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ビジネスホテルで働く

ビジネスホテルのフロントスタッフとして働いていて、思うことを並べてみます。

その前に、私がビジネスホテルで働くことになった経緯を少し。

ゲストハウスで4年働いたのち、コロナ禍直前にビジネスホテルに転職し、2年少々経ちました。


転職先を決めるまでの思考回路はこんな感じです。

小さな宿を自分で開業する資金を貯めるために転職しよう

宿泊業は、飲食業と肩を並べて低収入の職業、という厳しい現実

開業資金のためなら、全然違う業種でも短期間で稼げる仕事がいいかなぁ

いや、今後宿を開業するなら、宿泊業か、少なくとも観光業に身を置いて、情報を常にキャッチしたい

前職のゲストハウスより稼げる、旅館やホテルに焦点を絞ろう

だけど、もう正社員として働きたくない

それに、長く働くつもりもない

契約社員でも、条件の良いところを探そう

地元の高級旅館で働けば、ゲストハウスとは違うもてなしのアプローチも習得できるかも

でも、私が興味をもったところは、正社員ですら給料も条件も悪くて断念(高級旅館なのに・・・これって結構ショックな事実)

どんぐりの背比べ的なホテル求人を見比べる

あ、ここはボーナスが一番いいな

で、今の職場に契約社員として入社

全国に約70店舗ある大手であるにもかかわらず、ビジネスホテルに興味のなかった私は、そのホテルを全く知りませんでした。

ビジネスホテルで働くことは、ゲストハウスのような、ゲストを楽しませる類の喜びは皆無だろうと覚悟していましたが、その通りでした(笑)

でも、面白いなと思うことも多々あります。
今日は、そんな私が働いていて感じることを並べてみます。

※あくまで、私の働くビジネスホテルで感じる私の主観での話です

長くなったので目次を。


これまでと違う世界の同僚たち

働きはじめてまずショックだったのは、職場の人に私の前職を聞かれて「ゲストハウス」と言っても「?」となる方がいること、
さらに、知ってても泊まったことがある人は、20人中1人しかいなかったこと。

泊まったことはないにしても、同じ宿泊業界なのに知らないとかあるのか。あなたたちが安売りするからゲストハウス業界は窮地に陥ってるのに。と毒づきたくなるけど、私の知ってる世界が全てではないのだなと気づかされた瞬間でした。

バックパッカーと言ってもあんまり通じないし、思い出の宿の話を聞くと、みな口々にお高い外資系のラグジュアリーホテルや旅館の話をします。

それはそれで参考になるけど。

私の旅のスタイルがマイノリティだったようです。


最近のビジホはシティホテルと変わらない

うちの店舗は開業から10年以上経つので、典型的なビジネスホテルです。
・トイレ・シャワーはユニット
・ベッドとテレビとデスクしかない
・殺風景なデザイン
・本当に寝るためだけのホテル
・朝食は可もなく不可もなく(安いけど)

それに対し最近オープンしたビジネスホテルは、
・トイレ・シャワー・洗面台が独立
・部屋もベッドも広い
・おしゃれな内装
・朝食も豪華なビュッフェスタイル(それなりに高い)

うちの店舗の競合は、同じような古めのビジネスホテルや、安めのシティホテルですが、新しい店舗の競合は、大手のシティホテルだったりします。

そのため、店舗によって客層が結構変わります。
どの店舗も、平日はビジネスマンが主ですが、週末は新しい店舗ほど若いカップルが占めます。


フロントの仕事

これは本当にホテルによって様々です。
シティホテル以上や旅館のように、ビジネスホテルでも細かく部署が分かれているところもあるようです。
うちのホテルは、清掃・朝食会場・駐車場は外部委託で、フロントスタッフはその他の部分をほぼ担っています。

・チェックインなどのお客様対応
・予約管理
・プラン作成と販売
・経理関係
・在庫管理
(箇条書きにすると少な!笑)

規模は違えど、ゲストハウスでは清掃も含めてぜーんぶやる、あのマルチタスクの方が、私は好きです。

小難しいことは勤務年数の長い先輩が、うやうやしくやってらっしゃいます。
コロナ禍で緊急事態宣言とかまん延防止策が出ている間は、本当に暇で、仕事の奪い合いです。

いまだにFAXでやりとりする企業の多いこと。
FAXのあとに電話で「確認したら送り返して」と連絡きて、FAXに書き込んで送り返す。
請求書も原本を郵送。

「今どき紙とかわけわかめ!」って例の如く叫びたくなるくらい、業務も人間も、化石並に古い。

母体が大きいから潰れることはないって彼らは言ってますけど、世間に置いていかれるのも時間の問題だろうと思います。

おっと、ちょっと毒が^ ^


シフト制

いわゆる三交代制ではないのですが、シフトは大きくわけて3つです。
早番:朝~夕
遅番:昼~夜
宿番:夜~朝

仕事内容は主に、
早番:チェックアウト対応、翌日の予約チェック
遅番:チェックイン対応
宿番:宿泊客管理、売上管理

男性スタッフは宿番に回されがちです。宿番が女性スタッフだけになることは「安全上」ありません。まぁ、私はあんまり宿番に入りたくないのでありがたいお気遣いですが、今時それでいいのか?という疑問はあります。

宿番は嫌と言いつつ、すべての流れが知りたいので、全部のシフトに入れてほしいとお願いしてます。
やっぱり宿番は少ないですが、宿番は眠気との戦い。
遅番が花形ですが、ヒールで立ちっぱなしなのが辛い。

そして休日も、週休2日のシフトです。
平日の休みが多いし、3勤→1休→2勤→1休って感じでちょうどいいです。
5連勤はキツい。世のサラリーマンたちはすごいなと思います。


予約サイトについて

うちのホテルの予約で多いのは、
1.楽天トラベル
2.じゃらんネット
3.自社サイト(公式HPからの予約)

あとは、一休、Agoda、Expedia、電話予約が混戦してる感じです。

Agoda、Expedia、Booking.comなどの海外サイトでの予約は、ネットでの予約に慣れていない方にはおすすめしません。
「キャンセルの仕方がわからない」「予約できたかわからない」と問い合わせて来られる方は、大体がこれらの海外サイトからの予約です。

サイト側に電話で問い合わせても、オペレーターにつながるまでにはかなり時間がかかります。
ホテル側でキャンセル処理をすることもできますが、レスポンスが遅いので、ちゃんとキャンセルできたか、何度も問い合わせてくる方もいらっしゃいます。
正直、ホテル側も不安ですし、手間です。ちゃんとキャンセルできたか、何日もチェックし続けなければならないです。

比較サイトで一番安いのは海外サイトだったりするので、仕方ないんですけど。
予約サイトさん、システム改善願います(笑)


予約なしのおひとり様は要注意

「今日泊まりたいんですけど、空いてますか・・・?」と、予約なしでフロントにいらっしゃるおひとり様。
ソロ活を応援したい私が言うのは心苦しいのですが、そうなんです。注意深く対応します。

バックパックを背負って旅した海外で、予約なしで宿に行って、部屋を見せてもらって、値段を交渉して、泊まるかどうか決める。という旅の醍醐味を楽しんだことがあります。
それに、ゲストハウスで働いていたときも、予約なしでフラッと現れるゲストはむしろ大歓迎でした。

ホテル業界は全く違う認識です。
そして確かに、実際そういうお客様は、ちょっと変わっていると私も思うようになりました。
つい最近も、私が独断で受け入れてしまったお客様が、後日、他のホテルからのUG情報(Undesiable Guest、つまり、ブラックリスト)として共有されたことがあります。

当日の電話でも良いので、事前の予約をおすすめします。


領収書問題

ビジネスホテルなので、様々な企業名で領収書を発行します。
領収書を介していろんな企業のあれこれが垣間見えます。

・手書きでなければならない
・印字タイプでなければならない
・1泊ごとの料金がわかるようにする
・実際は8000円だけど、6500円で記載する
・「〇月〇日~〇泊分」と記載する
・クーポン利用分は記載なしで
・朝食代込みの料金で

などなど。
ホテル側としても、経理的に、して良いことと悪いことがあるので、この領収書問題は慣れるまで一番苦労しました。
いまだに印鑑が大事ですよ、わけわかめ。


企業の良し悪しが見えてくる

たくさんの領収書を発行するため、お客様がどんな企業に勤めているかわかり、お客様の様子から、企業の良し悪しが印象づけられます。

すごく穏やかで優しい雰囲気のお客様の企業は、優良企業だと思いますし、不機嫌でせっかちで、高圧的なお客様の企業を知ると、それなりだと思ってしまいます。
しかも、同じ企業の方は、同じホテルに泊まることが多いので、ひとりだけでなく、複数人見るとなおさらそういう認識になります。


AIに仕事を奪われる日も近い

私の仕事は現在のAIでも十分にできます。
いつ何時、職を失うかってくらいです。
実際、ほとんど機械でチェックインするホテルは増えてますよね。

旅館の女将や、ラグジュアリーホテルのコンシェルジュは、人間が務める必要があると思いますが。

「おはようございます」
「いっていらっしゃいませ」
「ありがとうございます」
「おかえりなさいませ」

しか言わない時間とかあると、機械になった気分になります。


連れ込み、バレてますよ

昔ネットで、ホテルのフロントマンが、「連れ込みは分かる」と書き込んでいるのを見たことがあり、ほんとかなぁと疑問に思っていました。

「連れ込み」とは、宿泊者が、宿泊料を支払っていない外部の人を客室に連れ込むことです。

他のホテルがどの程度OKにしているかは知りませんが、うちのホテルは基本、外部の人の客室フロアへの立ち入りはNGです。
Uberなどの宅配も、受け渡しはロビーでお願いしています。(荷物の移動や歩行の手助けが必要などの場合は別ですが)

ゲストハウスは宿泊者数が少ないので、外部の人が分かるのは当然でしたが、今勤めているホテルは200室以上あるので、誰が誰だかわからないだろうなぁと思っていました。

が、わかりります、連れ込み。
わかるもんなんです。

これは、うちのホテルの客層の8割以上が男性のビジネスマンだからかもしれませんが、「連れ込み」の代表格とも言えるデリヘルの類は一発でわかります。
月に1回見るかな、くらいですが、私だけでなく、スタッフみんなわかります。

しかし、明らかな場合でもその場で声はかけず、対応は慎重です。
先にチェックインしたお客様のお連れ様という可能性も、なきにしもあらずなので。

防犯カメラで行方を追い、どの部屋に入ったか確認し、その客室の予約を見て「黒」なら内線して、予約の宿泊者数は1名で間違いないか確認をします。
もちろん、丁重にです。
気持ちは警察官ですが、あくまでお客様への対応です。

でも正直、そのときのお客様の反応は面白いので、ちょっと書いちゃいます。

すぐその場で2名利用分の追加料金を支払いに来る方もいれば、チェックアウト時に払うという方もいます。
デリヘル嬢だけ追い返す方もいれば、
「あ、ちょっとおしゃべりするために来てもらったんだけど、ダメですか?えーーーと・・・ちょっと相談します」と言って、一緒に出ていく方。
ちょっとおしゃべりもダメです(笑)

ちなみに、最初からそういうサービスを利用するつもりで、2名料金で予約する方もいらっしゃいます。
それは全く問題ないんですけど、エピソードとして。

ひとりでチェックインに来られて、2名分の名前を書いていただく際、「え・・・もうひとりの名前、わからないです」って正直すぎる方や、
70代くらいのおじいさんが、明らかに「同伴」でチェックインして、1時間足らずでチェックアウトしていくとか。

正規の料金を払って、マナーを守ってくださればいいんです。
あまりひどいと、全店舗で見れる顧客情報に「連れ込み注意」って登録されますよ。

シティホテルとか別のホテルはどんな対応をしてるんでしょうか。


やりがい

所々で棘のある話をしましたが、それでも私は宿泊業界で働くことが好きで、今の職場でもやりがいを感じることもあります。

ゲストハウスの1000分の1くらいしか、お客様との関わりがありませんし、マスクで笑顔も伝わりずらい今、それでもAIにはない温もりのある接客を心がけています。

チェックインは特に機械的なオペレーションになりがちですが、しっかり目を見て、目で笑顔を作って、声には色や緩急で変化を持たせ、お客様の様子を観察し、対応を変えてみます。

仕事終わりで疲れたビジネスマンは、ただただ早く部屋に行きたいので、一方通行感は否めませんが。

それでも、ちゃんと受け止めて評価してくださる方もいらっしゃって、レビューのコメントにお褒めの言葉を書いてくださることもあります。

とてもうれしいです。
何よりもやりがいを感じる瞬間です。

それに、ビジネスホテルで働きはじめてから、自分の宿のイメージが固まったのも事実。
そのときが来るまで、精一杯働かせていただこうと思います。

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