Sunday’s Book 35「それでも占って欲しいの」

★Sunday’s Book★

明日が憂鬱な日曜日に、読んだらほんの少しココロが前向きになれるような
「心の体温が上がる」本をテーマにご紹介します。

<35冊目>
タイトル「強運の持ち主」
作者:瀬尾まいこ

占いの全てを信じているわけではないけれど

月曜日に「しいたけ占い」を見るのは密かな楽しみだし

年始になれば今年の運勢に一喜一憂する。


そんな、私みたいな人は多いと思う。


「占いなんて、誰にでも当てはまることを言っているだけ」とか

「占いを信じて人生左右されるなんて」とか

そんな批判はナンセンスだ。


「強運の持ち主」で、占い師の元にやってくる人たちは

未来を予言してもらいに来ている訳ではない。


近所の2つのスーパーのうち、どちらに行くべきかを決めて欲しい小学生や

好きな人の気を引きたい高校生。


占い師の幸子はこう語る。

いくら正しいことでも、先のことを教えられるのは幸せじゃないよ。占いにしたって、事実を伝えるのがすべてじゃない。その人がさ、よりよく慣れるように、踏みとどまっている足を進められるように、ちょっと背中を押すだけ。占いの役割って、そういうことなんだね。


占い師や占いは、「ちょうどいい距離感の他人」なのだと思う。

少しだけ俯瞰した目で、厳しすぎない言葉で、背中を押して欲しい。


誰しもが、見えない未来に少なからず不安を抱える。

“根拠のない”後押しによって、少しでも前に踏み出せるなら

別に当たっていようといまいと、それで良いじゃないか。


正解が欲しいんじゃない、未来を楽しむ勇気が欲しいんだ。


作品に出てくる真面目な占い師・竹子さんが、

“今後3年間はトラブル続き、女難の相、職場でもトラブル”と占った結果を

幸子はこう言い換える。

「嘆かなくても、大丈夫だって。竹子さん、そんな風に、すべてをそのまま言わなくてもいいんだよ。そうねえ、女の子にはもてそうです。素敵な人とたくさん出会えますよ。だけど、気をつけてください。調子に乗ってあちこちの女の子に手を出すと、痛い目に遭いますよ。ぐらいにしておけばいいのよ」

お見事!

占い師って、なんだか生き方も、伝え方も、参考になりそうだ。


ほっこりとした体温の温かさを感じられる1冊。

本屋大賞受賞と聞いて、なんだか納得した。

日々忙しい本屋で働く方々は、こういう本を選ぶのね、と思うと

嬉しくもあったりして。


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