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脱水と我慢強さ
義父の仕事は植木職人。
さらにご近所の田んぼの仕事も請け負うなど、義父は周囲の人から慕われる、懐の深いユーモア溢れる人でした。
その日は地面からの照り返しも強い夏の日。
いつものように朝食を済ませて職人仲間と植木の仕事をしていると、なんだか違和感を感じたようです。
普段から弱音を吐くことのない義父は、違和感を感じても言うことができなかったのか、大したことないと思ったのか。。
親方が異変に気づいた時には、すでに呂律が回らなくなっていたそうです。
驚いた親方は、とりあえず自分の車に乗せて病院まで走ってくれました。
運悪く、仕事をしていた現場は病院から少し距離があったようで、病院に着いた頃には、すでに義父の意識は朦朧としていたそう。
脳梗塞でした。
すぐに検査と治療が開始され、義父も必死で闘っているのが伝わってきましたが、そのまま意識が戻ることなく数ヶ月後に亡くなってしまいました。
あとから聞いた話では、暑くて脱水気味だったのでは。そのことが脳梗塞の起因になったのだろうと伺いました。
あれは今のように脱水や熱中症の怖さについて、叫ばれ始めた頃だったでしょうか。
東北の田舎の、昔気質のおやじさん。です。
ちょっとくらい暑くてしんどくても、カンタンに音を上げる訳にはいかないという感覚があったのかもしれません。
自分を犠牲にしてでも家族を守ってきた義父。
その思いが裏目に出たように、早々と逝ってしまいました。
あのとき、義父がもっと自分を労って早めに休んでいてくれたら…
早めに仲間に違和感を伝えて受診してくれていたら…
留まることなく、そんな思いがいつまでも湧いてしまいました。
と同時に、周囲から慕われ頼られる義父は、あんなふうにしかできなかったかもしれないな
そんな思いも湧いてきます。
自分の体調は自分にしかわからないもの。
守るものがあるならばなおさら
誰しもが我慢せずに自分を労って欲しい。
熱中症の季節になると義父を思い出し、どうしようもないそんな思いが切々と湧いてきます。