せです!」という動画を観てしまったからこそ、余計に強烈な違和感を覚えてしまったのだと思う。

繰り返しだけど、観ている全ての人の全ての事情に考慮した発信をするなんて、到底無理なことだと思う。
ただ、HIKAKIN氏の様子はまさに出産ハイ状態の人のそれで、日本一のチャンネル登録者数を抱える一流の彼でも、このような動画を作ろう、世界に見せようという発想に至るんだ…それも、あのような流れで…という衝撃が、強かった。


始めにも書いたが、HIKAKIN氏のことは好きだ。
ただただ、昨日 (正確には、予告動画が流れてからの一週間を含めた上での昨日) は、拍子抜けさせられてしまった。


自分が幸せで溢れて堪らないときほど、それを見せつけられて苦しい人がいるかもしれない、と、一度立ち止まって考えてから自分も発信できる人でありたいという、自戒も込めて。
初めて、自身の不妊体質についても、書いてみた。


改めて、HIKAKIN氏、奥様、ご家族の皆様、この度はご出産おめでとうございます。



Yurika

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