Sunday’s Book 33 「もうバカとは一緒に働けない」

★Sunday’s Book★

明日が憂鬱な日曜日に、読んだらほんの少しココロが前向きになれるような
「心の体温が上がる」本をテーマにご紹介します。

<33冊目>
タイトル「店長がバカすぎて」
作者:早見和真

本が大好きな書店員である主人公の京子は、

常にイライラしたり、泣いたり、店長の両目を潰そうとしたり笑、

今日こそ辞めてやる!といつも息巻いている。


書店員を取り巻く環境は過酷だ。

薄給で給料日前は1日300円とかで過ごさなきゃならないし

本の売上は下がる一方だし

発注依頼をかけても来るのは出版社が売りたい本ばかりで

自分の本当に好きな本は回ってこない。


その上、店長が毎日冷める言葉ばかり並べる朝礼をしてきたり

「神様」だと勘違いしたお客さんに振り回されたりする。


好きな気持ちだけで、仕事はできない。


社会人になったら誰もが学ぶことかもしれない。

私が新卒で接客業に就職した時、人と話すのは好きだと思っていたのに

毎日仕事に悩殺され、疲れ切って、

「このままだと全人類を嫌いになる」と思った。


どんなに好きなことを仕事にしていたって

ムカついたり、悲しくなったり、むなしくなったりする。

こんなバカな人とはもう働けない!と怒ることなんて

毎日のようにある。


「1日のほとんどが仕事なんだから、好きなことを仕事にしたい」と

常々偉そうに豪語している私でも、

結局ムカつく人からの仕事でも断れないし

本当にこの仕事がやりたいことなのか?やりたいことに繋がっているのか?

とすぐわからなくなる。


この本は、そこに正直に寄り添ってくれる。


辞めようと決意した京子に対して、

お姉さん的存在である石野さんが声をかけてくれる。

「私はどんな仕事であっても、辞めたきゃ辞めればいいと思う。とくに私たちの年代は、続けることの美徳みたいなのを語りがちだけど、私はまったくそんなふうに思わない。誰だって必死に自分で生き方を選び取らなきゃいけないんだよ。そこに誇りを持てないなら、働いていても仕方がない。」
「申し訳ないけど、たとえどんな仕事であっても、替えの利かない人なんていないから。必ず次の誰かがその枠に収まるものなんだ。働く意味は絶対に自分自身にある。自分で選び取らなきゃいけないんだ。」


働く意味は絶対に自分自身にある。

勇気ある、少し厳しい、愛のある言葉だと思う。


京子は厳しい業界である本屋にい続けるのか。

そこに何を見出すのか。


他人事とは思えず、夢中でページをめくった。

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