Sunday’s Book 34「普通、が崩れ落ちていく」

★Sunday’s Book★

明日が憂鬱な日曜日に、読んだらほんの少しココロが前向きになれるような
「心の体温が上がる」本をテーマにご紹介します。

<34冊目>
タイトル「コンビニ人間」
作者:村田沙耶香

先日、友達と飲んでいて

「年齢を理由にするには好きじゃない。

それでも、良い歳になったなぁと考えてしまうことはある」

という話になった。


この歳までに結婚していないと、とか

同じ会社に務め続けないと、とか

好きな相手は異性じゃないと、とか

今までの「普通」が崩れ落ちてきた時代だなぁとは思う。


それでも、やっぱり。

自分の「好き」「やりたい」に素直になる前に

それが「普通」かどうかを考えてしまうことは否定できない。


この作品を読むと、それを考えさせられる。

主人公は、本当の意味で、「普通」が分からないから。


焼き鳥は食べるのに、公園で死んでいる鳥は「かわいそう」なのはなぜ?

その「かわいそう」な鳥のお墓にお供えする為に、

花は殺していいのはなぜ?


例えば自分の子供にこんな疑問をぶつけられたら

どう答えたらいいんだろう。


そんな主人公が大人になったとき

コンビニのアルバイトで、“マニュアル”という「普通」を知る。

コンビニの中でなら、「普通」に生きられる。


コンビニのマニュアルのように、みんな何が「普通」かを教えてくれたら、

自分の考えなんて捨ててその通りに生きるのに、

と素直に想う彼女が切なく、苦しく。


いつの間にか彼女に感情移入している私は、

彼女を取り巻く「普通」の人達の会話が

ひどく乱暴で、ひどく気持ち悪く、差別的に聞こえてくる。


私もその「普通」を求めて生きてしまっているのに。


「普通」が崩れ落ちてきた今の時代に生きる私たちは

何を拠り所に、何を正義にして、生きていくんだろう。


今の私は、本当に「普通」から抜け出せるのだろうか。

簡単には出ない答えだと思う。


2016年、芥川賞受賞作品。

4年前とは、時代の流れも大きく変わってきた。

時代と共にその意味が、重みが、増してきた本だと思う。


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